ウォーターライド
次に来てみたのは、川みたいになっているところ。お船に乗って坂を滑って、その後はちょっとだけ景色を楽しむ、みたいなものになってる。
シューティングライドに近かったから、とりあえずここに来てみたけど……。これは、なんだろう?
『ウォーターライドってやつですな』
『最初は急流滑りになってんのか。楽しそう』
プール……ではないよね? でもすごく濡れそう。
「リタ。プールってなに?」
「んー……。水で遊ぶ場所。泳いだりできるんだよ」
「楽しそう……」
「今日は無理だけど、また誘う」
「うん」
心桜島のあのプール、アルティと一緒に行ってもきっと楽しいと思う。一緒にスライダーとか行きたいね。その時はまた師匠に一緒に来てもらおう。
けれど今はウォーターライドだ。早速行ってみよう。
また列に並んで、すぐに私たちの順番。小さいお家に川が繋がっていて、小さいお船が並んでる。六人ぐらい乗れるお船だね。二人席が三列、みたいになってる。
「ほら、一番前に乗れ」
「ん」
「あ、あの、あの……。こ、怖くないですよね?」
「大丈夫大丈夫。多分」
「多分!?」
あわあわしてるアルティを先に乗せて、私はその隣へ。師匠も後ろ側に座った。他の席も別の人たちが座っていく。
そうして全ての席が埋まってから、係の人が簡単に説明してくれた。
これはシューティングライドと違って、前の手すりを掴んでおくだけでいいみたい。ただ、すごく濡れるらしいから、スマホとかの機械類を持っている人は預けてください、だって。
私はスマホを持ってるけど、アイテムボックスに入れてあるから問題ない。師匠も同じくだし、アルティはそもそも持ってない。
「最初にレインコートとか聞かれたのは濡れるからなんだね」
「船に乗ってるのに濡れるの?」
「そうみたい。アルティは大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ……」
なんだかちょっぴり緊張してるみたい。ちょっと撫でてあげたら、薄く微笑んでいた。うんうん。私が隣にいるから大丈夫だよ。
『リタちゃんがお姉ちゃんしてる……』
『リタお姉ちゃん!』
『姉にも妹にもなる魔女!』
もはや意味が分からないよそれ。
少し待つと、お船が動き始めた。ゆっくりと進んで、がこん、という音の後に坂を上っていく。
「リタ! リタ! 船が! 上ってる!」
「ん。すごい」
お船を持ち上げる何かの機械があるんだろうね。がごがこ音がしてるし。
そうして頂上まで来て、少し進んで……。
「おー!」
「わああああ!」
一気に川を下っていった。
なんだろう。すごい。ぶわってきた。押しつけられるような不思議な感覚だ。初めての感覚で、とっても不思議。すごい。
でもそれはあっという間に終わって、のんびりとした川に入ってしまった。ちょっと残念。
あとはやっぱり川だったから、たくさんの水がお船にかかってしまった。みんなずぶ濡れ、だね。私と師匠は濡れてないけど。
「師匠。師匠」
「どうした?」
「ぶわっときた。ぐわってきた。すごい」
「あー……。まあ、スピードがあるってそういうものだしなあ」
『あれ? リタちゃん空を飛んでる時ってかなりのスピードだよね?』
『確か結界を張ってるはず』
『飛行機以上のスピードが出てるのに無防備で飛べるわけないからな!』
言われてみれば、結界を張っていない状態で飛行する時に似てる気がする。スピードがあるとそうなるらしい。これはいいことを聞いてしまった。自分でもできるってことだね。
「り、リタは楽しそうだね……」
「ん。アルティはだめだった?」
「ちょっと怖かった……」
『アルティちゃんかわよ』
『リタちゃんからは得られぬ怖がり成分』
『なんだその成分w』
怖がりってほどでもないと思うけどね。
勢いよく滑り降りた後は、ちょっとした森みたいになってるエリア。のんびり進んでいたら、ワニみたいなのが川底からぬっと出てきた。もちろん作り物だけど。
「り、リタ! リタ! 何か出てきた!」
「出てきた」
「リタ! 変な鳴き声する!」
「する」
『大興奮のアルティちゃんと超冷静なリタちゃん』
『本当に双子かこの子らw』
育ち方は全然違うと思うからね。
そんな森のエリアを抜けたら、最初の小さいお家に戻ってきた。お船の列の最後尾に並んで、そこから船を出る。
「お疲れ様でした! タオルをご利用の方はいらっしゃいますか?」
そんな係の人の声。びしょ濡れの人が多いからね。でもタオルとか面倒だと思うし……。魔法で乾かしてあげよう。さっと、ね。
「わ……!? 服が乾いた!?」
「すごい……!」
一緒に乗っていた人が驚いてる。ちょっとだけ楽しい。
「ねえ、リタ」
「ん?」
「どうしてリタは濡れてないの……?」
「結界あるから」
「ずるいよ!?」
ずるくない。簡単な魔法だから、アルティも覚えればいいと思う。
なんだか不満そうなアルティと忍び笑いをしてる師匠と一緒に、ウォーターライドを後にした。
壁|w・)簡単な魔法(魔女基準)





