精霊様の説明
転移した先は、精霊の森。コウキさんは世界樹を見て、おお、と感嘆の声を上げてる。なんだかちょっとだけ嬉しい。
「すごいでしょ」
「すごい……」
『実家を自慢する子供かな?』
『なんか微笑ましいw』
『なお人外魔境なのではぐれたら死にます』
否定はしないから離れないでほしい。さすがに迷子になられると、助けるのは難しいから。
「それで、リタちゃん。どうしてここに? てっきりすぐに地球に行くのかと……」
「ん……。精霊様の都合」
「え?」
精霊様がちゃんと説明してくれるはずだから。精霊様が来るまではお菓子でも食べてほしい。というわけで、アイテムボックスからお菓子を取り出して渡しておいた。
「ぽ、ポテチ……! コンソメ!」
「食べていいよ」
「いいの!?」
頷くと、早速食べ始めた。食べて、泣きそうになってる。美味しい、だって。ポテチはぱりぱりしていて、味も濃くて美味しいと思う。私も好き。
「ああ……こっちのご飯、かなり微妙だったから……すごく美味しい……」
『そこまでか』
『しっかり味わって食べるんやで』
『リタちゃんが大好きなお菓子をあげるなんてめったにないからな!』
え? いや、別にポテチならいつでも買えるから、そこまでじゃないよ……?
ちょっと視聴者さんの私に対する印象が気になるけど、精霊様が来たので追求はやめておいた。精霊様はいつもの、にこにことした表情だ。
「こ、神々しい……」
『感動するのはいいけどポテチ食べるのをやめなさいw』
『神々しい(ぱりぱりぱり)』
『感動するのか食べるのかどっちかにしろw』
王様とかじゃないから、別に気にしなくてもいいと思うけどね。精霊様も気にしないだろうし。特に今回は、多分精霊のやらかしみたいだから。
「お気になさらず……。ゆっくり食べてくださいね。みかんもどきジュースもありますよ? いりますか?」
「え、あ、その……。はい……」
「どうぞどうぞ」
『精霊様がめちゃくちゃ優しい』
『どうした精霊様』
『やっぱり今回の事件の原因って精霊様なんか』
どうなんだろう。でも、精霊様の様子を見ると、そうみたい。
先に師匠が話を聞いてるかもしれないけど……。師匠は、ここにはいない。もう帰っちゃったのかな。
こほん、と精霊様が咳払いをした。
「改めて……。初めまして。私が世界樹の精霊です」
「は、はい! なんかこの世界に拉致された学生のコウキです!」
「…………」
あ、精霊様の笑顔が凍り付いた。
『え、これ意図的なん?』
『いや、本人悪気はないんちゃうかこれ。勇者君、困惑してるし』
『無自覚なナイフが精霊様に突き刺さってるw』
仕方ないと思う。私は見守るだけだよ。
「その……。コウキさん」
「はい!」
「このたびは大変申し訳ありませんでした……」
「え……?」
精霊様曰く。あのお城の地下にあった魔法陣は、とってもとっても昔に精霊様があの国に与えたものらしい。正確に言うと、あの国を気に入った当時の精霊が、精霊様にあの国を助けてほしい、優秀な人材が欲しい、と頼んだ結果、適当に作ったあの魔法陣を用意したのだとか。
それであの国の問題が解決していたのかは、精霊様も知らないんだって。当時の精霊様は、人間に対してそこまで興味がなかったから。
『マジで? 精霊様冷たくない?』
『精霊って本来人間とかどうでもいいっていう存在らしいから』
『当時の精霊様も例に漏れずってことだったんだろうな』
そうなんだと思う。だから、かなり昔の話だね。当時召喚されたのが地球の人だったかも分からないらしいから。
精霊様も今回の事件が起こるまで、その魔法陣の存在を完全に忘れてしまっていたらしいから。コウキさんが召喚されて、精霊たちが報告して、精霊様もその魔法陣を思い出したのだとか。
「なので……。今回の件は、申し訳ありませんでした。無事で何よりです」
「はあ……。いえ、まあ……。召喚したのは、あの国ですし……」
『まあそれはそう』
『魔法陣を作ったのは精霊様ってだけだろうし』
『包丁で人を怪我させて、その包丁を作った人が悪いのか、みたいな感じ?』
それでも、魔法陣がなかったらこういうことはなかったわけだから……。精霊様も申し訳ないと思ってるみたい。
「何かお詫びを……」
「いえ。リタちゃんとツーショットを撮らせてもらいました。満足です。あ、せっかくだから精霊様も写真いいですか!?」
「まあ、それぐらいなら……」
早速とばかりに精霊様とツーショットを撮ってる。せっかくだからお家にいた師匠も呼んで、みんなで一緒に撮っておいた。かなり喜んでるし、これで大丈夫、かな?
「本当にこれだけでいいのですか?」
「一生の宝物にします!」
「は、はあ……」
『精霊様が困惑してるw』
『いやでも、リタちゃんファミリー勢揃いで写真を撮ってるのって、この子だけでは』
『そう思うとめちゃくちゃ貴重な写真では?』
そうかな? そうかも。
コウキさんも満足したみたいだから、コウキさんが指定した場所に転移で送ってあげた。家の近くの公園、だね。足取り軽く帰って行ったよ。最後に握手もしておいた。
そうして、送ってからまた森に帰ってきたんだけど……。
「橋本さんからメールきてる……。少し話をしたいって……」
「…………」
『絶対今回の事件についてだぞ』
『まあ思うのは、他に異世界に拉致された人はいませんか、だよね』
精霊様を見る。精霊様は深く頭を下げた。
「ごめんなさい……」
いや、うん……。いい、けどね……?
とりあえず、橋本さんと会う日を決めて、また日本に行こうと思う。今回は、ちょっとだけ面倒だ。行くけど、ね。
壁|w・)勇者召喚編、終わり!
次回からは日本側。
Q.橋本さんって誰だっけ。
A.この作中での首相さんです。





