表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
412/485

みんなでやればこわくない

「いや、あの……。そ、そう! ここで僕がひどいことをしてしまうと、日本のみんなに知られてしまう! それはまずいんじゃないかな!」

「分かった。やってる間は配信を止める」

「逃げ道が塞がれていく!?」


『もう逃げられないぞ(はぁと)』

『また懐かしいものを……』

『逃げ道が塞がれてるのは先王なのか勇者なのかw』


 コウキさんが頭を抱えてしまってる。あまりひどいことはしたくないらしい。優しいと思う。その優しさは大事にしてほしい。

 でも今は気にしなくていいよ。ほら、王様も今か今かとわくわくしながら待ってるから。


『王様がうきうきしてるのがなんとも言えねえw』

『これでやっぱりやめるは許されざるですよ』

『覚悟を決めろ、勇者ァ!』


「うう……」


 コウキさんは喉を鳴らして、先王に向き直った。こんなに騒いでるのにすやすや寝てるけど、音が聞こえないようにしてるだけだから、いくら騒いでも大丈夫。

 んー……。もしかして、だけど。


「血を見るのは嫌?」

「当たり前なんだけど!?」

「ふむ……。勇者殿は平和な場所で暮らしていると言っていたな……。ならば! 人を斬ることなんて今回だけの経験ではないか? 貴重だ!」

「そんな貴重いるかバカ!」


『王様こんなおもしろい人だったのかw』

『貴重だ、じゃねえんだよw』

『まあコウキの気持ちも分からんでもないかな』


 日本の人はみんな優しいね。私なら、遠慮なくやるのに。

 でも、そっか。血は見たくない。それなら確かに、剣とかは嫌だよね。仕方ない。


「じゃあ、コウキさん」

「う、うん……」

「先王に魔法をかける。ちょっと強めの結界。ただし痛みはしっかり伝わる結界。どう?」

「拷問用の結界かな?」


『優しさに見えてえげつなさが増してる気がする』

『それつまり、死んで楽になることは許されないってことで』

『拷問の魔女かな?』


 拷問用じゃないから。でもとにかく、これで安心できるよね。


「まあ、それなら……」


『いいんかいw』

『何もせずに帰ることは雰囲気的に許されそうにないしなw』


 それじゃあ、先王に魔法をかけて、と……。あとは、道具。


「王様」

「任されよ」


 王様が頷いて部屋を出て行く。そうして、十分ほどして戻ってきた。王様の他に、何人かメイドとか執事を連れていて、剣とかの武器を持ってる。何故かみんな笑顔だ。


「え……。これ、捕まるやつでは……」

「安心してほしい、勇者殿。鬱憤がたまっているのはみんな同じだ」

「ええ……」


 よっぽど、ろくでもない王様だったってことだね。こうして、みんなが協力してしまうほどに。じゃあやっぱり遠慮はいらないということだ。


「じゃあ、どうぞ」

「う、うん……」


 まずは……目覚めの一撃。


「おらあ!」

「ぐふっ……」


 先王が目を覚ました。がばりと起き上がって、コウキさんを睨む。


「きさま……! 勇者! どういうつもりだ!」

「コウキさん、弱い」

「弱いな、勇者殿」

「う、うるさいな!?」


『これはひどいw』

『日本人はそっちの人と比べて非力なんや! 見逃して!』


 分かってるつもりだったけど、もうちょっと鍛えた方がいいと思う。いや、私も人のことは言えないけど、私には魔法があるから。

 でもこのままじゃ逃げられそうだし、捕まえておこう。ぎゅっと。


「うおお!? なんだこれは!? おい貴様ら! わしを助けろ!」


 影の縄で手足を縛られた王様がその場に転がった。何かわめいているけど、気にしない。


「あとは好きにしてね。さっきも言ったけど、攻撃は届かない。痛いだけ」

「う、うん……」


 コウキさんは試しにとばかりに思い切り王様を蹴った。躊躇していたわりには力いっぱい蹴ったと思う。


「ぐお!?」


 ん……。ちゃんと魔法は発動してる。安心だ。コウキさんにもなんとなく分かったのか、無言で王様が持ってる剣を受け取った。


「クソジジイが! よくもさらいやがって!」


 そんなことを言いながら、剣でべしべし叩いてる。ちなみに結界があるから斬れないけど、痛みは斬ったのと同じ痛みになってるはず。


「魔女殿」

「ん?」

「これは、我らが参加しても……?」

「どうぞ」


 コウキさんの攻撃だけ防ぐ、というわけでもないからね。この際だから、みんなで参加してくれていいと思う。

 そうして、なんだかいつの間にかたくさんの人が集まってきて、先王をこれでもかというほど痛めつけていた。よほど悪い王様だったみたい。途中から護衛のはずの兵士さんまで集まってたから……。


「うわあ……」


 コウキさんがどん引きして戻ってきたぐらいだからね。


『これはひどい』

『ここまで憎まれてるって、よほどでは……?』

『よく今までクーデターとか起きなかったな』


 それだけうまくやってた、ということかもしれない。近くに魔道具も置いてあるから、それで身を守っていたとか。

 枕元に置いてある魔道具は、二つ。結界と、攻撃用のもの。もちろん無効化してあるから問題はない。

 それにしても……。これはしばらく、終わらないかな?


「王様。私はコウキさんを送ってくるから。魔法は、朝日が昇るまでだよ」

「了解した! おらあ!」

「あわわわわ……」


 怯えてるコウキさんを連れて、私はその場から転移した。きっと自業自得なんだと思うから、コウキさんは気にしなくていいいよ。


壁|w・)周りの勢いに逆に冷静になった勇者(笑)でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これで良く今の今までクーデターされてないな……
先王が上手くやってたってのもあるけどこれは現王が慕われてるってのもありそうですなぁ もしかしたら現王が子供のころから次代の王になれば!っと希望をもって耐えていたのかもしれないw
これは酷いw どれだけ迷惑かけてんだよ、この先王。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ