観覧車
最後に立ち寄ったのは、とっても大きな円形の乗り物。円には等間隔に乗り物……ゴンドラっていうんだっけ? それが取り付けられていて、そこに乗るみたい。
ゆっくりと回っていて、景色をのんびりと眺める、というものだね。
『つまりは観覧車』
『遊園地の定番ですな!』
『観覧車でのんびりするのが好き』
『俺、夜の観覧車で告白したことがある』
『リア充だ!』
『久しぶりに来たなリア充!』
『許さん殺せぃ!』
『振られたけど』
『あ、はい……』
『その、なんだ、あれだよ……。元気出せよ……』
『俺たちはお前の味方だよ……』
なんだかコメントが変なことになってる。告白とかなんとか……。告白って好きってことだよね。それを伝えるのがとても大事なことらしい。
「じゃあ私も師匠に観覧車で告白すればいいの?」
「まずは好きと告白の意味を知るところから始めような?」
「んー……?」
前にも言われた気がするけど、そのわりには誰も教えてくれない。調べても、よく分からないし……。難しい。
「アルティ。分かる?」
「うーん……。私はリタのこと、好きだよ?」
「私もアルティは好き」
「えへー」
「これは……真美ちゃんに丸投げするか」
『やめてください!』
『おいお父さんwww』
『精神年齢ちびっ子のままの魔女に教えるのは難しすぎるw』
そんなに難しいことなのかな。
「感情って難しい」
「人の心が分からないモンスターか何かかお前は」
「魔女です」
「いやそうだけど」
話しながら、順番になったのでゴンドラに乗っていく。ゴンドラの中にあるのは、ゴンドラにくっついてる椅子だけ。二人がけぐらいの椅子がゴンドラの両端にある。
私とアルティで一緒に座って、師匠が反対側に座った。
「あとはゆっくりするだけ?」
「するだけだな」
「途中で何かあったりとか……」
「しないぞ。当たり前だけどゴンドラが落ちることもない」
「残念」
「残念がるな」
『リタちゃん少々過激になってないかい?』
『絶叫系とか気に入っちゃった子だからね、そういうのを期待したいんだろうね』
『絶叫の魔女』
『本人は未だに一度もしてないけどw』
なんだかちょっと失礼なことを言われてる気がする。
ゴンドラはゆっくりと上に向かっていく。外の景色も、ゆっくりと変わっていって……。わりと高い位置になってる。これもなかなかいいかもしれない。
夕焼けに照らされた遊園地。うん。いい景色だね。
「わあ……。綺麗だね……」
「ん」
「こんなに広かったんだ……」
「ん……」
結構歩いていたのかも。転移はあまり使わなかったし。
アルティは外の景色を食い入るように見つめてる。窓枠にしがみついて、じっと。じっと。
「楽しい?」
「うん……。森にいただけだと、こんな景色は見れなかっただろうから」
『そっか、アルティちゃんにとっては初めての森の外か』
『真美ちゃんのお家とか精霊の森は?』
『部屋の中だし同じ森だしノーカンやろ』
そっか。初めてのお外、だね。それに、自分の世界だとこんな場所は絶対にないから、だからこそしっかりと見てるのかも。
「わあ……」
景色を楽しむアルティの目は、すっごくきらきらしていて綺麗だった。
そうしてゆっくりと回っていって、ゴンドラは一番下まで下りていった。これで終わり、かな?
「お疲れ様でしたー」
係の人に手を振られたから振り返して、観覧車を後にする。乗っていて景色を眺めていただけだったけど……。うん。これも良かったと思う。
「いろんなものに乗ったけど、リタ、どれが一番良かった?」
「ジェットコースター」
「だろうな」
『ですよね』
『唯一、三回も乗ってるからなw』
ジェットコースターはまた乗りたい。他の遊園地も行ってみたいね。
「アルティは?」
「ゴーカートが楽しかったですけど……。観覧車が、一番思い出に残りました」
「そっか」
アルティも楽しんでくれたのなら、一緒に来て良かったと思う。アルティとお出かけは私もしたかったことだから、とても満足だ。
後は帰るだけ、だけど……。
「やっぱり最後に行くべきところに行かないとな」
「まだあるの?」
「アトラクションはもう終わりなんですよね?」
もうそろそろ帰らないといけないから、また列に並んだりすると真っ暗になってしまうかもしれない。私は別に問題ないけど、アルティがいるから精霊様から怒られそうだ。
「アトラクションじゃないさ。でも、絶対に二人も楽しめる。楽しめるって言い方が正しいかは分からないけど」
「なに?」
「お土産とか買わないとな。なあに、金はあるんだ。いっぱい買って帰ろう」
お土産。そうだ、そういうのもあるんだった。遊園地の限定のお菓子とかもあるかもしれない。それは、是非行かないと。
首を傾げるアルティを連れて、私と師匠は足取り軽くお土産物のお店に向かった。わくわくだね。
壁|w・)恋愛のれの字も分からないちっちゃい魔女。
次回投稿は11月3日です。





