次の食べ物
転移で長崎駅に戻ってきた。やっぱり目印にちょうどいいから。長崎駅の前でのんびり配信だ。近くを通りかかる人が写真を撮ってくるけど、私は気にしない。手を振られたら振り返しておく。ふりふり。
『リタちゃんのおててふりふりを写真に撮ったぞ!』
『その写真をよこせ!』
『リタちゃんが許可くれたらな!』
「好きにしていいよ」
『許可が出たぞー!』
『おk、ダウンロードできるようにしてくる』
『あなたが神か』
『今なら足もなめられる気がする』
『キモいからやめろ』
写真だけで大げさだね。手を振るぐらいならいつもしてるのに。
おやつにアイテムボックスからあめ玉を取り出して、口に入れる。ほんのりとした甘さが口に広がって美味しい。
『さっき甘いもの食べてたのにまた甘いものなめてるw』
甘いものはいくらでも食べられると思う。甘いは正義です。
それじゃあ……。次はどこに行こうかな?
「美味しいものを食べたい」
『ちゃんぽん! ちゃんぽんいいぞちゃんぽん!』
『皿うどんもな!』
『佐世保バーガーとかどう?』
『長崎県は養殖のトラフグが日本一だよ!』
「おー……」
なんだかたくさん提案してくれてる。んー……。どれにしよう。
「じゃあ……。最初のちゃんぽんで。コメントでも一番多いし」
『やったあ!』
『負けた……』
『まだ慌てる時間じゃない。リタちゃんならまだまだ食べるはずだから』
そうだね。観光とかもしてみたいけど、食べ物もまだまだ食べるつもりだよ。
それじゃあ、まずはちゃんぽんだけど……。
「どこに行こう?」
『日本全国でチェーン店出してるあの店がやっぱり鉄板では?』
『俺の地元で美味しいちゃんぽん出してるお店があるぞ!』
『ちゃんぽん安価しようぜ!』
さすがに面倒だからやらないよ。んー……。
周囲を見る。通りすがりに写真を撮る人もいるけど、なんだか人だかりができ始めてる。人がいっぱい、だね。そろそろ移動しないと、他の人の迷惑になっちゃうかもしれない。
「じゃあ……」
杖をそっと構える。術式を構築して……。これでいっか。
魔法を使うと、杖の先から光球が出てきた。小さい光球で、日本で言うなら卓球の球ぐらいだと思う。卓球はテレビでしか見たことがないけど。
その光球はふわふわと人だかりの方へと向かっていった。
『なんだなんだ?』
『見られていることに怒っちゃいましたか!?』
『攻撃はだめだぞ!』
「攻撃はしないよ」
そもそも今更見られていることに何か思うこともないし。この人たちは私を何だと思っているのかな。
光球はふわふわと人だかりへと向かっていく。たくさんの人はなんだか慌てているけど、みんなどうしていいのか分からずに結局立ち尽くしてる。
「私が言うのもなんだけど、変なものからは逃げた方がいいよ?」
『本当にリタちゃんが言うことじゃないなw』
『むしろ変なものを出してる側でしょうがw』
まあそうなんだけどね。
やがて光球は人だかりの中に入っていって……。
「え、え!? なにこれえ!?」
誰かにぺたっと貼り付いた。
『何やったんだリタちゃんw』
『また何か変な魔法作ったっぽい?』
『保護者さん、何か一言』
『いや、別に悪いことはしないはずだから……』
悪いことじゃないよ。せっかくたくさん人がいるんだから、教えてもらおうと思っただけ。
人だかりの方に歩いていく。ほとんどの人はさっと離れたけど、一人だけ、動けない人がいた。腕に光球を貼り付けた人だ。
「な、なにこれ……。どうしよう……」
女の人だね。真美ぐらいの年齢の学生さん。
「こんにちは」
私が声をかけると、学生さんはびくっと体を震わせて怯えたような目を向けてきた。
「え、と……。こんにちは……」
「学生の人、だよね。今日は平日じゃないの?」
確か日本の子供は平日に学校に行くはず。真美も朝ご飯の後は学校に行ってるはずだから。いつもコメントで反応を返してくれるからたまに分からなくなるけど。
「あの、ですね……。創立記念日というもので、お休みで……」
「ん……? それ、制服だよね?」
セーラー服。日本ではよく見る学生の制服。夕方とかだと学校が終わった人で同じ服装の人をたくさん見てるから。
「…………。創立記念日を忘れて学校に行きました……」
「ふうん」
『草』
『あるあるw』
『創立記念日は当たり前だけどカレンダーが対応してくれないからね……。俺も一度だけやらかしたことがあるなあ』
『仕方ないから遊びに行ったら補導されたことある。説明したらおまわりさんに笑われたのはいい思い出』
創立記念日は学校によって日が違うらしい。確かにそれは分かりにくいね。
壁|w・)学生さんを捕獲!





