ゴチン!
ルドガーさんに見せてもらった地図を確認して、空を飛ぶ魔法で一気に移動。転移魔法でも良かったけど、ルドガーさんの知らない背の高い建物ができていたりしたら危険だから、念のために飛行で移動だ。
そうして、私たちは獣人国の王都の前にたどり着いて。
「おろろろろ……」
ルドガーさんがうずくまって吐いてしまった。
「きたない」
『鬼だ。鬼がいる』
『落ちたら絶対に助からない高さを猛スピードで飛んで行く体験をした人の気持ちを答えよ』
『日本で言うならジェット機にヒモで吊るされて飛んでるようなもの?』
『生きていることが奇跡では?』
ルドガーさんもAランクなんだし、これぐらい大丈夫だと思うよ。
そんなことより、早く国に入ろう。どんな国か楽しみだから。美味しいものもきっとあるはず。わくわくだね。
「ルドガーさん。何か目印になるものはある?」
「うぐぐ……。それなら……冒険者ギルドはどうだ……? 間違いなく誰もが知っているから……聞けば分かる……」
「分かった。じゃあ先に入ってるから、後でそこで会おうね」
「え」
ルドガーさんの体調が戻るまでもうちょっと時間がかかりそうだからね。Aランクだし大丈夫でしょ、と守ってあげなかった私も悪いと思うから待ってあげないといけないかもしれないけど、私は早く街を見たいから。近くに門番の兵士さんもいるし、大丈夫だと思う。怪訝そうにしてるけど。
ルドガーさんを置いて、門へと向かう。兵士さんは二人いる。私を見て、ふん、となんだか不愉快そうに笑った。
「人族……いや、エルフか? エルフがここに何の用だ。薄汚い森の種族が……ぶげえ!?」
「あ……」
しまった。
『リタちゃーん!?』
『クソみたいな門番だと思っていたら黒い拳に殴り飛ばされていた。何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何を見たのか分からなかった……!』
『いや見たそのまんまだと思うがw』
『で、リタちゃん、何か言い訳は?』
いや、えっと……。いきなりけんか腰だったから、ちょっとだけ、そう、ちょっとだけ……。
「ちょっとだけ、軽く小突いただけだよ……?」
「ひぃっ……!」
『もう一人の門番さんが怯えていらっしゃるw』
『さっきまでこいつも小馬鹿にしたように笑ってたのにw』
『完全に化け物を見る目のそれである』
ちょっと失礼だと思う。だって、ほら……。
「ぴくぴくしてる。つまり生きてる。死んでない。大丈夫」
「あばばばばば」
『兵士さーん!』
『死んでなければ良かろうなのだー!』
『第一印象最悪では?』
おかしい……こんなはずじゃなかったのに……。
とりあえず、魔法で殴ってしまった人を回復させてあげよう。
『ところでさらっと新魔法が出てきたな』
『口でも刃でもなく、黒い拳というか……球?』
『ばくっでもなくすぱっでもなく……。なんだろう?』
んー……。
「ゴチン、とか?」
『ゴチンという音でしたか?』
『めきゃ、というか、ぐしゃ、というか、そんな音してませんでしたか?』
「気のせい」
そういうことにしておこう。適当に作っちゃったから改善もしたいし、名前はまた今度だね。
ささっと魔法をかけると、兵士さんが目を覚まして私を見て。
「ひいいいぃ!?」
這いつくばって必死になって私から逃げた。いくらなんでも失礼だと思う。
「ちょっとむかっとする」
「ししし失礼しました申し訳ありませんでした!」
「いいけど……」
そんなに怯えなくてもいいと思うんだけどね。
兵士さんは立ち上がって、二人しっかり並ぶ。でも二人とも、明らかに怯えたような目をしていた。歯がカチカチなってる。
「街に入りたい」
「貴様……こんなことをやらかしておいてそれが通ると思っているのか!?」
「は?」
「すみません認めることは難しいです!」
『おいwww』
『言っていることは正論なんだからもうちょっとがんばれよとw』
『さすがにちょっとやらかしちゃったからね』
それは困る。ちょっと困る。いっそ門を無視して空から入ってもいいけど……。あ、そうだ。
アイテムボックスからギルドカードを取り出して渡す。フードは被ってないけど、Sランクのカードを渡しておいた。こっちの方がいいかなと思ったから。
兵士さんはギルドカードを見て、頬を引きつらせた。
「これは……。魔女の方、でしたか……」
「ん」
「それならそうと早く言ってくだされば……」
「だっていきなりバカにされたし……。でも、ごめんね?」
「それは……はい……。こちらも申し訳ない……」
お互いにごめんなさいして、終わり。私もいきなり殴っちゃったからね。気をつけないと。
「では通行を許可しますが……。申し訳ないのですが、街の者も同様の反応を見せる者がいると思います。広い心で許していただきたく……」
「いきなり言われなかったら大丈夫だよ。それに……」
魔法を使う。獣化の魔法。今回も猫耳にしておこうかな。
「こんな魔法もあるし」
『猫耳だー!』
『俺たちのにゃんこリタちゃんが帰ってきた!』
君たちのものになった覚えはないよ。
兵士さんは驚いたように私に生えた耳を見て、そして言った。
「どうせなら最初から使ってくださればよかったのでは?」
「…………」
『草』
『マジでそれな』
いや、うん、その……。ごめんなさい。
壁|w・)つい手が出ちゃっただけで私は悪くない、と供述しているようです。





