師匠わくわくの日
壁|w・)ここから第三十三話のイメージです。
月末の日。日の出と同時に起床して、リビングに向かう。
「おはよう、リタ」
師匠が身支度を調えて待っていた。
「師匠、はやい」
「気のせいじゃないか?」
「すごくそわそわしてる」
「気のせいだな」
「ん……」
いや、いいんだけど。楽しみなことがもうすぐだって思ったら、そわそわするのは分かるから。あまり言っても仕方ないから、これ以上は黙っておく。
朝ご飯は、今度こそピザトースト。ピザソースもたっぷりだ。
「さて、リタ」
「ん」
「今日は即売会の日だ」
「ん」
「正直、こっちの世界に転生してからはもう絶対に無理だと思ってたけど……。まさか夢が叶うなんてなあ」
そんなに行きたかったんだね。私は、その即売会が何なのかがよく分からないけど。真美が言うには、二次創作の本とかを売ってるところ、らしい。にじそーさくって、なんだろう?
でも、師匠が喜んでくれるのなら、私も嬉しい。
「リタも見て回るんだよな?」
「ん。師匠が見てみたかったもの、私も見たい」
「あれ、なんだろう。そう言われると恥ずかしい気がしてきた」
なんで? 恥ずかしがるようなことじゃないと思う。
今から行く即売会はとっても人気のイベントみたいで、朝早くから人が並ぶんだとか。そこで開場まで待つと……。んー……。
「あまり長く待ちたくない……」
「え? いや、まあ気持ちは分かるけど……」
「みんなに聞こう」
というわけで、配信開始。いつもの挨拶が並んでいくのを待ってから、口を開いた。
「即売会」
『なあ、リタちゃん。知ってるか? 即売会は挨拶じゃないんだ』
『せめて挨拶しよう?』
『で、即売会がどうしたの。今日行くんだよな?』
「いつから並べば入りやすい?」
『ぶっちゃけ入るだけなら昼からとかの方がいいと思う』
『まあ昼からだとすでに売り切れとかよくあるけどな!』
『でも早くに行っても並べないよ。その辺、ちゃんと決まってるから』
「なん……だと……。徹夜とかは?」
師匠が愕然とした様子で言うと、コメントがまたすぐ流れ始めた。
『いつの時代の話だw』
『あったなあ、徹夜組w』
『今やると職質待ったなしだぞw』
昔は徹夜をして並ぶ、みたいなこともあったらしい。それだけ人気のイベントなんだね。でも今はない、と。師匠が地球で生きていた頃はそんな徹夜組もいたのかもしれない。
「じゃああんまり早く行っても意味なさそうだなあ」
「んー……。でも並び続けるのも嫌」
「わがまま姫だな」
師匠がほっぺたをつんつんしてくる。やめてほしい。柔らかいから気持ちいいとか知らないから。
『俺たちは……何を見せられて……』
『俺もリタちゃんのほっぺたをつんつんしたいです!』
「いいぞ。即座に殺すけど」
『やめておきます』
師匠、真顔でそれを言うと冗談に聞こえないよ。
ただ、みんなの話を聞いていたら、そもそも最初に入れるチケットというものがなかったら、入場までにかなり時間がかかるのだとか。そんなチケットがあるんだね。
もちろん私も師匠も持ってない。ちょっと残念。
「仕方ないな……。じゃあ、とりあえず八時頃に並ぼうか」
「ん」
そういうことになった。
八時まで待ってから、私たちは会場の側に転移した。
会場は……なんだか不思議な建物。変な形。逆三角形を組み合わせたような……。どうしてあんな形にしているのかな。おもしろいけど。
それにしても……。
「師匠。師匠」
「うん」
「人がいっぱい」
「いやあ……。想像以上だな!」
見たこともないぐらいに人がいっぱいだ。どこに並べばいいのか分からない。
『リタちゃん見つけたー!』
『生リタちゃんだー!』
『ちょっと高すぎて分かりにくいけど!』
『今日だけで生リタちゃんを見れる人がかなり増えそうw』
視聴者さんも結構いるみたい。それはいいけど、どこかな。
「お。あっちじゃないか?」
師匠が指さした方を向かう。人がたくさん並んでいることに変わりはないけど……。でも、列の終わりは確かにあった。
師匠と一緒に地上に下りて、最後尾に並んだ。何故か前の人が振り返って目を丸くした。いつものことかな。
「りりりリタちゃんとシッショさんだ……!」
「誰がシッショだ」
「ヒェッ」
いちいち反応したらだめだと思う。
「師匠。どれぐらい待つの?」
「うん? あー……。三時間とか、もっと長いかもな」
「長すぎる……」
「お菓子でも食べて待ってなさい。ほら」
「わーい」
師匠から渡された飴を口に入れる。んー……。ちょっと甘めだけど、酸っぱさも感じる飴。美味しい。ころころ転がしておこう。
壁|w・)ちゃんと親子をしていたら娘を即売会なんてものに連れて行くわけないだろうがいい加減にしろ!
そんなつっこみは受け付けます。
なお、例のイベントに似た何かです。例のイベントとはまた別です。だから細かいところで違います。





