表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/475

精霊様の照れ隠し

「これはすごい……。ちなみに、いくつか作ってもらったりとかは……?」

「んー……。今回は、情報のお礼だから。対価をくれたら、考える」

「対価……対価か……」


 そこまで真剣に考えるほどのものなの? 私にとっては、一回しか防げないから微妙だと思ってたりするんだけど。


「これそんなにすごいの?」


『わりと真面目にかなりすごい』

『一般人だとあまり意味がなさそうだけど、政治家にとっては喉から手が出るほど欲しいんじゃないかな』

『大金積まれてたくさん作ってくれって言われても不思議じゃない』


 うわ、それは面倒だ。そこまでやりたいとも思わない。さすがに私の生活の邪魔になるほど引き受けるつもりはないよ。


「どれだけお金を積まれても、私は気まぐれにしか作らないから」

「そ、そうか」

「ん。あと、私が知らない人に使われるのもやだ。最低限私と会って話すこと。あと嫌いな人にはそれでも作らない。あと何度も言うけど気まぐれ。もう一度言うけど気まぐれ。気まぐれ」


『大事なことなので三回言いました』

『マジで三回言ったのは草w』

『草に草を定期』


 橋本さんは少し考えてたみたいだったけど、それでもいいと頷いてくれた。これでいいなら、私も作ってあげるよ。対価はもらうけど。

 その後は、依頼する場合のことを少し細かく決めて、帰ることにした。ちなみに依頼方法の詳細は一度配信を切った。秘密の方法ってやつだよ。かっこいいでしょ。

 まあ、メールを送るだけ、なんだけどね。




 ホテルの部屋から世界樹の側に転移して、私はすぐに精霊様を呼んだ。


「これ。師匠の実家候補」

「早くないですか!?」


『間違いなく早い』

『でもその代わりに候補は多いみたいだけど』

『あー! リタちゃん隠さないで! 見たい!』


 見せるわけないでしょ。みんなには森でも見ておいてほしい。

 精霊様は書類の量に驚きながらも、一枚ずつしっかりと確認していく。一応私も見ていくけど、昔からの師匠を知ってる精霊様の方が分かると思う。私は師匠との会話内容で判断するしかないし。

 時間をかけてじっくり見ていって、最後に精霊様は一枚の書類以外を片付けてしまった。


「ここですね」


 そう断言して。


「ん……。間違いない?」

「間違いありません。あの子のフルネームとご家族のフルネームが一致していますから」


 うん。よし。いや待って。


『フルネームって言いましたか精霊様?』

『下の名前しか分からないんじゃなかったのかよw』

『情報の出し惜しみはよくないと思います!』


 そう流れるコメントを見て、精霊様はにっこり微笑んだ。


「私は人間をあまり信用していませんので」


『あ、ハイ』

『ヒェッ』

『すみません黙ります』


 ちょっと背筋がぞくっとした。でも、私はごまかされない。


「フルネームを見て思い出しただけでしょ」

「…………」

「精霊様? 私の目を見よう? ねえ?」


『くっそwww』

『偉そうなこと言ってて忘れてただけかよw』

『照れ隠しに脅すとか精霊として恥ずかしくないんですかねえ?』


「くっ……! あなたたちなんか嫌いです!」


 精霊様はそう言って消えてしまった。消える直前の精霊様の顔は真っ赤だった。かわいかったよ。

 それじゃ、また地球に、と思って立ち上がったところで、ひらひらと私の目の前に落ちてくる世界樹の葉っぱ。手に取って見てみると、文字が書かれていた。

 思い出せなくてごめんなさい、だって。


「かわいい」

『かわいい』

『かわいい』


 たまに私より人間くさく思えるのは気のせいかな。気のせいだよね。うん。

 それじゃ、改めて地球に行こう。真美たちをお出迎えしてあげたいしね。




 真美の家に戻った時には、夕方だった。書類を確認するのに時間がかかりすぎたかも。この後のことを考えて、先に配信は切っておいた。師匠の家族に会うなら邪魔なだけだから。

 真美の家の中にはまだ誰もいない。でもそろそろ戻ってくる頃だと思う。ちょっとだけそわそわしながら待っていると、玄関のドアから声が聞こえてきた。


「ただいまー」

「ただいまー!」


 真美とちいちゃんの声だ。二人とも、すぐにリビングに入ってきた。


「ん……。おかえり」

「ただいま」


 にっこり笑って、そしてすぐに真美は首を傾げた。


「電気つけてもいいよ?」

「私も今戻ってきたところだから」

「あ、そうなんだ。ちい、手洗いとうがいを先にしなさい!」

「はーい」


 走って行くちいちゃんと、苦笑する真美。うん。こういうの、いいなあと思う。ちょっぴり羨ましい。


「リタちゃん、晩ご飯は食べていく? 今日は……」

「あ、ううん。今日は大丈夫。何を作るか言わないで。食べたくなるから」

「えー? じゃあ食べていけばいいのに」


 不満そうに頬を膨らませてくる。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、今日は行かないといけないところがあるから。


「師匠の実家に行ってくる」

「え……。分かったの!?」

「ん」

「そっか……! じゃあ、うん。仕方ないね。すぐに行くの?」

「ん。二人と挨拶したかっただけだから」

「そうなんだ。ありがとう」


 ありがとう、はおかしいと思う。これは私の自己満足だから。でも言ってもらえて嫌な気持ちにはならない。なんだかこう、ぽかぽかする。


「それじゃ、行ってくる」

「うん。行ってらっしゃい、気をつけてね」

「いってらっしゃーい!」


 慌てて戻ってきたちいちゃんが元気よく手を振ってくれる。思わず小さく笑いながら、手を振り返して転移した。


壁|w・)そういえばこんな名前だったなあ、みたいな感じで思い出しました。



面白い、続きが読みたい、と思っていただけたのなら、ブックマーク登録や、下の☆でポイント評価をいただけると嬉しいです。

書く意欲に繋がりますので、是非是非お願いします。

ではでは!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 字面で思いだすってよくあるよね~ 漢字の全体像を模様として覚えてたんだと思う 根本的に、文字が違うからね
[良い点] > 思い出せなくてごめんなさい、だって。 精霊様ェ…。
[良い点] 精霊様可愛い〜( ´∀`) [気になる点] お守り候補者、お米の国の偉い人とか首相が個人的にも友好な人達に、ですかねぇ……。リアルでA部氏の暗殺とかもあったし首相がコイツは今政界から退場し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ