王都に行くための話し合い
あの料理に臭いが拡散しない魔法をかけた。とりあえずこれで新しい臭いは出てこない。ついでにお家の中も当然として、周辺一帯にも消臭の魔法をかけて回った。たくさんの人にものすごく感謝されてしまった。
「私の人生の中で一番感謝された日かもしれない」
『すごいよな。リタちゃんの手を握って涙ながらに感謝してたもんな』
『どんだけ臭かったんだよと』
『ギルドで作ってた時、どれだけ迷惑だったんだろうな』
なんだかんだと魔法使いはいつもいるだろうから、その人たちがいろいろ魔法を使っていたんだと思うよ。お家で作ると魔法使いがいないからね。誰も防げなかったんだと思う。
それにしても……。
「一番感謝されたのが消臭の魔法なのはちょっと複雑」
『いや草』
『いろんな魔法使えるはずなのになあw』
『やっぱり身近な魔法が一番感謝されるものだよ』
そういうものなのかな。いや、実際にそうだったけど。
さて、と。
「どうしようこれ」
私が今いるのは、ルドガーさんのお家。そのルドガーさんは、部屋の隅で転がってる。わりと強めの電撃をあびせたからか黒焦げだけど、きっと大丈夫。
テーブルにはあの料理。臭いを封じたから、今はもう普通に食べられる。本当に、味だけならまともだよね。ルミナさんも文句を言いながら食べてるから。
「本当に……。味はいいのに……。でもあんな臭いを周辺にまき散らすなんて、家から追い出されたらどうするの……」
「ん……。あり得そうだから困る」
それぐらい臭いからね。
ちなみに本当に大量に作られていたんだけど、臭いを封じたこともあって近隣の人も食べてくれた。今はもう残りは少なくなってる。すぐに食べ終わるはずだ。
「ほら……美味しいじゃないか……。みんな……食べるじゃないか……」
「お兄ちゃん。次同じこと言ったら殺すから」
「はは……。妹に負けるほど落ちぶれてなど……」
「魔女様が」
「任せてほしい」
「すみませんでした」
慌てたように姿勢を正しての謝罪だった。
しっかりと残りの料理も完食してから、ルドガーさんに向かい側に座ってもらった。改めて、計画を練っていこうと思う。
「まずは、やはり獣人国の王都へ向かうべきだろう。目的が食なら、やはりあの場所が一番いい」
「そうなの?」
「王都だからな。あらゆる種族が集まってくる。つまり、彼らに伝わる料理も自然と集まってくるというわけだ。やはり故郷の味をみんな求めるものだからな」
「なるほど」
それはなんとなく分かるかも。観光とかならともかく、長く住むならやっぱり食べ慣れたご飯が食べたいものだと思うから。
「私がカレーライスをたくさん食べたくなるのと一緒だね」
『多分絶対に間違いなく違う』
『お前はいったい何を言っているんだ』
『そもそも故郷の味じゃないだろうにw』
んー……。じゃあ、師匠のご飯の味、とか……?
まあ、ともかく。まずは王都ってことだね。
「それじゃあ、早速行こう」
「まあ待て。まずは注意事項だ」
「ん……?」
注意事項。なんだろう?
「獣人国の王都は、大きなスラムが存在する」
ルドガーさんが言うには、王都にはたくさんの獣人たちが集まってくる。でもみんなが王都で成功するわけじゃない。当然失敗して、まともに働けなくなる人も多いのだとか。
そして獣人は他の種族を下に見る傾向がある。それが王都でも当然ある。むしろこの街は交易があるからましだけど、王都ならあからさまに見下す人もいるらしい。
つまり何が言いたいかと言えば。
「スラムは他の種族の者にとってはかなり危険な場所だということは理解しておいてほしい」
「そんなに?」
「ああ……。魔女殿がスラムに入れば、間違いなく一日に何度も襲われるだろう」
「おー……」
そうなんだ。それはとても危険だね。
『そんな危ないところ行く必要ないのでは?』
『危ない……のか?』
『結界の反射でむしろ相手が危ないのでは』
さすがにそれはちょっと弱くするから大丈夫……。
「襲ってきた者の自業自得になるとはいえ、同族の死屍累々の様子を俺は見たくない」
「…………」
『草』
『つまりリタちゃんを心配してるんじゃなくて、反撃してぶっ殺されるだろう人らを心配してるわけねw』
『それでもリタちゃんなら……リタちゃんならやってくれる!』
そのやってくれるはどういう意味で使ってるの?
ルドガーさんが何を危惧しているのかは理解した。まあちょっと、いやかなり不本意だけど理解した。でも安心してほしい。
「何もされなければ私も何もしない」
「だから何かされるのは間違いないってことなんだが?」
「ちゃんと襲ったらだめだっていうのを理解させてから治す。大丈夫」
「どうしよう。大丈夫な要素がない」
『半殺しですね分かります』
『死ななければ問題ない理論』
『治癒魔法で本当に問題ないから困る』
『問題しかないんだが?』
本当に大丈夫だから安心してほしい。
ルドガーさんはまだちょっと怪訝そうにしていたけど、とりあえずは納得してくれたみたい。それじゃあ、と出発することになった。
「王都までは馬車で半月かかるが……」
「空を飛ぶ魔法でさっさと行こう」
「俺は使えないが……」
「大丈夫。引っ張るから」
「なにそれ怖い」
心配しなくても落とさないよ。
獣人国の王都。美味しいものあるかな? 楽しみだね。
壁|w・)食べた後、胃の中からやばい臭いが……!ということはありません。





