魔女のコスプレ
真美のお家に転移したら、真美が待ち構えていた。テーブルの上に広げられてるのは、出前のチラシ。今日は出前なのかな。
「いらっしゃい、リタちゃん」
「ん。今日は出前?」
「うん。ちいが、早く着たいって」
「あー……」
リビングの方を見る。ちいちゃんが顔だけのぞかせて、わくわくしたような目でこっちを見てる。うやむやにはできないかな、これは。
『注文だけしてコスプレですな?』
『三人並ぶリタちゃんが見れるわけですね!』
『めっちゃ楽しみ』
楽しみにするようなことでもないと思うけど……。とりあえず、渡しておこう。あとは、出前を何にするか、だね。
「どれにするの?」
「師匠さんにお任せします!」
「え」
突然話を振られて困惑する師匠にチラシを残して、私は真美に連れられてリビングに入った。しっかりと師匠からは見えないようにして……。ああ、ここで着替えるんだね。
「なんでもいいのかー? 勝手に注文するぞー」
「なんでもいいよね?」
「ん」
「師匠さんのセンスにお任せします!」
「さらっと一言で難易度上げるのやめない?」
出前は師匠の気分次第。何を選ぶのかな。私はなんでもいいけど。
『シッショのセンスが問われるな』
『ここで安直にリタちゃんの好物カレーを選ぶのはなんか違う気がする』
『かといってピザとかも、せっかくのコスプレが汚れそうだよね』
『いやあ、何を注文するんだろうな!』
ちょっと嫌がらせになってない? 私は本当に何でもいいけど。
とりあえず、アイテムボックスからコスプレセットを取り出す。それをちいちゃんに渡すと、わあ、と顔を輝かせた。かわいい。
「ありがとう!」
「ん……」
なんだろう。ちょっとだけ、恥ずかしい気がする。
「ああ、そうだ。リタちゃん。光球を……」
「そうだった」
さすがに着替えを映すわけにはいかない。キッチンの方にいてもらおう。また後で、ね。
『そんな殺生な!?』
『くそ何も言わなければ気づかれず見られると思ったのに!』
『お前らわりとマジで最低だぞ』
光球を外に追い出して、改めてお着替え。私は待ってるだけだけど。
そうして、少しだけ待って。二人の着替えが終わった。
本当に、私の服だ。もちろん魔法とかは何もかけられていないけど、見た目だけなら私だと思う。小さい私と、大きい私。そんな感じ。もちろん顔の輪郭とか髪とかは全然違うけど、ね。
でも逆に言うと、そこさえ私が魔法でどうにかしてしまうと、本当に見分けがつかないと思う。わりとすごいと思うよ。
「いやあ……。すごい再現度だね、これ」
「ん……。未来の私がいる」
「いや、リタちゃんは大きくならいんじゃ……?」
「そうだった」
そう思うと、ちょっと寂しい気がしないでもない。守護者になったことは後悔してないけど、ね。
それじゃあ、そろそろ。師匠や視聴者さんに見てもらって、感想でももらおう。
キッチンに戻ると、師匠が椅子に座ってあくびをしていた。光球をつんつんとしてる。何やってるのかな。
『うおおおやめろシッショ!』
『指でつつくんじゃない!』
「別に痛いわけでもないだろうに、何言ってんだお前ら」
本当に何やってるのかな。
「師匠」
「お、戻ったか……。いや、わりとすごいなそれ」
師匠が真美とちいちゃんを見てそう言った。光球も呼び戻して真美とちいちゃんを映してあげる。
『おおお! すげえ!』
『おっきいリタちゃんとちっちゃいリタちゃんだ!』
『リタちゃんはもとからちっちゃいだろ!』
いや本当に、何の話をしてるのかな。
とりあえず横に三人で並んでみる。私は真ん中ぐらいで。どうかな?
『これが見たかった!』
『リタちゃん三人衆』
『これ作った人はまさしく神だ』
そこまでなの……? ちょっと私には分からない感覚だ。
「おそろい! おそろい!」
私としては、ちいちゃんが喜んでくれたからなんとなく嬉しい。頭を撫でてあげると、照れくさそうに微笑んだ。この笑顔を見れただけでも十分かもしれない。
「師匠さん、何を注文したんですか?」
そうだ、ご飯だ。師匠が注文したはずだけど、何を頼んだんだろう。師匠を見ると、チラシを一枚手に取って差し出してきた。
えっと……。ウナギ、だね。ウナギ美味しいから好き。
『ウナギとかないわー』
『こういう時はネタに走れよシッショ!』
『つまらんぞコウタぁ!』
視聴者さんたちには不評だった。理由はよく分からない。ネタに走って変な物を頼まれても困るんだけどね。
配達時間は三十分後らしい。それまでは……。
『よっしゃいろんな角度からお願いします!』
『三人並んで前からとか後ろからとかポーズとか!』
「真美。ちいちゃん。いい?」
「あはは。まあ、いいかな」
「うん!」
そういうことになった。師匠も一緒になってスマホで写真を撮っていたのはよく分からなかったけど……。まあ、いいか。
壁|w・)魔女三人衆。





