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ゴブリン牧場 〜頓挫までの軌跡〜

作者: 東都エリ

 ゴブリンを食用に改良しようという話が昔あった。繁殖力の優れたゴブリンを牧畜化することで食糧難を解決しようと言う話だ。


 彼らの繁殖力と子宮内発育力にかかれば我が国の食糧難の解決など容易であり、ひいてはスラム街の治安維持にも繋がるだろう。


 だがしかし、これには多くの問題がある。魔物の牧畜化の危険性、ゴブリンの餌代、母体の健康など挙げればきりがない。


 何よりもネックなのが母体をどうするかであろう。


 知っての通りゴブリンには雌が存在しない。ならばどう繁殖するのかといえば他種の雌を攫い交接を繰り返しているのだ。我々ヒト科の雌も同様に攫われたという報告を何件も耳にしている。だがそれも仕方ないことだろう。ゴブリンの繁殖にはヒト型に近い種が必要なのだから。


 そうなるともちろん牧場内にもヒト型の雌が必要になるわけで、この世に存在するヒト型種は我々人間種、エルフやドワーフといった亜人種、獣人や竜人、魔人といった混合種、そして知性を持たず本能のまま生きるゴブリンやオークなどヒト型の魔物種。


 当然人間や亜人、混合種を母体とすれば人権問題、外交問題にも繋がるだろう。ならば魔物を使うかといえば、これがまあ美味しくない。焼けば香害、蒸せば煙害、食せば実害と良いことはない。


 奴隷を使えばとなるが、いつまでも続く奴隷解放運動の流れに逆らう真似をすれば、非難轟々間違いなし。

 

 そんなわけで頓挫してしまったゴブリン牧場だが、ここ最近ある噂を聞いた。


 なんでも隣国が異世界から人間を呼び寄せたらしい。


 にわかに信じられない話だが、これが本当なら大変なことだ。異世界の知識を持った、おそらく我々の思いつかなであろう発想を持った未知数の兵士が隣国に参戦したのだ。一人の兵士で戦況は大きく変わる。戦争は如何なる魔法が使えるかで全てが決まるのだから。いつ戦々恐々の日々になるのやらと恐れてみるが、ここで私は思いついた。


 異世界人、それは我々人間と同じ姿をした侵略者である。


 この考えを流布していけば、隣国は異世界人を兵士として使えず、また新たなる奴隷として運用しようという流れを作れるのではないか。そしてゆくゆくは牧場の母体として運用できるだろう。


 素晴らしい。妙案だ。自画自賛して我が国に献言を。


 結果は却下された。


 問題点は倫理観。どうやら異世界人を呼び寄せたのは隣国だけではないらしい。


 こうしてゴブリン牧場は二度目の頓挫を迎え、立案者の私は危険思想論者として逮捕された。南無三。

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