はじめてのこーら(あるてぃばーじょん)
転移してきた先は、日本にある遊園地。有名な遊園地らしくて、人も多い。わりとたくさんの人がチケット売り場に並んでるね。でもまだ朝で平日だからか、すぐに入れそうだ。
「どどどどどどどこここここここ」
「わあ」
アルティが変になっちゃった。
『わあ、じゃないが』
『お労しやアルティ様』
『いきなり見知らぬ場所に連れてこられて、エルフの森とはもう根本的に違くて……』
『リタちゃん、フォローしてあげないとだめだよ』
うん。さすがにちょっと無理矢理すぎたかもしれない。
「アルティ、大丈夫だよ。だから行こう」
「うう……リタ……」
「手を繋いであげる」
「うん……!」
『てえてえ』
『めちゃくちゃ姉妹してる』
『頼りになるのはリタお姉ちゃんだな!』
『なお元凶でもあります』
『余計なことするリタお姉ちゃんだな!』
余計なことは言わなくていいよ。きっとアルティも楽しんでくれるはずだから。
「じゃあチケットを買ってくるから、リタとアルティはその辺で待ってろよ」
「私も行くよ?」
「人が集まってくるから邪魔だ。離れろ」
「ひどい」
『火の玉ストレートw』
『でも間違ってないんだよなあ』
『すでに人が集まってきて、人の動きが止まりつつあるからね……』
それはそう。みんなこっちに集まってきて、写真とか撮り始めてるから。
「リタちゃんだ!」
「あれって、もしかしてアルティちゃん!?」
「すごい貴重!」
『多分今後二度と撮れないだろう双子ツーショット』
『お前らもっとネットに出せよ! 独り占めすんなよ!』
『しゃーねーな。この後URL出すからそこから落とせよ』
『あなたが神か』
アルティの写真は……。別にいいかな。アルティは日本をあちこち行くわけじゃないから、悪い影響はないと思う。むしろ恥ずかしがるかもしれないから、何も言わないでおこう。
「アルティ。手を振って」
「えっと……。どこに?」
「こんな感じ。ふりふり」
「えっと……。ふりふり」
『双子ふりふりだあああ!』
『写真! 写真はよ! ちゃんと撮れよ!』
『おまえらwww』
これだけで喜んでくれるんだから単純だよね。
しばらくみんなに手を振ったりしていたら、師匠が戻ってきた。手にはチケットが三枚。問題なく買えたみたい。私の方に戻ってくる師匠も写真を撮られていて、ちょっとうっとうしそうだった。
「買えたぞ。行くか」
「ん。師匠、ふりふり」
「え……。俺もしろと?」
「ん」
「仕方ないな……」
ちょっと嫌そうにしながらも師匠は付き合ってくれる。みんなでふりふりすると、光がいっぱいになった。写真もいっぱい、だね。アルティはずっと困惑しっぱなしだけど、もう移動するから我慢してほしい。
そうして三人でゲートへ移動。係の人にチケットを見せて、中に入る。その人にも手を振ったら、嬉しそうに振り返してくれた。
『俺、あの遊園地で働きたい』
『すでに手遅れなんですが』
『明日から働いてもリタちゃんは帰った後だよ』
さすがに毎日来ようとは思わないからね。
遊園地に入ってすぐは、ちょっとした広場だ。たくさんの人が行き先で相談したりしてる。
「それじゃあ、どこか行きたいところは?」
「んー……。まずは飲み物。自動販売機」
「じゃあ、隅っこだな」
「じ、じどうはんばいき……?」
アルティは知らないよね。私も初めて見た時はびっくりしたから、是非使ってみてほしい。
三人で一緒に、自動販売機が並んでるスペースへ。さすがに入場してすぐに買おうとする人は少ないのか、全然並んでいなかった。いや、そんなに並ぶものじゃないっていうのは分かってるけど。
「どれにするんだ?」
「オレンジジュ―ス。アルティは?」
「え? え?」
「私はコーラをおすすめする」
「じゃ、じゃあそれで……」
『おいwww』
『やりやがったw』
何のことか分からない。だってみんな好きだって言ってるから。私は未だに好きになれないけど。
師匠は苦笑いしながらジュースを買ってくれた。お金を入れて、ボタンを押す。ガコンと音がして、ジュースが落ちてくる。アルティがびくっとして私の後ろに隠れた。かわいい。
『なんだこのかわいい生き物』
『リタちゃんも最初はこんな感じ……ではなかったね……』
『あまり動じない子だからなあ』
師匠が買ってくれたのは、コーラ二本とオレンジジュ―ス二本。オレンジが二本なのは、アルティが苦手だった時のためだと思う。
「こうして開ける」
「こう、かな……」
そうして、アルティがコーラを飲んで。
「んん!?」
吹きそうになっていた。我慢できて偉い。
「な、なにこれ!? ぱちぱちする……!」
「コーラ。ここの人は好きな人が多いらしいよ。私は苦手だけど。アルティは?」
「う……。ちょっと、無理……」
「だよね」
ということで、オレンジジュースを渡してあげた。一口飲んで安心していたから、炭酸はやっぱり無理なんだと思う。
『姉妹だなあ』
『エルフは炭酸が苦手、と』
別にエルフだから、というわけでもないと思うけどね。
飲み物も買ったし、早速何か乗りに行こう。楽しみ。
壁|w・)コーラでいたずらするお姉ちゃん?の図。





