魔女は運ばれる系が好き
なんだかたくさんのプールがある、らしい。入り口の側に地図があった。さすがに全部見るのはちょっと面倒だね。
「どれがおすすめ?」
「やっぱり流れるプールかな。でも波の出るプールも捨てがたいし、スライダーも是非やりたいよね。スライダーはいくつか種類があるけど……」
『つまり全部では?』
『ごはんも全部なんてやったんだからね! プールも全部だね!』
今日は真美に任せるつもりだったから、真美がそれでいいならもちろん大丈夫だけど。
「じゃあ、まずは波のでるプールに行こう!」
「ん」
真美に手を引かれて向かった先は、入り口の反対側にある広いプール。扇状になっていて、奥から定期的に波が来てるらしい。浮き輪で浮かんでる子供が波に運ばれてこっち側に来ていた。
「おー……」
ちょっと楽しそう、かも?
「浮き輪ももちろん用意してあるからね。ほらほら」
「ん」
浮き輪をつけて、水に浮かぶ。なんだか不思議な感覚だ。ぷかぷかしてる。そのまま真美に運ばれて奥側へ。
そうしている間に波が来て、私は浅瀬側へ運ばれていった。
「わー」
「リタちゃーん!?」
『抵抗しないのかw』
『多分運ばれてる子供を見てやりたくなったんだろうなあ』
『意外と子供っぽいところあるから』
『言うほど意外か?』
んー……。ちょっと楽しいかもしれない。もう一度行こう。
「奥まで行ってくる」
「あ、うん……」
「それにしても髪が邪魔……。切ろうかな?」
「え、だめだよ!?」
『それを切るなんてとんでもない!』
『髪を切るのはいつだってできるけど、伸ばすのは時間がかかるんだぞ!』
『そうだそうだー!』
「あ、うん……」
私はそこまでこだわりないんだけど……。そこまで言われると、切るのがちょっともったいないと思ってしまった。だからこのままで。
泳ぐのは面倒だから、風の魔法ですいすいっと奥まで行こう。すいすいっと。
「うわずるい……」
「真美もする?」
「私の年齢でこのプールで浮き輪はちょっとね……」
『まあさすがにちょっと恥ずかしいかw』
『それを言うならリタちゃんの年齢は……』
『見た目な!』
私は気にしなくてもいいと思うんだけどね。
ちょっと奥まで行ったところで、波の時間。波に運ばれてふわふわと。
「おー……」
「なんだかすごく気に入ってる……?」
『もしかして、リタちゃんって運んでくれる系のものが好きなんか?』
『そういえば電車とか普通に気に入ってるっぽいよな』
『自分で移動した方が早いのにな』
それとこれとは違うんだよ。何もしてないのに運ばれる、というのがなんだか楽しい。ただそれだけ。
「うーん……。じゃあ、流れるプールとかすごく気に入りそう」
「気になる」
「だから最後だね!」
「なんで……?」
『真美ちゃんwww』
『お楽しみは最後にってやつだね』
『ある意味一番のんびりできるプールだからね!』
なんだかそういうことになったらしい。いいんだけどね。
その後も何度か波に流されて、それから次のプールに行くことになった。
次は、スライダー。階段を上ってちょっと高い場所に行って、そこから滑り台のようなもので滑るらしい。ちゃんと水が流れていて、滑りやすくなってるみたい。
これは人数の制限があるみたいで、スライダーの入り口で施設の人が立っていた。
「はい、次のかた……」
そしてやっぱり私を見て固まった。
『いつもの』
『恒例行事』
『変な行事つくんな』
『それはそうと、身長って大丈夫なん? 制限あるだろ』
「あ」
真美が、忘れてた、みたいな反応。身長の制限があるらしい。施設の人が我に返って、
「こちらに立ってください」
「ん」
指示された場所に立つ。身長を調べられるみたい。身長、気にしたことがなかった。
「えっと……。はい。六番のスライダー以外は大丈夫です。六番は残念ですが……」
「わかった」
『それよりもリタちゃんの身長についてくわしく』
『なんで教えてくれないんですか!?』
「個人情報だからですよ」
ちらりと黒い板を見た施設の人が、呆れたような笑顔でそう言った。身長なんて気にする人がいるんだね。私は気にもならないから、結果も特に知りたいとは思わない。どうせちっこいのは変わらないから。
ともかく。ここは一番のスライダーだから、私でも問題ないということ。
「ではでは、どうぞ」
「ん」
促されて、スライダーの入り口へ。それじゃあ、行こう。
壁|w・)ぷかぷか。





