表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/475

感覚派に期待してはいけない


「殺してください」


 テントの前で三角座りして、ミトさんは顔を真っ赤にしてそう言った。遠い目をしてる。でも顔は真っ赤。すごく恥ずかしかったらしい。


「よしよし。ミトさんえらい。がんばった」

「殺して……いっそ殺してよ……」

「ん……。ごめんね。一日休んで、心の準備をしてからの方がよかったよね……。ごめんね」


 ミトさんの頭を優しく撫でながら、私は久しぶりに本気で反省した。配信してなくてよかったよ。絶対にからかわれるところだった。


「ミトさん、美味しいもの食べて元気出そう。これあげる。チョコバー」

「ありがとうございま……、なんですかこれ!?」


 わ、一気に元気になった。日本のお菓子、チョコバーを握りしめて驚いてる。あんまり握ると体温で溶けちゃうよ。


「チョコバー。美味しいよ」

「チョコは分かります! でもこれ、この袋! 見たことないです!」

「あー、うん……。こう、ぴりっと破って、ね……」

「これを破るなんてとんでもない!」

「ええ……」


 なんだろう、視聴者さんがいたら面白がりそうな言葉だった気がする。

 ただ、ちゃんと食べてくれないと困る。どんな反応するか見たいのに。こっそりわくわくしてるのに。


「食べて」

「でも……!」

「食べろ」

「はい」


 めんどくさくなったので少しだけ睨んだら、ミトさんは素直に包装を破いてくれた。どこから破るのかちょっと戸惑ってたけど、ギザギザのところからなら破りやすいと気付いたらしい。

 ミトさんが食べる直前に、こそっと配信魔法を使っておいた。


『ヒャッハー! 新鮮な配信だぜえええ!』

『新鮮な配信とは』

『開幕リタちゃ……、ミトちゃんやんけ』

『チョコバーかじってめちゃくちゃ目を見開いてるの草』

『勢いよく食べ始めたのも草』

『さすが我らのお菓子だ。破壊力が違う』


 気に入ってもらえたみたいで私もなんだか嬉しいよ。

 ミトさんはあっという間にチョコバーを食べ終わった。最後の一口を食べ終わってから、叫んだ。


「すっごく美味しかったです!」

「ん」

「これ、どこのお菓子ですか? わたしも買いに行きたいなって……!」

「あー……」


 買いに行くのは多分無理かなあ……。日本への転移魔法は魔力をごっそり使うから、さすがに二人分は厳しい。私が行くだけでも、ミレーユさんたちが気付いてたぐらいだし。二人分の魔力なんて使ったら、大騒ぎじゃないかな。


「ちょっと、ミトさんを連れて行くことはできない」

「そうですか……。隠れ里なんでしょうね。残念です」

「隠れ里……」


『隠れ里 (ビル乱立)』

『隠れ里 (人口一億人超)』

『なるほど隠れ里だな』

『どこがだよwww』


 ここから見たらある意味で隠れ里かな……? こっちの人たちだと、観測すらできないだろうし。

 それはともかく。ミトさんも元気になったし、ここからは魔法の勉強だ。と言っても、私は人に教えるのがとても苦手。特に師匠から教わっていたなら、落差がとってもすごいと思う。


「なので私ができるのは、今までの守護者が集めてきた本を見せてあげることぐらい。その後に、修正とかをしてあげられたらなと思ってる」

「そう、ですか……」


 教えるのが苦手なことも含めてそう伝えたら、残念そうに肩を落とした。私から直接教えてもらえる、と思っていたらしい。別にそれでもいいけど、私はいわゆる感覚派だよ。私が言うのもなんだけど、絶対に理解できないと思うよ。


「たとえば調整のやり方として、ここがぐねってるからしゅびっとして、ぐちゃってなってるところは転がして、で分かる?」

「本でお願いします」

「うん」


『即答www』

『これはマジで分からなさすぎるw』

『術式ってやつの調整、だよな……? どういうことなんだこれ……』

『私の妹に教えてるのって、かなり言葉を選んでくれてたんだね……』


 ん。ちいちゃんは真っ白だったから、すごくがんばった。真っ白だったからやりやすいっていうのもあるけどね。それに基礎の基礎だからだよ。調整のやり方になると、言葉にするのが難しい。

 ミトさんをお家に入れてあげる。ミトさんはそわそわしてたけど、とりあえず椅子に座ってもらった。


「一冊読むのにどれぐらいかかる? 速読はだめ。ちゃんと理解しながら読むこと」

「それでしたら一日一冊ぐらいです」

「ん。じゃあ、とりあえず三冊」


 アイテムボックスから本を取り出して、テーブルに置く。ミトさんは本を手に取って、表紙を見て、凍り付いてしまった。

 そういえば、私が持ってる本って本棚の本も含めて貴重なものなんだっけ。ミレーユさんも驚いてたぐらいだし。熱中して読んでたぐらいだし。


「あの、これ……。いいんですか? 借りちゃっても……」

「ん。そのために出した。保存魔法をかけてあるから、気にせずに読んで」

「は、はい……!」


 すごく慎重に本を開いてる。手荒に扱ってもそうそう破損しないから、気にしなくてもいいんだけど。


「この三冊の本だけど……、だめだねこれ」


『あの一瞬で本に集中してる……』

『ミレーユさんといい、すごいな魔法使い』

『リタちゃんに認められるほどの魔法使いならでは、だったりして』


 んー……。まあ、適当に勉強してる人を森に入れようとは思わないから、これぐらいはね。ちなみにそんな人が入ってきたら見捨てるよ。どうぞ魔獣の晩ご飯になってください。

 本の説明ぐらいはしたかったけど、読めば分かるかな。書き置きだけしておこう。この様子だと、多分夜まで読み続けるだろうし。でも一応、口には出しておこう。


「出かけてくる。お昼には戻るから」


 予想通り反応はなし。書き置きを残して、お家を出た。


壁|w・)なお、リタは師匠さんが教えるのが上手と思っていますが、過大評価です。

お師匠「いいかリタ。例えばここ。ここ、ぐねってなってるだろ? ぐにゃじゃない。ぐね、だ。ぐねの場合は、ガチっとやればいい。バチっじゃないぞ。ガチっだ」

リタ「ん(完全に理解)」

…………。かもしれない!

ちなみに学園ではさすがに真面目に教えてました。…………。かもしれない!


明日は金曜日なのでお休みです。



面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。

書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。

ではでは!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、ぐねってなってるとこをバチッとするのか……………ww←もちろん、感覚派 完璧な初心者のおじさんへの簡単なパソコンの使い方を、説明するのは大変だった……………ww なん…
[一言] これだから天才感覚派はーー!!!
[一言]  普段から理論で考えるから感覚派ではないと思うけどリタのも師匠のも分かってしまう、というよりぐにゃは波打ってるような感じだけどグネは少し曲がってる部分がある感じだなとかで理論化してしまう・・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ