お子様ランチ
遊園地のレストラン。私たちの世界でも見かけるような、かわいらしい建物。屋内だけじゃなくて、お庭……テラスって言うのかな? そこでも食べられるみたい。
テラスにはたくさんの花壇があって、綺麗なお花がいっぱい咲いてる。そんな景色を見ながらご飯を食べるのもいいかもしれない。
「まあ私はご飯を食べられたらなんでもいいんだけど」
『知ってる』
『リタちゃん、花見とか行ってもひたすらお弁当食べてそう』
『間違いなくそうなるw』
花見って、桜っていうお花を見ながら楽しむやつ、だよね。一応お花も楽しむよ。それよりもご飯が優先なのは認めるけど。
それはそうと、レストランからの香りにアルティがそわそわしてる。
「り、リタ……。すごく、いい香りがする……!」
「うん。日本のご飯は美味しいから。お菓子、覚えてる? あれも日本のお菓子なんだよ」
「そうなんだ!」
『期待度がどんどん上がってますわよ!』
『ハードルをぶち上げていくぅ!』
『今頃レストランの人らは戦々恐々としているのではなかろうかw』
そんなことはないと思う。普段通りにご飯を作ってくれたらいいだけだから。
「中か外、どっちで食べるんだ?」
「アルティ。どっちがいい?」
「え? えっと……。そ、外?」
「だって」
「じゃあ、料理をもらいに行くか」
ここは、中なら店員さんが注文を取りに来てくれるけど、外で食べる場合は中で料理を受け取って持ち出さないといけないみたい。だからまずは、中で注文だ。
建物の中に入って、テイクアウト用のカウンターに向かう。何人か並んでいたから、ちょっと待たないと……。
「わ……。リタちゃんだ!」
「遊園地に来てたなんて!」
「ご飯食べるの? 前行っていいよ、ほらほら」
そんな感じで、一番先頭に案内されてしまった。
「リタって、もしかしてこっちでは有名なの?」
「そうかもしれない」
「ちなみにこいつが精霊の森の守護者っていうのも、この世界の人は万単位の規模で知ってるぞ」
「どうして……!?」
『本当にどうしてそうなったんやろな』
『リタちゃん側の世界では多分百人もいないだろ』
『リタちゃんは……地球人だった?』
だって、ここだと別に守護者だからって扱いが変わるわけじゃないから、秘密にしても仕方ない。
メニュー表を見せてもらって、料理を注文……だけど……。
「ど、どれも美味しそう……!」
「ん……」
「リタはどれにするの?」
「全部」
「ぜん……!?」
『ごめんなアルティちゃん、リタちゃんはそういう子なんや』
『いつものムーブで驚きすらしねえぜ!』
食べ物が美味しいのが悪いと思う。だから私は悪くない。
「リタ。他の人の料理が作れなくなるから、二品までにしなさい」
「えー……。いいけど……」
「すごく不満そう……」
んー……。どれにしよう。でも早く決めないと、後ろの人に怒られそうだし……。
そう思って後ろを振り返ったら、なんだかみんなにこにこしながら見守ってきてる。暇なの?
『ちんまい双子がメニューを見てうなるのがかわいくてな』
『リアルで見てる俺は勝ち組』
『その場所をよこせ!』
何を言っているのか意味が分からない。
ふとアルティを見たら、一つの料理をじっと見てた。そっちを見たら……。
「お子様ランチ?」
「い、いろいろ食べられそうだなって……。だめかな?」
「いいと思う」
というわけで、お子様ランチを二人分注文。私はそれに、遊園地限定カレー。師匠はミートドリアだって。
『またカレー注文してる』
『たまにはカレーから離れようぜ!』
『おばか! リタちゃんからカレーを取ったら何も残らないでしょ!』
私はいつからカレーだけでできてたの?
受け取りカウンターで料理をもらって、テラスの席へ。いろんな人が写真をとってくるけど、気にせず食べよう。いただきます。
お子様ランチは、たくさんの料理が少しずつ入ってる。チキンライスにポテトサラダ、ハンバーグにフライドポテトとエビフライ、それにデザートにプリンまでついてる。いっぱいだ。ちなみにチキンライスには爪楊枝を使った旗が刺さっていた。日本の国旗、だっけ。日の丸ってやつだね。
カレーは、カツカレー、だね。カレーは後のお楽しみで、先にお子様ランチから。
んー……。どれも美味しい。チキンライスはしっかりケチャップの味がついてるし、どれもできたてでさくさくしてほかほかして、美味しい。これだよこれ。これがいいの。
「お、美味しい! すごく美味しい!」
アルティもすごく喜んでる。チキンライスをもぐもぐして、ハンバーグの柔らかさに驚いて、エビフライのサクサクを楽しんでいて……。なんだか、日本に来たばかりの私を見てるみたい。
『あー。初々しい反応ですわあ』
『リタちゃんにもこういう時があったなあ』
『今も美味しい料理を食べたら同じような反応をするけどな!』
ちょっと恥ずかしいから言わなくてもいいよ。
カレーライスは、普通のカレーライス。でも、うん。ちょっと甘めではあるけど、すごく美味しい。やっぱりカレーが一番だ。でも、師匠のドリアもちょっと気になる。
「じー……」
「うん? ドリアも食べるか?」
「ん」
「ほら」
師匠のスプーンから一口もらう。とろとろのチーズがご飯にしっかり絡まっていて、これもすごく美味しい。とても、美味。
『シッショてめえ!』
『自分のスプーンでリタちゃんに食べさせただと!?』
『うらやまけしからん!』
「お前らはどういう感情なんだよ……」
気にしても無駄だと思う。変な人たちだから。
もぐもぐと食べ進めて、完食。とても、とても満足。これでお昼からもしっかり遊べるね。
「リタが日本大好きな理由が分かっちゃった……」
『どやあ』
『俺らは何もやってないけどな!』
そんなことはない、と思うよ。
美味しいご飯のあとは……。どこに行こうかな?
壁|w・)もっとお子様ランチに触れたかったけど、長くなりそうだったので……。





