絶叫系
ジェットコースターは絶叫系とか言うらしい。乗っている時に叫ぶから、らしいよ。同じような絶叫系が他にもあって、フリーフォールというものと、バンジージャンプというのがあるみたい。
「行こう」
「おい誰だよリタに絶叫系を教えたやつ」
「あわわわわ」
『俺は悪くねえ!』
『だって遊園地の定番じゃないですかー!』
まずはフリーフォール。なんだかちょっと高い塔みたいになってるアトラクションだ。横並びの長い椅子に座ると、その塔の頂上まで運ばれていって……。一気に自由落下。途中で斜めになっていて、最後はするっと横になってスピードダウン。そんな感じだった。
「…………。次」
『あれ? お気に召さなかった?』
『そういえば空から落ちるみたいなこと、この子やってなかったっけ』
うん。空から地面への自由落下はやってる。ジェットコースターみたいに繰り返し上ったり下りたりするわけじゃないから、私にはちょっと物足りなかった。言うなれば、そう。
「ジェットコースターの劣化だね」
『なんてこと言うんだ!?』
『あれにはあれの良さがですね……』
『諦めろ。いつでも自由落下できる子には何も通じないから』
悪くはなかったよ。アルティも叫んでたぐらいだし。
次のバンジージャンプは……。えっと。高い場所から足にロープか何かをくくりつけて、飛ぶ……。そういうアトラクション、だね。下は柔らかいクッションとかになっていて、もしもの時も安心らしい。
うん。えっと……。うん。
「えー……」
『リタちゃんがめちゃくちゃ微妙そうなお顔に!』
『よく分かったなその変化w』
『さっきも言ったように自由落下できる子にバンジージャンプはなあ』
飛べない人からすると、スリルって言うのかな。そういうのがやっぱりあるのかもしれない。アルティも、わあ、なんて言ってそのアトラクションを呆然と見上げてるし。
これは一人ずつしかできないし……。それじゃあ。
「アルティ。行ってらっしゃい」
「え」
「そうだな。俺たちと違ってアルティは飛べないだろ? 何事もチャレンジだな!」
「え」
「大丈夫。もしもの時はちゃんと助けてあげるから」
「え」
というわけで。アルティを見送って、私たちはアルティが飛び降りるところを待つことにした。
『このお姉ちゃんはwww』
『そのうちアルティちゃんに嫌われるぞw』
ん……。それは、嫌だな。でも本当にアルティが嫌がってたら、私だって無理強いはしないよ。
アルティの準備が終わったみたい。塔の先端に立って、とんとんと軽くジャンプして、そしてあっさりと飛び降りてしまった。
『うえええ!?』
『躊躇がねえw』
『恐怖心というものがないのか異世界の人には』
なんだっけ。そういうの、主語が大きいとかそういうのだよ。多分。
アルティが飛び降りる前に私と視線が合ったから、本当に何かあっても私がどうにかすると思っているんだと思う。そしてそれは間違いない。日本の人が安全に配慮しているのは知ってるけど、それでももしもはあり得るから。その時は、私の出番。
もっとも、そんな必要はなかったけど。
ロープはゴムみたいになってるのかな。びよんびよんと何度か伸び縮みして、ちょっとしたら落ち着いて……。そのままロープが伸ばされて、地上に戻ってきた。
うーん……。わりとあっさりだね。高さもあまり高くないし、これならやっぱり自由落下した方が楽しいかも。
そんなことを考えていたら、アルティが戻ってきた。
「リタ!」
「ん。おかえり。どうだった?」
「その……。怖かった」
「あれ? そうなの?」
『わりとソッコーで跳んでたのにw』
『鋼の精神なのかと』
みんなはアルティのことをなんだと思ってるのかな。いや、私も全然大丈夫そうと思っちゃったけど……。
「すぐに飛び降りたよね」
「うん……。何かあっても、リタが助けてくれるって信じてたから」
そう言って、アルティははにかんだような照れ笑いを浮かべた。
「かわいい」
『かわいい』
『これは……ヒロインやな!?』
『正統派エルフ王女ヒロイン!』
『よく考えたら属性も王道だ!』
『おまえらwww』
みんなは何を言ってるの? コメントを見てる師匠が呆れてるよ?
「でもちょっと怖かった……」
「ん。アルティはがんばった。えらい、えらい」
「えへへ……」
撫でてあげたら嬉しそうに笑う。うん。アルティはとってもいい子だ。姉妹って、こういうのなんだね。とても楽しい。
『てえてえ』
『これはてえてえ』
『姉妹百合はこちらですか!?』
『帰れ』
いきなりお花がどうしたんだろう。花が欲しいならお花屋さんに行けばいいと思うよ。
そろそろいい時間になってきたし、次のアトラクションで最後にしようかな。
壁|w・)遊園地編も終わりが見えてきました……。





