能力測定
「事前に通達している通り、測定免除者はSクラスが確定しているので先に教室で待機している様に!」
測定免除者…その者達は将来が確定しており学園で注目が置かれる者達だ。
さらに学園側からは測定免除者の名前は事前に通達されており、それに選ばれたものはSクラスを確定としている。
クラスには、Sクラスから順にAクラスからFクラスが存在しており、その中でもDクラスとFクラスは、周りにおいて扱いがひどく悪いことで有名となっている。
「こんな意味のないことに付き合わされているあなた達はなんて無能なのかしら…フフッ」
測定免除者の一人がその様な言葉を吐きながら教室に向かって歩いて行く。
「なにあの人?かんじ悪くない?」
それに対し、一人の生徒がそのような愚痴をこぼす。
確かに、今の物言いは私でも感じが悪いと思う。
だが、それを許されるほどの実力の持ち主だからこそ、あの態度が許されるのだろう。
ちなみに、私は測定免除者が誰なのか見ていないので、誰が免除されたのか分かっていないのだが。
「駄目だよ~…あの人に喧嘩売ったりしたら…。あの人は公爵の人だよ。確か…名前がエリステラ=ベルメテルって言ってた気がする」
エリステラ=ベルメテル…ゲームにおいて、北都市メルビアのを治めている公爵貴族だ。権力主義で力のないものを批難する傾向があるとかないとか。
「ということは、他に選ばれた四名は王都の中枢を治めている貴族が選ばれているということかな…?
ちゃんと見ておくべきだったかな……」
今になって免除者の書類だけ確認しなかったことを後悔している自分がいる。
「免除者はもういないな!これより、能力測定を始める!
能力の測定が終わり次第、次の基礎知識の会場へと向かってもらう!この基礎知識とは、自分の世界能力の性能をどれだけ把握できているか確認するものだ!
では、順番に受けていくように以上!」
最初に行われる能力測定は、1日に世界能力がどれほど使用可能なのか…それと威力を測定するのだそうだ。
世界能力には一日に使える回数が決まっており、それは使用者の負担を減らすリミッターといえばいいのだろうか?そう言うものがかけられている。
使用者が世界能力のことをより深く理解していれば、このリミッターというものはなくなり、使える回数に制限がかかることもなくなる。
つまり、この測定とは現段階でどれだけ自身の世界能力を掌握できているのかを調べるためなのだろう。
二つ目の基礎知識は先ほども言っていたように自分が使える世界能力の力を把握ができているか確認することだ。
世界能力には、使用者がより深く理解することでその世界能力に沿った新たな力を手に入れることができる。
ただし適性のない派生能力は発現しないが……。
「次!」
「は…はい!名前は、エーテル=ミストレンです!
授かった世界能力は霧の中に沈む少女です…!」
確かミストレン家は、子爵家の家系だったのではないだろうか?
ゲームでは、それほどミストレン家にフォーカスが当たることはなかったが、公式からの情報なら覚えている。
昔の戦争で大きな功績をあげ、爵位が与えられた家と書かれていた。それ故か、純貴族たちからは嫌な視線を浴びせられることが多々あるらしい。
そんなミストレン家が授かる世界能力は、子々孫々共に似た様な世界能力になるのだという。
いわゆる家計能力というやつだ。
「あのミストレン家か……じゃあ今回も煙幕系の世界能力か?」
「はい。そうなんですけど…私だけなぜか少し家族とは毛色が違うみたいなんです…」
少し、おどおどしたしゃべり方で話しているエーテルと名乗った少女は少し緊張しているみたいだ。それに、家族とは毛色が違うということも少し気になる。
「では、世界能力の起動を!」
「わかりました!」
代々ミストレン家の世界能力は、自身を対象に体全体を霧状にすることで相手の攻撃を無力化し、味方の支援するサポーター系の世界能力だ。
「……」
だが、今目の前に移っている光景は1人の少女が体を霧状にしている所までは情報通りなのだが……体全体を霧状にするのではなく体の一部を霧状化させ自由に操ることだった。
「あ…あと、私の霧は他の人が触ろうとしても触れないんですが…私から他の人や物体は、触れるみたいなのでこういうこともできたりします」
彼女がそう言い終わった後、近くにあった丸太を霧状化した手で持ち上げながら真っ二つに握りつぶした。
霧状になっているときは、物質の質量に関係なく簡単に握り潰せるのだろうか?だとしたら、それは強力な武器になるだろう。
「ほぉ~…これまでのミストレン家の弱点を克服したということか。
これまでのミストレン家は、霧化した後は誰も触れないという弱点があったが、君はそれを克服しさらには自分に有利なように相手を一方的になぶれるということか」
「け…結論から言うと、そういうことです」
「わかった、では次!」
とうとう私の番が回ってきた。
世界能力には、自信がないがここは頑張るしかないだろう。
「はい!
名前は、リンメル=フロストメイルです。
授かった世界能力は虚構を真実とする者です」
「フロストメイル……聞いたことがないな…?辺境の田舎貴族か?で、その世界能力は何ができる?」
名前を聞いたことがないのは当然だろう。私が暮らしていた所はほぼ山に囲まれていた場所だ。
それに、ここに来るのにどれだけの時間をかけたことか……。
いちいち分かっていることを口に出して言って欲しくはなかった。
「……一度見た構築式と世界能力を最大10ストックまで保存する事ができます」
「ふむ……。
使い方によっては強そうだが……そのストックは1回使ったらどうなるんだ?」
当然その質問になることはわかりきっていた。
このの世界能力は、欠点があるとすればストックを使用すてれば消えてしまうという点だ。
これをストックするには、構築式が展開される際に浮かび上がる幾何学模様のようなもの模倣するしかない。
「消えます。
再ストックするにしても、構築式を覚えている必要があります。ですが、私は今まで見てきた構築式をすべて覚えています」
「ほぉ~」
なんてったって、この堀川玲人は記憶力だけはいい残念な人間だったのだから。
「記憶力に関していえば、自信がありますから」
「そうか……なら今から私が構築式を一瞬だけ展開する。その構築式の力を行使してみろ」
教師の人がそう言い終わると目の前に瞬く間に構築式が展開されていく。
それも、ものすごい速さで……。
普通なら構築式の展開に必要な時間は30秒から長ければ1分といわれている。
ただこれじゃあ、戦場では足手まといとなることが多い。
そこで、戦場で扱うためには何秒で構築式を完成させる必要があるのか。
それは……コンマ1秒にも満たないわずかな時間だ。
構築式の展開スピードを見るだけで、その人の実力が分かってしまうほどに構築式の展開スピードは重要なのだ。
そして、この教師が展開にかけた時間はわずか3秒。相当な実力者というのが一目見てわかる。
「覚えました、行きます!」
記憶力だけは、誰に負けないと自負している私だがそれほど万能なわけではない。
構築式の形成には時間がかかり、迷惑をかけることも多々あるが、ここでは今私ができる全力をもって挑んでみよう。
慎重にかつ丁寧に構築式を展開していく。
今回重要なのはスピードではない。だからこそ、ゆっくり丁寧にやる必要があると私は感じた。
試験官が展開した構築式と同じものを展開していく。
さらに、そこに少しだけ改良を付け足して。
《照らす炎》
「……いいでしょう。次!」
無事に能力測定を終え、次は基礎知識の会場に向かう。
だが一つ疑問が残るのは、世界能力を1回使用しただけでなぜ1日に使える世界能力の上限がわかるのか……私にはそれが分からなかった。
気になる……。
だが今は、次の基礎知識について考えたほうがよさそうだ。
「よ~し、この調子で頑張るぞ!」