師匠と社長さんのゲーム談義
詳しい場所はまだ分からないから、とりあえず私のコーナーの側に転移した。私のコーナーって自分で言うのはちょっと恥ずかしい。
カレーは……もう完全に終わってるみたい。あの行列もなくなっていて、お片付けをしてる。まだまだ人は多いから運び出しとかはしないみたいだけど、もういつでも運び出せる状態にするみたい。
「おや、リタさん。おかえりなさい」
社長さんがにこやかに声をかけてきた。
「ん。もう終わったんだね」
「はい。思っていた以上に好評でした。なんとしても完成にこぎ着けなければ……!」
『いやマジで美味しかったよ。完成が楽しみ』
『値段も気になるところ。一個千円ぐらいしちゃうかな?』
『多少高くてもとりあえず一個は買いたいな!』
頑張ってほしいと思う。とりあえず完成したらいっぱい買うから。
「まだまだ試作段階ですが、よければどうぞ」
社長さんから渡されたのは、ビニール袋。中には、パッケージに何も書かれていないレトルトカレーが五つほど入っていた。これって、もしかして……。
「今日のカレーです。よければ、ご自宅でどうぞ」
「おー……。ありがとう」
「いえいえ」
『やっぱりまだ残ってたのかよお!』
『俺食べられなかったのにw』
『まあリタちゃんの許可なしでは実現できないカレーだからね、仕方ないね』
『それはそう』
食べられなかった人がいたのならそっちに優先してもらってよかったんだけど……。でも、気遣いはとっても嬉しい。お家で食べようと思う。
「それで、リタさん。次はコスプレエリアですね?」
「ん。誘われて、約束したから」
「ではご案内しましょう。社長なんて暇な仕事ですから」
そう言って社長さんは朗らかに笑ったけど……。お片付けをしてる社員さんは納得しなかったみたい。一斉に声を上げ始めた。
「社長! ずるいっすよ!」
「あたしが! 案内したい! リタちゃんとお話ししたい!」
「横暴だー! 腹いせに社長の奥さんにへそくりの場所を教えてやるー!」
「やめて!?」
んー……。仲良しな会社、だね。とっってもいいと思う。こういうの、私は好きだよ。いつかの牧場を思い出すね。
とりあえずそのまま社長さんが案内してくれることになった。社長さんも昔はこういったイベントに参加したことがあって、わりと詳しいんだとか。
「私も昔は同人誌とかを書いたものですよ。テイルスの第一作目とか」
「社長さん、いい趣味してるな。今度一緒に酒でも飲もう」
「ははは。いいですね。ちなみに師匠さんの好きなキャラは?」
「昔は主人公だったけど、今は学者のあいつだなあ。あんなおっさんになりたい」
「分かります分かります」
むう……。なんだか共通の話題があるみたいで、仲良く話してる。ちょっと疎外感。何かのゲームの話なんだと思うけど……。私もやろうかな。
「師匠。何のゲーム?」
「うん? わりと有名なシリーズの一作目だよ。俺がやったのはリメイクだけど、あの頃のゲームとしてはテーマソングが入っていて衝撃だったらしくて……」
「私もやりたい」
「魔法を再現しそうだからやめてくれ」
「ええ……」
『だめな理由がわりと切実すぎてw』
『確かにリタちゃんなら再現してみたとか言ってやらかしそう』
『ブラックホールとか大惨事にしかならないw』
さすがにブラックホールを作ったりはしないよ。作れるかと聞かれれば、多分作れるけど……。みんなが言うように、とっても大変なことになると思う。私でもだめだって思うぐらいに。
「まねしない。約束する」
「あー……。ちょっと、精霊様と相談してみるよ……」
「ん」
『つまり、家族会議ですね?』
『娘の教育に問題ないかの話し合い、だな!』
『禁止したところで、適当に自分で用意しそうだけどなあ』
それは否定しない。だめだって言われたら真美に頼むことになると思う。
「あのシリーズって今も続いてるんだよな? 最近のだとグラフィックすごそうだよな」
「それはもう……。オープンワールド、とまではいきませんが、それに近くなっていますよ」
「マジかよすげえ」
むう……。おーぷんわーるど、が分からない。何の話をしているのか分からない。ちょっと、不満。とても不満。むう。
『おいシッショ、リタちゃんが拗ねてるぞ』
『わりと分かりやすく拗ねてるのは珍しい』
「え」
師匠がこっちを見た。別に拗ねてないよ。
「あー……。リタ」
「ん」
「アメでもなめるか」
「わーい」
アメ好き。師匠が口に入れてきたのは、甘いアメだ。ころころ口の中で転がしておこう。んー……。美味しい。
『あめ玉一つで機嫌がなおるのか……w』
『ちょっとむかっとしただけみたいだから』
『本当にお菓子だけで変な人について行きそうでたまに不安になるよ』
そんなことしないよ。本当に。
そうしてしばらく歩いて、コスプレエリアにたどり着いた。
壁|w・)お菓子があれば魔女を手懐けられる……かもしれない!





