お肉を切る配信者さん
牛タンをどこで食べるか。まずはそこから、だね。とりあえず宮城県の仙台という場所が有名らしいから、そこに移動してみよう。というわけで、転移、と。
そうして転移した先は、仙台駅の上空。いつもの日本の街並みだね。調べてみたら仙台市は結構広いみたいで、東側がこうした街並みで、西側は山とか森が広がってるみたい。
さてと……。牛タンはどこで食べればいいのかな?
「牛タンのおすすめのお店はある?」
『みんな言ってるけど、牛タンそのものはわりとどこでも食べられるからなあ』
『教えて地元民!』
『仕方ないなあ!』
『なんか出てきたw』
視聴者数も多いからか、地元民って名乗る人もたくさんいるね。そしておすすめのお店がずらっと流れていくわけだけど……。多い。とても多い。そしてお店の名前もたくさん。私じゃなかったら覚えられないと思う。
私が悩んでいたら、お店の説明も一緒に書いてくれるようになった。それはいいんだけど。
「文字がいっぱい」
『画面が文字で埋め尽くされてるぜ!』
『これリタちゃんはちゃんと読めてんの?』
『さすがに難しいのではなかろうか』
文字が重なって物理的に読めないとかでもない限り、ちゃんと読めてるし覚えてるよ。んー……。
「目の前で焼いてくれるところ、だって。ここがいい」
仙台駅からちょっと離れた場所にあるみたいだけど、私は転移で行けるからね。問題ない。ということで、早速もう一度転移だ。
そうして転移した先は、住宅地にある小さなお店。有名なお店らしいけど、今日はお休み、なので……。是非来てほしいとお店の人のコメントだった。
そう説明したら、視聴者さんはちょっと驚いてるみたいだった。
『そんなコメントあった?』
『コメントが多すぎてろくに読めなかったからなあ』
『リタちゃんが言うなら間違いないだろ!』
あまり信用されても困るけどね。
お店は、なんて言えばいいのかな。居酒屋って言えばいいの? そんなお店に見える。スライド式のドアに手をかけてみると、カギはかかってないみたいで開けることができた。
「いらっしゃい! まさか本当に来てくれるなんて!」
そう声をかけてくれたのは、三十代ぐらいの男の人だ。
お店は、入って左側にカウンター席、右側が座敷になってるお店だった。カウンター席は十席ほど。真ん中あたりの席に水の入ったコップが置かれてる。そこに座ってほしいってことらしい。
それはともかく。コメントがなんだかたくさん流れてる。
『マジかよ有名な配信者じゃん』
『肉の説明をしながら切ってくれる人!』
『俺この人の動画で肉の部位覚えたわw』
おお。配信者さんらしい。つまり。
「おそろいだね」
「リタちゃんにおそろいって言ってもらえた……嬉しすぎて吐きそう……」
『落ち着けwww』
『待ってこんな人だったのか!?』
『吐いてもいいけどトイレで吐けw』
お肉には絶対にかけないでほしい。
店主さんに促されて、椅子に座る。そして店主さんが、大きなお肉の塊を持ってきてくれた。なんだか、黒っぽい部位があるお肉だ。タンって、舌だよね? つまりこの黒いのが舌なのかな?
「どれぐらい食べる?」
「いっぱい」
「いっぱいかー! そっかー!」
『おいこの人めっちゃ嬉しそうやぞ』
『それだけ売れるから、とかじゃなさそうw』
『生いっぱいだからね! かわいいからね!』
『生いっぱいってなんやねん』
そんな変な言葉は作らなくていいよ。
店主さんはにこにこしながら包丁を取り出した。そうしてお肉を切っていく。まずは黒い皮、なのかな? そこを薄く切って取り除いていく。黒い皮を取り除いたら、薄皮も取り除くらしい。
「そういえば、リタちゃんも精霊の森ではお肉を食べているけど、なにか基準にして切っているのかな?」
「さあ?」
「さあ……?」
「解体魔法に任せてるから」
私も師匠も、魔獣を狩った後の解体は得意じゃない。やろうと思えば、本を確認した後にできるだろうけど……。正直、それをやるぐらいなら解体魔法に任せるかな。
『とても便利な解体魔法』
『解体魔法を作った昔の守護者さんすごい』
「うん。本当にすごい」
多分、そういうのが好きな人が作ったんだと思う。もしくは、好きだけど面倒くさがりな人が作った、かも? どちらにしても、とても助かってるから感謝してる。
皮を取り除いた後は、タン下というのを取り外す。タンの根元についている大きめのお肉、だね。わりと希少な部位らしくて、好きな人は好き、らしい。筋とか血管が多くてちょっと固いらしいけど。
タン下を取り外した後は、細長いお肉のできあがり。それを食べやすい大きさに切ったら完成だ。
「さて。リタちゃん」
「ん?」
「どれぐらいの厚みがいいかな? 薄切りとか厚切りとか。俺のお勧めは厚切りかな。牛タンの食感を楽しめるから」
「じゃあ、厚切りで。あ、でも薄切りも食べたいかも」
「はは。分かった。じゃあ両方だ」
店主さんが包丁を器用に使って、お肉を切っていく。薄切りと、厚切り、だね。厚切りの方のお肉には、なぜか切れ込みを入れたりしていた。なんだろう?
『隠し包丁ってやつやね』
『確か、生焼けを防ぐのと、柔らかく食べられるように、だったかな』
『この隠し包丁も綺麗でな』
隠し包丁。なんだかちょっとかっこいい。
切り終えた後は、実際に焼いていくことになった。
カウンターのちょっと上に鉄板が敷かれてる。すでに熱されているみたいで、店主さんがそこにタンを載せると、お肉の焼けるいい音が聞こえてきた。
『ぬああああ!』
『この音がたまらなく好き』
『やっぱりこの音だよね!』
お肉を焼く音っていいよね。それだけで期待してしまう。
壁|w・)ブロックのお肉を切っていく動画がわりと好きです。





