バーガーショップ
真美の学校の前に転移。真美とちいちゃんが待ってくれていた。ちいちゃんは私を見てにこにこしてる。とってもかわいい。
「こんにちは!」
「ん。こんにちは」
にこにこちいちゃんをなでなでしておく。なでなで。
『リタちゃんの貴重な挨拶シーン』
『た、たまにちゃんと挨拶してるから……!』
ちいちゃんの手を繋いで歩き始める。ちいちゃんのもう片方の手は、真美が握ってる。ちいちゃんはとっても楽しそうだ。
『子供連れの夫婦かな?』
『今時こんなことする親子あまり見ないが』
『やめろよ悲しくなるだろ』
ちゃんと両親がいるのにそんなことを言ったら失礼だと思う。
「ハンバーグは何度か作ったけど、ハンバーガーはまだ食べたことがなかったなって思ってね。たまにはいいかなって」
「ん。楽しみ。でも、どうして急に?」
「…………。いや、別に……」
「……?」
『ははーん、あの部活の子らにちょっと嫉妬しちゃったやつやな?』
『手作り料理なんて真美ちゃんが一番出してるのに?』
『学校のイベントっていうのを一緒にしたくなったんだと予想』
『学校帰りのハンバーガー、いいっすねえ』
「…………」
真美がなんだかすごい顔になってる。恥ずかしいような、怒ってるような、そんな顔。ちいちゃんもちょっと不思議そうだ。
「私の方が……」
「ん?」
「私の方が……リタちゃんと会ったのは先だもん……!」
「う、うん……?」
『真美ちゃん嫉妬することなんてあるんか』
『多分同世代だったから、かな……?』
よく分からない。よく分からないけど……。
「この世界で特別なのは真美だけだよ」
「リタちゃん……!」
「あとちいちゃんと師匠のご両親と……首相さんも何度も会うから特別……?」
「リタちゃん?」
『くっそwww』
『だけだよ、からの追加が多いw』
いや、だって。何度も会う、という意味で特別なのはそんな感じかなって。
そう言ったら、真美はちょっと苦笑いで私の頭を撫でてきた。真美に撫でられるのは嫌じゃないけど、急に撫でられるとちょっと困る。
「真美?」
「リタちゃんはそのままでいてね……」
よく分からないけど、私はこのままだよ。
そうしてしばらく歩いて、たどり着いたのはハンバーガーのお店。大きい道沿いにあるお店で、たくさんの車が並んでる。中で食べられるかな? ていくあうとでもいいけど。
「お店に連絡して席を確保してもらってるから大丈夫」
「おー」
『これは有能』
『さすがやで真美さん!』
じゃあ問題なく座れそうだね。
真美たちと一緒にお店に入る。すると店内にいる人たちが一斉にこっちを見てきた。ちょっと怖い。
「やっぱり来た……!」
「心桜島のハンバーガーといえばここしかないからな……!」
「待っててよかった!」
『こいつら……!』
『心桜島在住の視聴者かよ!』
『お前らずるいぞー! 卑怯だぞー! 俺も生リタちゃん見たいのにー!』
人は多いけど、どうしてか列には並ばなくてもいいみたい。二つあるレジの一つはがらがらで、何故か一つのレジだけ人がずらっと並んでいた。私たちもそっちかなと思ったんだけど、店員さんに手招きされたから空いてるレジへ。
「どうして……?」
「恥ずかしい大人の事情ってやつだよ、リタちゃん」
「はずかしー!」
「…………」
ちいちゃんのにこにこした言葉に、周囲の人たちがそっと目を逸らした。
『純粋な幼女の言葉が俺たちに突き刺さる』
『ちゃうねん……別にそんな……ちゃうねん……』
『だって! 心桜島に住んでるんだから、せめて一目でも会いたいと思うのは自然やろ!?』
『気持ちは分かるぜおまえら』
私は分からないよ。
レジの前で、ハンバーガーを決める。何があるんだろう。ああ、でもとりあえず師匠へのお土産だ。精霊様も同じものでいいかな?
「えっと……。ていくあうとで、ダブルチーズバーガーの、ぴくるす? それを抜いたやつを……んー……十個ください」
「はい。かしこまりました。他はどうされますか? 食べていかれますよね?」
「ん」
『もはや食べていくことを強制するかのようなのり』
『むしろ食べていかないはずがないよねの勢いw』
『リタちゃんの注文が来るぞ! 在庫の貯蔵は十分か!』
いや、そんなにたくさんは頼まないと思うよ。アヒージョも食べたしね。美味しそうなものをいくつか……。いくつか……。
カウンターに貼り付けているメニューを見る。ハンバーガー、いっぱいだ。どれも美味しそうな写真、だね。そう、すごく、すごく美味しそうな写真だ。
「リタちゃん、先に注文するね」
「ん……」
「あはは。ごゆっくり」
真美とちいちゃんが注文した後に、私は言った。
「決めた」
「はい」
「全部。これに載ってるもの、全部」
「…………」
『全部きましたー!』
『駅弁とかはちゃんと我慢したのに、どうしたんだリタちゃん!』
「器もないし、片手で食べられる。本を読みながらでも大丈夫。つまり、アイテムボックスに入れておくおやつにちょうどいい」
『おやつ扱い……だと!?』
サイズはそこまで大きくなさそうだからね。片手間に食べたりもできそうで、十分だと思う。
とりあえずここでは、ダブルチーズバーガーを食べていこう。
壁|w・)架空のショップだってば。





