足湯と変な人
「店主さん」
「なに?」
「他に宮城県でおすすめの食べ物はある?」
「うーん……。そうね……」
そうして教えてくれたのは、麺料理。麻婆焼きそば、だって。麻婆って、麻婆豆腐のやつかな?
『麻婆焼きそばか。あれ結構美味しいよね』
『宮城で麺なら辛味噌ラーメンもあるけど』
『麺なんだからどっちも出してる店ぐらいあるだろ! 調べろ!』
『へいおやびん!』
『誰がおやびんか!』
辛味噌ラーメン。それも気になる。視聴者さんが両方食べられるお店を調べてくれるみたいだし、それに行こう。
お支払いをして、お店を出る。最後にみんなで写真を撮った。もちろんお客さんたちも一緒。店主さんが声をかけると、奥からもぞろぞろと出てきてびっくりした。そんなに写真を撮りたいんだね。
店主さんと二人での写真も撮っておいた。お店に飾るらしい。
「それじゃあ、ありがとう」
「いえいえ。またいつでも来てね!」
店主さんに挨拶をして、転移。転移先はちょっと上空で。たくさんの島を眺めながら、視聴者さんの答えを待つ。
『あの店はどう? わりと美味しかった』
『バカヤロウあそこの店主さん気難しいだろ! 絶対に嫌な気分になるぞ!』
『俺としては仙台駅の側の……』
そんなコメントが流れていってる。これ、多分決まらないよね?
というわけで。
「手を叩いて十番目のお店に行く。十番目のコメントがお店の名前じゃなかったら、その後のコメントで一番早いお店に行く」
『まさかのここで安価!?』
『それはちょっとだめだと思います!』
『美味しい店決めるから!』
「多分明日になっても決まってないと思う」
『くそう反論できないぜ!』
それじゃあ、手を叩こう。ぱん、と。
そうして決まったのは、ちょっと山の中にあるお店だった。近くに温泉もあるみたい。鳴子温泉、だって。帰りに寄っていこうかな。
『鳴子温泉だと!?』
『誰がわからんけどよくやった!』
『でも俺のおすすめのお店に行ってほしかった!』
『提案者を殺したい気持ちと感謝する気持ちでせめぎ合ってる』
『怖いよ』
とりあえず、目印になりそうな鳴子温泉駅に向かう。転移して、ちょっと上空に。さすが温泉地というだけあって、温泉の……硫黄の香りかな? それがする。
まずは駅前に下りて……。なにこれ。
「何かある。お湯をためてるの?」
『違うぞ』
『駅前の足湯です。温泉です。足だけつけるやつ』
「へえ……」
誰でも使ってよくて、無料らしい。何人か足をつけてる人もいる。あまり人はいないし、私も足をつけてみよう。気持ちいいのかな?
「お邪魔します」
「え? あ、はい……。うええ!?」
若い女性の側に座る。ここが一番スペースがあったから。女の人はあわあわしてるけど、私のことは気にしないでほしい。
そう思っていたら、その女の人がすごい勢いでスマホをいじり始めた。
『まさかここに来ないだろうと足湯でくつろいでいたら魔女っ子が来週してきた件について』
『まさかのご本人www』
『誤字ってるしかなり慌ててるっぽいなあw』
『羨ましいぞこの野郎!』
『よく見ろ! 野郎じゃないぞ!』
女の人はスマホと私で視線をいったりきたりさせてる。忙しそうだね。
靴を脱いで、服がお湯に入ってしまわないように気をつけて、足を入れる。おおー……。これは、気持ちいいかも。
ところで、お姉さん。さすがに足をじろじろ見られるのはちょっと気になるよ。
『リタちゃんの足がちっちゃくてかわいい。すべすべしてそう。さわりたい』
『やばいぞ変態だ!』
『ここの視聴者にはまともな人間はいないのか!』
『いるわけないだろうがいい加減にしろ!』
『たまにどこぞの首相や大統領も見守ってるらしいのに、まともな人誰もいないのかw』
さすがに言い過ぎだとは思うよ。でも……。
「んー……。ちょっとだけならいいよ」
「え」
「どうぞ」
握手と大差ないと思う。なので、足を突き出してみた。指先をちょっと動かす。
『ちょ』
『えええええ!?』
『ええんか!?』
「いいよ」
お姉さんはちょっと固まっていたけど……。スマホを、落とした。お湯の中に。
「あ」
『あ』
『あ』
私が思わず声を出したけど、視聴者さんは一瞬だけ視線を落として、言った。
「防水なので大丈夫です」
「あ、うん……」
『そういう問題か?』
『せめて拾えよw』
お姉さんがごくりとつばを飲み込んで……。そっと、私の足に触れた。
「わあ……。すべすべ……ぷにぷに……」
「んー……。ちょっと、くすぐったい」
「あ、ご、ごめんなさい!」
お姉さんが慌てて手を離して、スマホを回収して……。そして。
「あ、鼻血出てきた……」
手で鼻をおさえた。
『ちょwww』
『やっぱり変態じゃないか!』
『リタちゃんばくっとしなさい! ばくって!』
「さすがにやらないよ」
こういう人もいるんだね、ぐらいにしか思わないから。
壁|w・)これは間違いなく変態。





