どこかの高校
美味しいお魚をたくさん食べて、夕方。学校で言うところの、だいたい放課後の時間。私は山梨県のとある学校の前に来ていた。近くに商店街とかもたくさんある、わりと賑わってる地域。でも大きなデパートとかはないみたい。そんな場所。
『なんで学校?』
『しかも心桜島の学校じゃないし』
「ん……。キャンプで会った人に、学校にも来てほしいって言われていたから」
『あったなあ、そんなこと』
『キャンプ……懐かしい……』
『まだ一ヶ月も経ってないんですがそれは』
キャンプ楽しかったよね。何かのアニメでも見たけど、冬のキャンプとかもやってみたいかも。気が向いたらになるだろうけど。
でも……。どうしよう。勝手に入ったらだめだよね?
私が校門の前でちょっと悩んでいたら、たくさんの生徒が帰り始めた。いや、帰ろうとしてる、かな? みんな校門の前にいる私を見て凍り付いてる。何故か遠巻きに見られてる。通せんぼしてるわけじゃないから、通ってもいいんだよ?
「お、おい……。あれって、もしかしなくても……」
「間違いなく魔女だ……!」
「あ、握手とかお願いしたら……やってくれるかな……?」
『約束された大騒ぎ』
『学生どもがくっそ羨ましい』
『なんか校舎の方もたくさんこっちを見てるぞw』
んー……。どうしようかな? 勝手に入っても、いいかな? だめかな? 世菜さんたち、気づいてくれないかな?
私がその場で悩んでいたら、校舎から誰かが走ってきた。スーツ姿の、男の人。教師かな?
その教師は私の前まで来ると、カメラ代わりの光球を一瞥して、私へと口を開いた。
「その……。魔女のリタさん、で間違いありませんか?」
「生徒指導の竹中が子供相手に敬語を使ってる!?」
「先生どうしちゃったんですか!」
「黙れお前ら!」
『草』
『生徒指導w わりと怖い先生なのかもw』
なんだっけ。悪いことをした生徒を指導する、みたいな先生だっけ。いろいろと大変かもしれない。
「ん。魔女のリタ。知り合いに会いに来た」
「それは……。ええと……。どのクラスか分かりますか……?」
「知らない」
「ええ……」
『これは困るやつ』
『どのクラスかも分からなければ探しようがないじゃないですかやだー!』
あ、でも、クラス以外ならわりと分かるよ。
「アウトドアクラブの、世菜さん」
「ああ、アウトドアクラブか……。そういえば、夏休みのキャンプでいいことがあったって言ってたなあ……。こういうことだったのか」
「分かる?」
「もちろんです。どうぞ」
竹中先生が案内してくれることになった。どんな部活か楽しみだね。
竹中先生について、歩いて行く。校舎の中に入っててくてくと。すでに私のことはみんなに広まってるみたいで、行く先々でスマホとかを向けられてる。
たまに手を振ってくる人もいて、そういう人には振り返しておく。ふりふり。
『俺……ここの生徒でよかった……』
『視聴者に生徒がいる……?』
『いやそりゃまあ、数十万の視聴者がいれば、学校の生徒ぐらいまじってるだろ』
『よくよく考えなくてもすごい人数だ』
んー……。確かに、すごい人数だと思う。みんなそれだけ暇だってことだね。
「あ! あの!」
てくてく歩いていたら、通りすがりの女の子に声をかけられた。ちょっと小柄な人だ。といっても、私よりは大きいんだけど。
「ん? なに?」
「握手してください!」
「ん」
手を出されたから、握っておいた。にぎにぎ。これでいいかな?
「わあ……。ふにふにだ……」
「ふにふになのか……」
「先生?」
『おい先生w』
『先生がその反応はまずいだろw』
『ちっちゃい子のおててに興味がおありで?』
竹中先生が黒い板に流れるそのコメントを見て、こほんと咳払いをした。失言だと思ったのかも。さっと視線を逸らして、気のせいだ、なんて言ってる。気のせいってなんだっけ。
「握手する?」
「ここで握手してしまうと、世界に恥をさらすことになりますので」
「つまり握手したいんですね……」
「んんっ」
『誘導尋問かな?』
『生徒による先生への逆襲』
『強く生きて』
竹中先生は誤魔化すように咳払いをして歩き始めてしまう。このまま会話を続けるとまずいと思ったのかも。賢明な判断ってやつだね。
握手した人に手を振って、またその後を追う。握手、何がいいのかな?
「私は気にしない。握手する?」
「…………。…………。やめておきます」
「ん」
『すごい葛藤を感じたw』
『先生、あんたはすごい人だよ』
『俺ならためらいなく握手してもらうなあ』
そういうもの、らしい。よく分からないけど。
そうして少し歩いて、別の校舎にたどり着いた。
壁|w・)魔法でなんでもやっちゃう子なので、リタのおててはふにふにです。ふにふに。
そして相変わらずちんまいので、子供特有のやわらかさです。ふにふに。





