お代わりもいいぞ!(強制)
「前も言ったけど……」
アルティが頭が痛そうな表情で言う。
「里を滅ぼしかけたのに、この処遇で済まされているんだよ? 分かってる?」
「まあ、アルティ……! 優しかったアルティはどこへいったの? これもあなたのせいよ、忌み子!」
「…………」
『リタちゃんよりアルティちゃんの方がキレそうに見えるのは俺だけ?』
『リタちゃんはむしろアルティちゃんの方をちらちら気にしてる側なのがw』
いや、だって……。アルティ、いきなり王様になったストレスとかもあるだろうから、いつ爆発してもおかしくないなって……。今もわりとこめかみが引きつってるし。こわい。
「リタ。やろう」
「ん」
アルティもとっても乗り気だ。それじゃあ、早速……。
「うお!?」
「な、なに!?」
スランドイルとタイテーニアをぎゅっとして、床に転がす。あとは口を開けさせるだけ。
「ええい! よくも……!」
「おのれ……!」
ばったんばったん芋虫みたいに動き回ってる。ちょっとおもしろいけど、今は少し面倒だ。拘束が解けそう、とかじゃなくて、単純に食べさせにくい。
「ぎゅっとする魔法は、力加減を間違えるとそのまま絞め殺しちゃう魔法だよ」
「え……」
「…………」
二人が顔を青ざめさせて動きを止めた。これでよし。
『すん』
『怖いよね、わかるわかる』
『もっとぎゅっとしてもいいんだよ?』
それじゃあつまらないから。
改めて、手で口を開けさせる。何か言おうとしてるけど、気にしない。
「これ、異国の美味しいお菓子。二人にもわけてあげる」
「おいいいおあいああ、おおあおおいあいあお!」
「んー……」
えっと……。
「おいしいおかしなら、こんなことしないだろ、かな?」
「よく分かったね!?」
『すげえw』
『なんか言おうとしてるってことしかわからんかったぞw』
『これが血の繋がり……?』
む。それはとても不愉快だ。確かに血の繋がりはあるんだろうけど、こいつとの繋がりなんて感じたくもない。
よし。一気に二個入れちゃおう。
『おもむろに二個目を取り出してる……』
『鬼だ、鬼がいるw』
『いいぞもっとやれ』
アルティもタイテーニアの口をむりやり開けて……。それじゃあ、はい。入れて、口を閉める。
「むぐ……。む……? む!? むむむー!」
おお……。びったんばったんしてる。タイテーニアも同じくだ。びったんばったん。二人の口にも合わなかったみたいだね。
うん……。とても、良かったよ。
ごくり、と二人が飲み込んだところで、口から手を離してあげた。
「ぐ……。き、きさま、なんてものを食べさせてくるんだ……」
「毒じゃないの、あれは……」
「毒じゃないよ、お母様」
アルティがにっこり笑顔だ。これは、あれだね。相当鬱憤がたまってるね。
アルティが手を差し出してきたので、追加のあめを渡した。二人がそれを見て凍り付いてる。もしかして、一回だけで終わりだと思ったのかな?
「ま、まだあるのか……?」
「ん……。安心してほしい。ちゃんと、全部なくなるまで、食べさせるから」
「ま、待て! 話せば分かる! な!?」
「話し合う時間なんて、とっくに終わってるんだよ」
私が初めてここに来た時に、謝罪と後悔と……そういうのがあったら、変わったかもしれないね。
まあ、今となってはあり得ない仮定の話で、もう変わらない過去の話だ。
「じゃあ、いこう」
「むぐー!」
お代わりはいっぱい、あるからね?
二人が全部食べ終えたのは、そろそろいい時間かな、というぐらい。魔法学園の方に戻らないと。
「どうだった?」
「すっきりした」
「ん。よかった」
『この幼女コンビこわい』
『情け容赦なくて震えそう』
むしろこれぐらいで許しているのが情けだと思う。
「リタはもう帰るの?」
「ん。約束もあるから」
「そっか……」
あれ? ちょっと寂しそう? きっとまだまだ忙しいと思ってたんだけど……。そうでもない、のかな?
「ねえ、リタ」
「ん?」
「今度、その……。お泊まりとか……。だめ?」
それは、どっちかな。私がエルフの里で、かな? 逆でももちろんいいけど、王様の仕事とかあるだろうから……。んー……。エルフの里でか……。
「ここで?」
「う、うん……」
「…………。考えておく」
『おや』
『絶対嫌だ、ぐらい言うと思ってた』
『ちょっとは気が晴れたのかな?』
んー……。エルフの里はあまり好きじゃないけど、スランドイルとタイテーニアにはもう会わないだろうから。それならまあ、少しぐらいはいいかなって。
それに。
「うん!」
嬉しそうなアルティの顔を見たら、お泊まりぐらいはいいかなって思った。
…………。でも師匠と精霊様は何か言いそうだなあ……。
壁|w・)びったんばったんおおさわぎ。





