パーティメンバー
私の質問に、フランクさんは苦笑いを浮かべた。
「まあ儲けがないのはその通りだけどな? でも、それはいいんだよ別に」
「ん?」
「初めての依頼だと分からないことだってあるかもしれないだろ? 特にリタちゃんはいきなりCランクになってるんだしな。まあ、それでだよ。うん」
ああ……。つまり、私のため。ただそれだけのために、何のメリットもないのに手伝ってくれようとしてるんだね。本当に、いい人だ。
「ありがとう」
私がお礼を言うと、フランクさんは照れくさそうに笑った。
「俺がやりたくてやることだからな。気にするな。それで、どれにする? 薬草採取にもいくつか種類があるぞ」
「ん……?」
「この街なら、DランクとCランクの二つがある。Dランクなら街の外だが近くで見つけられるもの、Cランクなら森の奥、魔獣の生息域まで探すものだな」
つまり戦う必要があるかどうかっていう区別かな。もちろん街の外に出るならDランクでも戦う必要があるかもしれないけど、Cランクよりはずっと少ないと思う。
その二つなら、Cランクかな。Dランクだとちょっとつまらない気がする。
「じゃあCランクで」
「ま、そうだよな。じゃあこの依頼票を持って行くといい」
フランクさんが掲示板から剥がした依頼票を私に渡してくれた。依頼の詳細が書かれた小さい紙だ。これを受付で渡せば、依頼を受けたことになるってことかな。
早速受付に向かう。フランクさんもついてくる必要はないと思うんだけどなあ。
受付にたどり着くと、フランクさんが言った。
「受付で依頼票とギルドカードを渡せば、登録完了だ」
「ん……?」
え。待って。ギルドカードを渡すの? 今? 私、あの目立つSランクのカードしか持ってないんだけど……。
「嬢ちゃん、どうした?」
フランクさんが怪訝そうに聞いてくる。どうしよう。あんまりSランクっていうのは言いたくない。
『リタちゃんどうしたんだ?』
『目立つのが嫌みたいだから、ギルドカードを渡したくないんだろ』
『めちゃくちゃ目立つカードだからなw』
『金ぴかだっけなそういえばw』
そうだよ。だから困ってる。
私が困っていると、助け船を出してくれたのは受付の人だった。
「ああ、リタちゃん。その依頼を受けるの? だったら預かっていたカードで受けるわね」
そう言って受付の人は私から依頼票を取り上げると、カウンターの中で何かを書いて、そして依頼票とカードを渡してきた。そう、カードもだ。
カードは、真っ白のカード。Cランクということと、私の名前が書かれてる。思わず受付さんを見ると、笑顔でウインクされた。わざわざ用意してくれていたらしい。
「ん。ありがと」
いろいろな意味をこめてそう言うと、受付さんは笑いながら頷いた。
『さすがギルド、太っ腹やな』
『どうせくれるなら先によこせよと言いたいけどw』
『たしかにw』
それはちょっぴり思うけど、問題なく私の手元に届いたんだから、気にしないでおきたい。
私は待ってくれてるフランクさんに振り返ると、カードと依頼票を掲げてみせた。
「受けた」
「はは。おう。それじゃ、行くか」
フランクさんが大きな剣を担いでギルドの外へ出て行く。私も慌ててその後を追った。
「なんでお前らがいるんだよ……」
フランクさんが疲れたようなため息をついて、あとの二人が機嫌良さそうに答えた。
「だっておもしろそうだから」
「こんな面白イベントを逃すわけがないでしょう?」
あ、フランクさんが頭を抱えた。気持ちは分からなくもない。
最初、私たちは二人で街を出るつもりだった。簡単な依頼にフランクさんのパーティメンバーを巻き込むのも申し訳ないから。依頼の報酬も、フランクさんたちからすれば雀の涙程度のものだろうし。
でも、それを許してくれなかったのがフランクさんのパーティメンバーだ。ギルドを出たところで、すぐに捕まってしまって同行してもらうことになった。
フランクさんのパーティメンバーは、二人。顔に傷のあるお兄さんと、黒いローブの魔法使いのお姉さん。二人とも、私が初めてギルドに入った時にお話ししてくれた人だ。
お兄さんの名前はケイネスさん。背中には剣と盾を背負ってる。
お姉さんの名前はパールさん。見た目通り魔法使い。二人とも、ランクはBランクらしい。
『ゲームに当てはめれば、前衛の剣士、タンクの騎士、後衛の魔法使い、てところかな』
『ほーん。なかなかバランスが取れた構成じゃね?』
『逆に言えば面白みのない構成だなあ』
『命がかかってんだから面白みを求めんなw』
本当にね。死なないようにと思ったら、こういうパーティになるのかも。
「よかったの? 薬草の採取だけだよ?」
二人に一応聞いてみたけど、二人とも満面の笑顔だった。
「もちろん。将来有望な新人を指導するのも、僕たちの役目だからね」
「リタちゃんは何も気にしなくていいわ。私たちが勝手にちやほやしたいだけだから」
それはそれでちょっと困る。少しだけ、恥ずかしい。
私たちが向かうのは、街の南にある森だ。街の南側へ一時間ほど歩くと、大きな森になるらしい。ただ未開の森っていうわけじゃなくて、ちゃんと馬車が通れる道が整備されてる。その道から逸れた場所が目的地だ。
整備されている道があるとはいえ、森は森。一部危険な魔獣も出てくるから油断はしないように、と注意された。
外の魔獣ってどんな子がいるのかな。すごく楽しみだ。
「おかしいな。俺は一応、忠告したつもりだったんだけどな……」
「はは。怯えるどころか楽しそうだよ」
「いい性格してるわね、この子」
だって、楽しみだからね。
『魔獣に会いたがるリタちゃん』
『やはり野生児、間違いない』
怒るよ? あ……、いや、これ、否定できない。怒れない。普通に考えたら魔獣が楽しみってあり得ない。せめて表情に出ないようにしないと。
壁|w・)テンプレ(を外した)おっちゃんたちが仲間になりました。
一応、あの街ではそれなりに腕の立つ冒険者だったりします。
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ではでは!