正面から乗り込んでみる(ただの訪問)
転移とかで軽く見て回ったけど、この国のほとんどは畑とかみたい。もちろん村とかもあるけど、そこはあまり見ても仕方ないかなと思う。
「精霊様が言うぐらいだから、分かりやすい何かがあると思う」
『意味なく見てこいなんて言わないだろうしな』
『あまり広くない国みたいだし、もうちょっと探す?』
もうちょっと探す。やっぱり、大きい町を見るべきかな。
国の広さは、日本で言うところの都道府県ぐらいの広さだと思う。北海道じゃないよ。最初は国を壁で囲んでるってすごいと思ったけど、それぐらいならできるのかな? 魔法とかもいろいろ使ってるだろうし。
この国で街と言えるほど大きいのは、中央にある街だけだと思う。ここが王都になるのかな。とりあえず転移で来てみたけど……。街の広さで言えば、それなり、かな?
石造りの建物がいくつもあって、たくさんの人が出歩いてる。ただ、一般の人だけじゃなくて、兵士さんも結構な人数がいる。頻繁に戦があるから、かな?
街の真ん中には、お城。他の建物よりももちろん大きいけど、今まで見てきたお城の中では一番小さいかもしれない。
それで……。ここまで近づいたら、私にも分かることがあった。
「魔力を感じる」
『おん?』
『当たり前では?』
『感じちゃいけない類いの魔力ってことかな? どんな?』
どんな、と言われても説明が難しいけど……。簡単に言うことはできる。わりとはっきりと残る魔法を使った痕跡。これは……転移魔法に似てるけど、ちょっと違う。
多分、召喚魔法だ。遠い場所にいる誰かを呼び出す魔法。かなり無茶な使い方をしたみたいで、はっきりと痕跡を感じられる。
「召喚魔法。規模で言えば……。多分、地球への転移魔法に近い」
『え』
『なにそれ』
『遠い異星の誰かを召喚したってこと!?』
そういうことだと思う。つまりは、師匠の時とは逆のことをしてるってことだね。召喚元の詳しい場所は分からないけど、この銀河ではないと思う。
「この魔法について調べればいいのかな」
『そういうことだと思う』
『召喚魔法かあ……。地球かな?』
『銀河に一つぐらいは生命体のある惑星がありそうだし、むしろ地球の可能性は低いかも』
どうだろう。召喚元が分かればいいんだけど、さすがに痕跡程度の魔力だと分からない。その痕跡が目の前にあるわけじゃないし。
痕跡があるのは、お城の方。それも地下室だと思う。だから、召喚魔法を使ったのはお城の誰かってことだね。
『つまり……忍び込む必要があるね?』
『よっしゃリタちゃん! コスプレ衣装もらったやろ!』
『忍者やろうぜ! 忍者!』
「いや、やらないよ?」
何をやらせようとしてるのかな、この人たちは。あの服には保護魔法しかかけてないから、もしもの時はちょっと不安だ。普段から結界魔法は使ってるけど、ちゃんと服やローブにもいろいろ魔法をかけてるから。
とりあえず……。
「正面から行ってみよう」
『え』
『まじかよw』
「悪いことをしてるわけじゃないから、王様とか会ってくれるはず」
わりとどこの王様とも会ってきたから、今回も大丈夫……だと思う。
お城の周りをぐるっと飛んで、入り口を見つける。大きな扉に兵士さんが十人ほど立って警戒していた。人数が多い。侵入者に警戒してるのかも。
ゆっくりと兵士さんたちの前に下りる。兵士さんは驚いていたけど、すぐに武器を構えてきた。
「貴様、どこから入った!」
「ん」
「あ……?」
こういう時はギルドカード、だね。兵士さんの一人が受け取って、少しだけ驚き、そして慌てたように周囲に視線を走らせた。誰かを探しているみたい。
「隊長はどこだ!?」
「陛下に呼ばれて城の中へ……」
「くっ……。魔女殿! 少し待っておいてもらいたい!」
私が魔女と呼ばれると、その場にいた兵士さんみんなが驚いた。いつものやつ、だね。
兵士さんがギルドカードを持ったままお城の方へと駆けていく。偉い人がお城の中にいるみたいだから、どうするべきか聞くんだと思う。その間はちょっと暇だ。
「あの……。魔女、なんですか?」
そう聞いてきたのは、側の兵士さん。若い男の人だ。私が頷くと、おお、と目を輝かせた。
「この国に魔女の方が訪れるのは初めてです……! 我が国の救援に来てくれたんですね!」
「救援?」
「一緒に戦ってくれるのでしょう?」
「絶対に嫌だ」
「え」
『これは草』
『期待に満ちた瞳がショックで曇る様、いいですねえ』
『やべーやつがおるwww』
『それにしてもわりと力強い拒否だったなw』
私にそこまで関係のない国のために戦うつもりなんて、少しもないから。そこは諦めてほしいと思う。
「で、ではどうしてここへ……?」
「観光。お城は、ちょっと気になったことがあったから」
「観光……?」
観光のついででいいって言われてるから、観光がメインで問題ないと思う。ついでに召喚魔法について調べる。そんなつもりでいるよ。
「で、ですが! 魔女様も我らの話を聞いていただければ、きっと魔族の国を攻めたくなるはずです!」
「ふうん……」
『あまりにも興味がなさすぎるw』
『気のない返事にもほどがあるぞリタちゃんw』
興味のないものは仕方ない。正直勝手にやってほしいと思う。
兵士さんのいろいろな自国自慢みたいなのを聞いていたら、お城の中に入っていった兵士さんが戻ってきた。私の目の前に来て、綺麗な直立姿勢になる。びしっとしてる。かっこいいかも。
「失礼しました! 陛下がお会いになりたいそうです!」
「ん……」
好都合、かな? せっかくだし、直接聞いてみよう。案内してくれるというその兵士さんに従って、私はお城の中に入っていった。
壁|w・)救援という名の参戦要請は却下です。





