ちょっとおこな真美さん
精霊様はなんだかすごく難しい表情をしていたけど、やがて小さなため息を……いやかなり大きなため息をついた。そこまでなの?
「真美は……在宅ですか?」
「ん。お休みだからいると思う」
「では……。真美の家までです。そこから外に出してはいけません。それを守ってください」
『お許しが出たぞー!』
『しれっと真美ちゃんが巻き込まれること確定してるのが笑える』
『お労しや真美ちゃんwww』
『草を生やしてやるなよw』
『というか反応がないのはまさか……』
『さすがに呆然としてそう』
真美にはちょっと申し訳ないと思うけど……。付き合ってほしい。そんなに悪いことにはならないと思うから。
「ありがとう、精霊様。じゃあ行ってくる」
「はい。気をつけて」
「え? え? え?」
精霊様に手を振って、理解できないままのアルティを連れてその場から転移した。
転移先はもちろん、真美のお家だ。
いつものリビングに転移すると、真美がスマホを見つめたまま完全に固まっていた。でもすぐに自分の家が映ってると察したのか、ゆっくりと顔を上げてくる。目が合った。
「…………」
「…………」
「え? え? こ、ここどこ?」
無言の私と真美。アルティだけが慌ててる。
真美は頭を抱えて、そして叫んだ。
「情報量! いきなり過ぎる! 報連相すら知らないの!? リタちゃんはいつものことだけど精霊様ぁ!」
『ごごごごめんなさい!?』
『神様ポジションの人が女子高生に怒られて謝ってる……』
『間違いなく真美ちゃんが正論だからな』
うん……。さすがに、せめてもう少し時間を置いてから来た方がよかったかも。どうしよう。一度帰った方がいいかな。
「真美。一度帰った方がいい?」
「だいじょうぶ……!」
「そ、そう……?」
『音の全てが濁音になってたぞ今w』
『絞り出したような大丈夫w』
真美はゆっくりと立ち上がると、とっても綺麗な笑顔を私たちに向けてきた。
「全責任は精霊様にあるからさ……。リタちゃんは気にしなくていいよ」
『なんでですか!?』
『まさかの全責任』
『精霊様もこれには反論……』
「保護者を自称するなら責任を取ってください。常識でしょ?」
『すみませんでした』
『あかん、女子高生に土下座する精霊様がなんとなく見えてしまうw』
『もうこれ真美ちゃんが最強なのでは?』
真美はため息をついていたけど、とりあえず、ということで何か用意してくれることになった。晩ご飯はカツカレーにしてくれるって。やった。
「あの、リタ、私はここにいてもよかったの?」
「大丈夫」
「ちなみに、ここはどこ? 見たことのないものがいっぱいあるけど……」
「異世界」
「何言ってるの?」
「正確に言うと別の星。空に浮かぶ星の側にあるちっちゃい星」
「本当に何言ってるの!?」
『まあこれは理解できなくてしゃーないw』
『異世界でも意味不明なのに、他の星とか言われてもなw』
『そもそも恒星とかの概念もないだろうし』
言われてみればそうだ。私は師匠や精霊様から聞いてるから知ってるだけで、私の世界の人はあの星が恒星で、近くに惑星があって……なんて、知ってるわけがない。
それを説明してもいいけど……。アルティには、異世界で通した方がいい気がする。一からとなると説明も難しいし。
「アルティ。座って」
「う、うん……」
リビングの椅子に座る。アルティはまだおっかなびっくりといった様子。えっと……。そうだ。テレビでもかけよう。緊張をほぐすために。
リモコンでテレビの電源をつける。テレビに電源が入った瞬間、
「ひっ!?」
アルティがびくっとした。
「ななななにこれあにあれ人が動いてる絵が動いてる!?」
「…………」
「り、リタ?」
「おもしろい……。くせになりそう」
「リタ!?」
『リタちゃんwww』
『妹の反応で遊ぶんじゃないw』
『でも気持ちは分かるw』
みんなの私に対する感情もこういうのなのかな。なんとなく分かった気がする。
とりあえずテレビについて説明しておく。とっても簡単に。遠くのものをこの道具で映してると言ったら、一応なんとか理解してくれたみたい。
一応、だけど。よくは理解してないみたいだから。
「世界って……広いね……」
「ん。異世界だけど」
「そうだったね……」
『アルティちゃんが老けてしまわれたw』
『お労しやアルティ姫』
『お姉ちゃんに愚痴を言ったら爆弾を口に突っ込まれた妹の図』
『どんな図やねん』
そこまでのことはしていない……つもり、なんだけど。
壁|w・)そろそろ真美さんは怒ってもいいのではなかろうか……。





