自律神経自己完結機械《オートマタ》
馬車の中に足を踏み入れると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
「これが...王族が乗っている馬車...なの?」
そこに広がっていた光景は、馬車の光景ではなかった。そこは、一つの部屋があった。馬車の何倍もの広さがあり、揺れもせず、さらにはお菓子や、飲み物まで置いてあったのだ。
「すごいわね...これほどの広さの馬車さえあれば、ここで済めちゃうかもしれないね」
「そういうわけにもいかないんですの...」
「うわ...!?」
突如背後から現れた人物に、驚きしりもちをついてしまう。いつから、そこにいたのか気配すら分からなかった。
「ごめんなさい...驚かせてしまったかしら...?私って、存在感が薄いからいつも驚かせてしまうんです...」
「そ...そうなんですか」
全く気がつかなかった。そもそも、いつから後ろにいたのだろうか...?私が入ってきたときには誰もいなかったはずだ。そして、馬車に入った瞬間私の後ろに現れた。どう考えてもおかしいのだ。私の後ろに現れるなら、私が馬車に入った時に、顔を合わせるはず...それなのに、顔合わせは起きなかった。という事は...どういうことだ...?私の後ろに現れた原理が全く分からない。
「私は、この馬車の管理を任されています...メープルと申します、以後お見知りおきを」
「ご丁寧にどうも...ところで、一つ聞いてもいいですか...?」
「はい、何なりと」
「あなたは誰ですか?」
「どういう事でしょう...?」
「ごめんなさい、もう少し分かりやすく言いますね...あなたは、どこから入ってきたのですか?」
「あぁ、そういうことですか...!私は自律神経自己完結機械この馬車の護衛兼メイドをやらせてもらっています。私が現れたのは、リンメル様が馬車に足を踏み理入れたことで、私が護衛兼メイドとして目覚めたというわけです」
なぜかおいしそうな名前だ。
「つまり、あなたは私が危険の加わらないように、守ってくれるということ?」
「その通りでございます...リンメル様が馬車を出られますと、私はまた眠りにつき次の来客を待つという形になります」
だからと言って...後ろに現れるのだけはやめてほしい......簡単に言うと、メープルはこの馬車の中だけで...しかも、人が乗っている時だけしか稼働しないということか。
「そうだったんですね...でも後ろから表れるのはやめた方がいいと思います...みんな怖がりそうですから」
「承知しました、以後気をつけます」
それにしても、ずいぶん広い部屋だ。私の寮の部屋とほぼ同じ大きさだろう。ここで、暮らせばさぞ快適な生活が送れるはずだ。
「それではリンメル様...王城に到着する前に、先ほど預かった正装に着替えつつ、それに見合ったおめかしをしていきましょう、メイクの方は私にお任せ下さい...ささ、お時間もさほどありませんので、着替えて生きましょう...!」
「ここで着替えるの?」
「そうでございますけど、何か問題がおありでしたか?」
「いや...別に、あなたしかいないからいいんだけど......」
メープルは頭をかしげ、何も分かっていなさそうな顔をしている。確かにメープルは自律神経自己完結機械で、私達人間とは違う感覚で生きているかもしれない。それに、この馬車は多分来賓用の馬車だ。あまり、使用されることが少ないのだろう。だから、情報が少なく自信の知っている範囲の行動になってしまって、人間の常識が欠落しているのかもしれない。
だからといって、着替えない訳にもいかないため早速着替えを初めて行く。
「はぁ~...人前で着替えるのは、中学校以来だなぁ~よく家の中を裸で走り回ったっけ...今思えば、とんでもないことを私はしていったって痛感するよ...」
本当に、誰にも知られたくない黒歴史の一つだ。
「リンメル様、一つお伺いしてもよろしいですか...?」
「ん?どうしたの...?」
「しょう...がっこう...?と言うものは何ですか?」
「あぁ~......」
そうか、メープルは自律神経自己完結機械だから、小学校というか、教育という概念すら知らないのか。そもそも、こちらでは小学校や中学校と言った育成機関の呼び名ではなく、すべてひっくるめて『高度育成機関』と呼ばれている。
「そうだね...簡単に言えば、たくさんの人間と勉強する場所かな...?」
「勉強を...をする場所ですか...?」
「えぇ、私達人間って言うのは最初から頭がいい人はほとんどいないのよ...だから、人間をたくさん集めてみんなで一緒に勉強をするの」
「そうなんですか...少し、楽しそうですね」
メープルならそう言うと思っていた。ここで、一人でいるより、周りに囲まれて生きていけるはずだ。
「メープル、それよりあなた...私がまだ着替えているのに、メイクの方始まっているのだけど、私まだズボンしか脱いでないのよ?」




