このカードが目に入らぬかー!
精霊様にだいたいの場所を教えてもらって、転移で移動。そうして転移した先にあったのは、広大な草原だった。木の一本もないただただ広い草原。そんな草原に、ぽつぽつと田畑があったりする。そんな場所。
「ここがサモナード王国?」
『畑ぐらいしかないな』
『もしかしてめっちゃ田舎の国なのでは』
『いや、国の隅っこあたりなだけでは?』
そうなのかな? もうちょっと高く飛んで周囲を見てみると……。ああ、うん。大きな壁があった。ぐるっと国を囲んでいるみたいで、ずっと遠くまで続いてる。
あんなに大きな壁で国を囲ってるってことだよね。すごい。
『めちゃくちゃ無駄なのでは?』
『いや、精霊様の話だと敵国が近くにあるらしいし、必要なのかも』
『失敗なんとかシティかな?』
なにそれ。よく分からない。
ちょっと壁の方に行ってみる。多分、畑がある方が国だと思うから、その反対側を見て……。
「あ、向こう側にも壁がある」
『かすかにとはいえ、見える範囲に敵国があるんかよw』
『どんな立地関係だよw』
『開戦待ったなし』
どう、なんだろう? まあ、確かに……。あまり空気は良くないと思う。空気というか、魔力の残滓がいろいろ残ってるから、たまに戦っているのがよく分かる。
あと、下を、つまり壁の方を見ると、兵士らしい人たちが何人もいた。剣を持ったり、槍を持ったり、杖を持ったり……。そんな人たち。おしゃべりはしてるけど、ちょっとした緊張感が常にある。なんだか嫌な空気だ。
「ぴりぴりしてる」
『なんかやな感じですね』
『もう帰った方がいいのでは』
『精霊様、もうこことあっちの国吹き飛ばそうぜ』
『なるほど、そうしましょうか』
『ごめんなさい冗談です』
それは最終手段にしてほしい。いや、本当に必要ならためらいなんてしないと思うけど。
とりあえず……どうしようかな。適当な場所で下りてみて……。
「ん……」
なんか飛んできた。氷の槍だ。かっこいい。
『なんだなんだ!?』
『攻撃された!?』
うん。攻撃、だね。壁の方を見てみたら、上に立っていた杖を持った兵士さんがこっちを睨んでいたから。あっちの国の誰かと思われたのかも。周りも慌て始めてる。
面倒だから逃げてもいいけど……。きっとそっちの方が面倒なことになるよね。
また槍が飛んできたから、とりあえず受け止めた。ぱしっと。
『飛んできた槍を片手で掴むまじょっこ』
『強者の余裕』
『かっけえ』
「この程度なら慣れれば問題ないよ。兵士さんも別に驚いてないと思う」
そう言って下を、兵士さんを見る。口をあんぐりと開けて固まっていた。あれ?
『絶句してるw』
『慣れれば問題ない(魔女基準)』
『シッショ、何か一言』
『常識を教えるべきだった』
『おい保護者www』
んー……。当たったところで結界を貫けない程度の魔法なんだけど……。まあ、いいか。
とりあえず下りて挨拶してみよう。ゆっくり下りていくと、兵士さんたちが慌てて武器を構え始めた。でも杖を持った人が手を上げると、すぐに下ろしてくれる。偉い人なのかも。
「こんにちは」
私が挨拶すると、兵士さんたちは一瞬だけ戸惑ったみたいだった。
「あなたは……人族か?」
「エルフ」
「魔族ではない、と」
「あの国ではないよ。別の国があんなに近くにあるって珍しいなと思って見てただけ」
「なるほど……」
「あと、ギルドカード」
カードをアイテムボックスから取り出して渡すと、兵士さんは小さく頭を下げて受け取った。確認して、息をのんで、慌てて頭を下げてきた。
「失礼致しました! まさか、Sランクの冒険者とは……!」
「ん……」
『この瞬間がたまらなく好き』
『このカードが目に入らぬか!』
『目に入るわけないだろうが痛いんだよ』
『誰が物理的に入れろと言ったw』
視聴者さんは何の話をしてるのかな。
兵士さんからカードを返してもらって、ちょっとだけ話を聞いた。
「あんなに近い場所に国がある。珍しい」
「やつらが領土を広げてきましてね……。迷惑な話ですよ」
「領土の奪い合い?」
「そうならないように防衛しています」
これだけ聞いたら、魔族の国が悪いみたいに聞こえるけど……。鵜呑みにはしない方がいいかもしれない。魔族の国でも同じようなことを言うかもしれないから。
それに。この国の戦争のきっかけとか、わりとどうでもいい。勝手にしてほしいと思う。精霊たちが何も言わない間は、私にも無関係なことだから。
「観光しても大丈夫?」
私がそう言うと、兵士さんは意外そうに目を瞬かせて、でもすぐに笑顔で頷いた。
「もちろんです。あなたは久しぶりのお客人だ」
「そうなの?」
「戦が多いので、どうしても外からの観光客はあまり来ないのですよ」
それは当たり前かな。誰だって戦に巻き込まれたくなんてないだろうから。
「じゃあ、ちょっと見て回るね」
「はっ! 他の部隊にも伝えておきましょう」
「ん」
これで問題なく国を見て回れるはず。それじゃあ、どこから見に行こうかな。
壁|w・)部隊長さんの渾身の魔法! 魔女は受け止めて喜んでいる!(ダ○クドレ○ム風)
サモエード王国にしてサモエドをいっぱい出す国にしたくなったのは内緒。
いや、サモエドがいっぱいの動画見て……かわいくて……。もふもふ……もふもふ……。





