05-05 胃痛が追加されました。
……ーン、ピンポーン。
――うるさい。
……ピンポン、ピンポン、ピピピピピピンポーーーン!
――聞こえてるよ。
けたたましいチャイム音に千秋は薄目を開けた。チャイムを鳴らすだけじゃ飽き足らず、ドンドン! と、ドアまで叩いている。大声で千秋の名前を叫んでもいる。
ぼんやりとした頭で、陽太の犯行だと確信した。
すぐにでも玄関を開けて、
「ヒナ、近所迷惑だからやめろ!」
と、怒鳴りたいところだけど身体が言うことをきかない。
――無断欠勤、しちゃったかな。
昨夜、仕事を終えて帰ってくる途中から嫌な予感はしていた。
念のため、帰り道のコンビニでスポーツドリンクを買って床に転がしておいたのだけど。結局、ふたを開ける体力も残っていなかった。
横になって、次に目が覚めたときにはもう、だるくて、だるくて。起き上がることも、指一本、動かすこともできなくなっていた。
――今、何時だろう。
陽太が来ているということは定時間後。十八時は過ぎているのだろうか。
たっぷり寝たせいで、少しだけど体力も回復した……気がする。
ベッドからずり落ち、床を這うように移動して玄関へと向かって。でも、すぐにだるくなって。一休みして、また少し這って、休んで――。
そのあいだも、チャイム音は引っ切り無しに鳴り続けている。
――はいはい。今、出ますよ。
心の中で返事をしたところで聞こえるわけがない。
***
「大家さんですか? こちらです!」
外が急ににぎやかになった。陽太の声もするけど、陽太の声だけじゃない。
それに大家さんまで来ているなんて、どういうことだろう。不思議に思っているうちにガチャン、とカギの開く音がした。
直後に勢いよくドアが開く音もした。
「千秋ぃ~!」
にぎやかな足音を立てて部屋に上がってきた陽太に、千秋は抱きしめられた。
「生きてる? 千秋、息してる!?」
ぜぇぜぇ……と、荒い息をしているのが聞こえないのだろうか。
陽太の見当違いな質問に千秋は心の中で苦笑いした。
と、――。
「警察です! 事故ですか、事件ですか?」
「自殺よ、自殺!」
「違うわよ、大家さん! 殺人事件よ!」
「救急です! 小泉さん、意識はありますか? 意識はありますか!?」
雪崩れ込んでくるたくさんの足音に薄目を開けて、千秋は体調不良とは全く別の脱力感を覚えた。
――ヒナ、何をしたらこういう状況になるのさ。
どういう状況かは、さっぱりわからない。
でも、陽太がやらかして招いた結果だということだけは、よくわかった。




