表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
482/485

獣人族の門番さん


 世界樹のある大陸は、この星では一番大きな大陸になる。けれど当然、他にも島や大陸があるわけで……。獣人の国も、そんな島国の一つだった。

 島一つがそのまま獣人族の国になっていて、港がたくさんあるみたい。島の大きさは……日本で言うところの北海道ぐらい、かな?

 でも島全部が整備されてるわけじゃなくて、村や町が点在してるみたい。獣人族の中でも種族がいくつかあって、それぞれで集落があったりするらしいよ。

 港から入ってもいいんだけど、今回は船じゃないから近くの街の外に下りることにする。そのための獣化の魔法だしね。

 というわけで。


「ここが獣人族の街」


 わりと大きな街にたどり着いた。大きな門に城壁に……。正直、見た目は人族の街と大差ないと思う。


『おー!』

『ここが獣人族の街か!』

『いかにもな感じが……しませんね!』

『本当に獣人族の街か?』


 そう聞かれると、ちょっと不安になってしまうけど……。師匠がそう言ってたから、間違いないはずだ。


『シッショへのあつい信頼を感じられるな』

『これで間違ってたらシッショの評価だだ下がりだな』

『シッショが嫌いになったら俺のお家においで!』


 知らない人の家に行くつもりはないし、そもそも間違っていても嫌いになんてなったりしないよ。師匠だって人間なんだから、間違えること、忘れることはあるだろうから。

 それよりも。早速街に入りたいと思う。きっと住んでいる人は違うはずだから。

 てくてく歩いて門へと向かうと、門番の兵士さんが二人立っていた。兵士さんは……犬っぽい人と猫っぽい人だ。犬っぽい人は、もふもふの犬が二足歩行しているような感じだね。

 兵士さんたちは私を見ると、驚いたように目を瞠った。


「君は……一人で来たのか?」

「ん」

「なんと……。親は……大人はどうした?」

「捨てられたから」

「なんてやつだ……!」

「仕返ししておいた」

「あ、そう……」


『草』

『コントかな?w』

『猫兵士さんが義憤にかられたっぽいのに、一瞬ですんっとなるの草なんだ』


 もしかしたら、兵士さんたちはついさっき私が捨てられたと思ったのかも? 私が捨てられたのは生後まもなくだからもうずっと前だよ。


「今は一人で旅をしてる」

「まだ小さいのに……。仕事を探しているのかな?」

「冒険者」

「になりたいのか!」

「なってる」

「なってるのか……」


『なんだこれw』

『リタちゃん、兵士さんで遊んでない?』

『かわいそうだよ!』


 いや、そんなつもりはないよ。うん。本当に。

 街に入るためには身分証が必要らしくて、ギルドカードを渡しておいた。ギルドはほとんどの国にあるらしいから、きっと大丈夫のはず。

 犬兵士さんはギルドカードを受け取って、頷いてすぐに返してくれた。


「ありがとう。これが地図だ。無料だから持っていってくれて構わないよ」

「ん」


 地図を受け取る。んー……。ざっくりとした地図だね。だいたい街のどのあたりにどんな施設があるか、ぐらいしか分からない。色も黒色しかないし……。あと、手書きだ。大変そう。

 こうして思うと、日本で見る地図はちょっとおかしいと思う。カラーで距離の縮尺もかなり正確だし、本当にすごい。つまり。


「日本人は頭がおかしい」


『なんで罵倒されたの!?』

『いや、多分悪い意味じゃない……はず』

『地図を見てからの反応だから、日本の地図がおかしいってことでしょ』

『それはまあ理解できるw』


 便利なのはいいこと、だけどね。

 あと……。ちょっと気になるところがある。たとえば、そう。犬兵士さんの、耳とか。ふさふさしていて、かわいい。


「じー……」

「ど、どうしたのかな?」

「耳……かわいい」

「君にもかわいい耳があるだろう?」

「触ってみたい」

「ええ……。いや、構わないけどね……」

「人の耳を触ることがなかったから」

「うっ……。いくらでも触りなさい……」


 どうしてか急にしんみりとした顔になった。不思議だね。


『いや、あの……。どうしてそんな誤解を招く言い方になってしまうんですか……』

『親に捨てられて蠱毒で生きてきたから、触れないんだろうなって思ったんだろうなあ』

『孤独だろって言いたいけど蠱毒でもある意味間違いない気がするw』


 私は微妙に失礼なことを言われたような気がするよ。

 屈んでくれた犬兵士さんの耳を触ってみる。おお……。犬の耳だ。ちょっとだけ違う気もするけど、犬の耳だね。ふわふわしていて、わりと気持ちいい。

 猫兵士さんの耳を触らせてもらう。これも猫の耳で、うん。とてもいい。


「ありがとう」

「ははは……。いや、いいさ。ただ、あまり街の中では言わないようにね」

「どうして?」

「種族によっては、結婚するほど仲が良い相手でないと触らせないからさ」

「ん……。気をつける」


 結婚、というのは正直そこまでよく分からないけど、避けた方がいいという程度で覚えておこう。

 それじゃあ、獣人の街だ。ちょっと期待しながら、私は街の中に入っていった。


壁|w・)もふもふ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
現代日本だってカンパの金額でコマの大きさ変わる縮尺怪しいトタン製の横丁や町内案内図いまでもあるよね…
門番さんが優しくて ( ;∀;)ホロリ そう、ひらがな、カタカナ、ローマ字等々言語然り 他国の食べ物をアレンジして、国民食と言われるまでにしてしまうこと然り ゴボウやラフランスなど、もはや生産国より…
必要以上に言葉を省いたり、細かく区切って喋ったりするよねリタちゃんは。長年の精霊の森暮らしで第3者との出逢いが少ないのと、普段の話し相手がほぼ固定だった弊害なのかも。長年一緒に暮らしていたなら、自分が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ