サルミアッキ
ここから第36話のイメージ。
今日はとてもいい天気。お出かけ日和、だね。それじゃあ、いつも通り配信開始だ。
「お菓子が欲しい」
『唐突すぎません?』
『リタちゃん、挨拶して! ん、って!』
『挨拶それでいいのか?w』
それは挨拶とは言わないと思う。
いつもの魔法でお菓子を回収。今日もいろいろ送ってもらえた。チョコレートもいっぱいある。甘いのは好きだから嬉しい。
『よっし選ばれた!』
『だめでした』
『やばいどうしよう冗談のつもりだった』
いろいろあるけど、まずはどれを食べよう。とりあえず、適当に一つ取ってみて……。
「えっと……。英語の、お菓子……?」
ちょっと黒っぽいパッケージで……。なんだろう、これ。ちょっと読めないけど……。
『あ』
『おいおいおいおいマジかよ』
『これ送ったやつ死んだわ』
『あわわわわ』
え? なに? 何があるの? こうして送られてきてるっていうことは、毒物ではないと判定されてるはずなんだけど……。もしかして、すり抜けただけ? 精霊様の魔法だから、判定の基準は私にも分からない。
「毒……?」
『毒……ではないかな』
『毒だぞ』
『サルミアッキ。外国のお菓子。現地の人は好きな人が多いらしい』
『現地の人は!』
日本ではあまり食べられてないお菓子ってことだね。でも好きな人も多いらしいから、美味しいけど手に入りにくいってことなのかも。
でも、毒だ、というコメントも多いし、やめろという人も多いし……。なんだか、変なお菓子だ。
「毒だとしてもあとでどうとでもなるから、いただきます」
それじゃあ、ぱくりと一口。
『あ』
『躊躇なくいったあああ!』
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』
『さっきから送り主っぽいコメントが流れてるw』
ん……。なんだろう。まずくはないけど、なんだか不思議な食感。ソフトキャンディ、なのかな? あのちょっとやわらか……。
「うっ……」
『案外いけるクチか?』
『おや? リタちゃんの表情が』
『ああ……』
なにこれ。なにこれ!? なにこれ!?
「ん……あああ……!」
『普段あまり動じないリタちゃんがwww』
『なんなんだその動きはw』
『吐き出したいけど食べ物を粗末にしたくはないというそんな葛藤が見えて……』
「だめ。無理」
ぺっと吐き出した。これは食べられない。無理なやつだ。
『あw』
『ギブアップかあw』
『リタちゃんの口には合わなかったね……』
無理だよなにこれ。とてもまずい。なんだろう。表現が難しい。とても、とても変な味。でも簡単に言い表せる言葉がある。
「クソまずい」
『ちょwww』
『女の子がそんな言葉を言うんじゃありません!』
『でも気持ちは分かるw』
いやだって、信じられないぐらいまずいよこれ。なにこれ。本当になにこれ。送ってきた人はなんなの? 嫌がらせなの? 怒るよ?
『ごめんなさい冗談のつもりだったんです回収されるとは思わなかったんです』
「ん……。許さない。絶対にだ」
『ひぇっ……』
『これはしゃーないw』
『普段表情変わりにくい動じにくいリタちゃんが、めちゃくちゃ表情歪めてたのが新鮮でした』
変な趣味でもあるの? いやでも本当に、これはびっくりだね。びっくりの味だ。もう二度と食べない。嫌いな人にあげるお菓子にしよう。そうだ、スランドイルとタイテーニアの体を拘束して、残りを消化してもらうのもいいかも。
『ところで、食べ物を捨てちゃったわけですが』
『もったいない! とか言い出す人が来そう』
「ん? 味覚は体に危険物を取り込まないようにするためのものだって師匠が言ってた。つまりまずいけど食べ物だから残さないという人は危機管理能力が足りてない。反省して」
『あ、はい』
『確かに味覚ってそういうものだけどw』
でも個人の価値観について言うつもりはないよ。残したくない、という人は好きにすればいいと思う。私は気にしない。まずいものは食べない。食べられる人が食べればいいと思う。
「あー……。おはよう、リタ」
「ん。おはよう、師匠」
師匠があくびをしながらお家から出てきた。
「眠いの?」
「言い訳考えてたらなー……」
『そういえば魔法学園行くんだっけ』
『いろいろ言われそうw』
でも眠いまま行くのも失礼だと思う。しっかり目を覚まさないと……。
「そうだ。師匠、これあげる。眠気覚ましに」
「うん? ミントのあめか? もらうよ」
『あ』
『あ』
『やりやがったw』
「…………。ぶふっ!?」
『噴き出したw』
師匠もだめみたいだね。仕方ないと思う。とても、まずい。でも目は覚めたよね?
壁|w・)感想でサルミアッキのことに触れた全ての人に責任があります。





