表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/477

咲那の提案

 子犬もすごくおとなしい。抱かれたまま、とてもリラックスしてる。もしかして嫌だったりするかなと思ったけど、尻尾を振ってるから嫌じゃない、ということかな?

 私が子犬のもふもふを堪能していたら、咲那が言った。


「ねえ、リタちゃん。その子、私の家で生まれた子なんだけど」

「ん」

「よければ、もらってくれない?」

「…………」


 もらう。もらって帰る。つまり、精霊の森に連れて帰ってもいいってこと、だよね。それはすごく魅力的な提案だ。誘惑されそうになる。でも。


「それは、だめ」

「え……?」


 咲那が、そして真美も、驚いたみたいに目を丸くした。


「その……理由とかは、ある? リタちゃんなら、この子を任せてもいいと思ったんだけど……」

「ん。危険だから」

「危険?」

「ん。私が住んでる精霊の森は、すごく危険。私がずっと一緒にいてあげられたらいいけど、出かけられなくなるのはちょっと困る」

「精霊様に預けたりとか……」


 んー……。そっか。私が呼べばいつも来てくれるから、誤解してる人も多いのかも。


「精霊様は、すごく忙しい。私が呼べば来てくれるけど、普段はいつもお仕事してる。私がいない間犬を見ていて、なんてさすがに言えないよ」

「そうなの……?」

「そうなの」


 精霊様は、世界樹の精霊だ。世界樹の精霊の仕事は、世界樹を守ることと、そして世界樹からあふれ出す魔力の流れを管理すること。それは精霊様にしかできない仕事で、代わりがいない。

 だから、犬のお世話まで頼むことはさすがにできないよ。

 そう説明すると、二人とも納得してくれた。


『精霊様ってもしかしてすごく偉い?』

『多分あの世界の頂点だぞ』

『俺は師匠さんの頃から見てるけど、精霊様の上を見たことないな』


 ん。精霊様はすごいのだ。


「ん!」


『謎のどや顔』

『多分精霊様を自慢できて嬉しいんだと思う』

『お母さんを自慢する子供かな?』


 それはよく分からない。


「そっかあ……。でもまあ、仕方ないね」

「ん。せっかく言ってくれたのに、ごめん」

「ううん! 納得できる理由だったし、無理強いなんてしても、ろくなことにならないから!」


 名残惜しいけど、子犬を咲那へと返す。咲那が子犬をケージの側に下ろすと、子犬は自分からケージの中に入っていった。すごく賢い。


「いやあ、それにしても、真美がリタちゃんの友達だっていうのはびっくりした! 何も言ってくれなかったし!」

「ああ、うん。ごめん」

「いやいや! 仕方ないのは分かってるから! 慎重になるのも致し方なし!」


 そう言って快活に笑う咲那。本当に、すごく元気な子だ。それだけでも好感が持てる。真美も信頼してるみたいだし、きっといい子なんだろうね。


「その子犬はどうなるの?」

「里親探すよ、もちろん! 幸せにしてくれる素敵な里親さんを見つけないと!」


 ん。そっか。この世界の犬について詳しくない私は、あまり手を出せることはなさそう。だからせめて、いい人が見つかるように、それだけ願わせてもらおうかな。


「ところでリタちゃん」

「ん?」

「犬? 猫? どっち?」

「急になに?」


 えっと、それは好きな方を聞いてるのかな。犬か猫か。んー……。両方とも、かわいいよね。両方とも好き。でもどっちかと言えば……。


「犬かな」


『よっしゃあ!』

『ちくしょう……!』

『犬派の俺、大歓喜』

『犬派と猫派の争いかこれ』

『争いってほどでもないけどな』


 どっちも好き、でいいと思うんだけどね。

 咲那はそっかと頷きながら、一枚の紙を取り出した。チラシ、かな? それを私と真美に渡してくる。えっと……。犬カフェ?


「そこ、東京で新しくオープンしたお店で、たくさんの犬と触れ合える喫茶店!」

「へえ……」

「最高だったよ!」


 あ、咲那は実際に行ったことがあるんだね。それで、私に勧めてくれたと。

 犬と触れ合える喫茶店。いいなあ。すごくいい。とても気になる。行ってみようかな。


「あ、えっと……。リタちゃん」

「ん? どうしたの。真美」

「その、私も興味あるなって……。一緒に行っちゃ、だめかな?」

「ん。いいよ」


 そういえば、真美と一緒に出かけるっていうのは、あの高い場所に行った時ぐらいだった。せっかく友達になったんだし、友達と一緒に遊びに行くっていうのも体験してみたい。

 友達と遊びに行く。うん。すごくいい。


「いつがいい?」

「土日なら大丈夫」

「ん。じゃあ、土曜日で。楽しみ」

「うん! よろしくね、リタちゃん」


 ん。友達と一緒にお出かけ。すごくすごく、とっても楽しみだ。気付けば頬が緩んでた。


「ん……」

「リタちゃんがすごく機嫌よさそう」

「あはは。かわいいでしょ?」

「うん。すごくかわいい」


 そういうことは言わなくていいよ。


壁|w・)犬か猫かで言えば僅差で犬だけど、やっぱりどっちも好き。そんな感じです。

ちなみにここまでが第七話のイメージです。次回からは第八話。


来週から金曜日の更新をお休みさせていただきます。それ以外はできるだけ更新を続けます……!



面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。

書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。

ではでは!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 犬はウルフ 狼系がいるから、いいけど、猫は…………… 豹とかチーターとか、それ系だよね…………… 確かに、群れで暮らす狼系の方が、単身で狩りをする猫系魔物より、いいかも…………
[一言] 犬派かー 今度から配信でリタちゃんの犬になりたいとかリタちゃん飼って下さいワンとか言い始めるコメントで溢れるだろうね、間違いない
[一言] お母さんを自慢する子供わかるw 動物カフェ行ってみたいけど手近に無いんよね……。 自分のペースで無理なくお願いね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ