テントと寝袋でお泊まり
テントの中はなんだか不思議な感じ。お家とはまた違った感じだ。本来なら明かりがないからもっと薄暗いだろうけど、師匠がいつものランタンを浮かせていた。わりと明るい。
『だからずるいってそれ』
『LEDランタンなら寝る直前までテントに持ち運びできるから便利』
『不便を楽しむ(笑)』
『言うなw』
不便にすることにこだわっても仕方がないと思う。
「リタ。そろそろ寝るか?」
「んー……」
どうしようかな。もうそろそろ寝てもいいけど、でもまだテントをあまり見てない。もうちょっと見たい。いや見るところがあるかと聞かれると困るけど。
「ちなみにこれが寝袋だ!」
「おー?」
師匠がアイテムボックスから取り出したのは、細長いお布団みたいなもの。先っぽあたりに人が入れるぐらいの穴があって、そこから体を入れるみたい。横はチャックになってるみたいだから、広げることもできるのかな。
身動きはしにくそうかも? 寝相が悪い人は大変かもしれない。私はそんなに悪くないはずだけど。師匠は知らない。
「入ってみる」
「ああ」
テントに寝袋を二つ並べる。やっぱりこのテントは大きいみたいで、寝袋を二つ並べてもまだ結構余裕があった。四人ぐらいなら一緒に寝れるかも?
そうして、天井を見上げる。メッシュになってるから、星空を見ることができた。これはとてもいいもの。
『ほーん。綺麗やん』
『空気が綺麗だからか星空がちゃんと見えるね』
『東京とか大阪とかだと星空なにそれになるからな』
あまり空気は良くないからね。仕方ないと思う。もうちょっとどうにかした方がいいとは思うけど……。私が気にすることでもない、かな。たくさん遊びに来てるけど、部外者だし。
「星きれい」
「そうだな」
たくさんの星が輝いてる。日本では星座というものがあるらしいけど……。よく分からない。向こうでは考えたこともなかったし。
「師匠。師匠。北斗七星はどれ?」
「うん? なんだよ急に」
「死兆星を探す」
「おいばかやめろ」
『なんてもの探そうとしてるんだw』
『見つけたら死んじゃうぞ!』
『ちなみに、某漫画で有名になったせいでそれが有名になっていますが、本来は見えなかったら寿命が近いとされています』
『そうなの!?』
そうらしい。だから見えていたらまだ安心、ということだね。
「いや……。あのな、リタ。それ、ただの視力の問題だから。年を取ると視力が悪くなるから見えにくくなる、つまり死期が近い、てな感じだ」
「そうなんだ」
じゃあ、私たちなら見えて当然だね。私も師匠も、視力はかなりいい方だから。魔法の研究をしていても、やっぱり森暮らし。野生で生きるためには視力は大事。
「野生児じゃない」
「どうした急に」
『マジでいきなりどうしたんだw』
気にしないでほしい。言っておきたかっただけ。
のんびり星を眺めていたら、師匠に頭を撫でられた。師匠を見る。なんだか懐かしそうに目を細めていた。
「どうしたの?」
「いや……。昔は、こうしてよく一緒に寝ていたなって」
「ん……。師匠にくっついて寝るとあったかかった」
「はは。あの頃のリタは結構な甘えんぼだったな」
「昔の話」
「俺にとってはまだ最近だよ」
まだもっとちっちゃかった時のことだ。六歳ぐらいの時までは師匠と一緒のベッドで眠っていた。師匠と一緒にいると安心できて、あったかくて、幸せだった。
『リタちゃんにもそんな頃があったんだなあ』
『当たり前だろ、生後間もなく捨てられたんだぞ』
『その事実は忘れようとしてたんだからやめろ!』
『本人が捨てられて良かったとすら思ってるだろうから気にしなくてもいいと思う』
うん。捨てられてなかったら、師匠とも精霊様とも会えてなかっただろうから、私はこれでよかったと思うよ。やることもちゃんとやっておいたし、ね。
「さ。そろそろ寝るか」
「ん」
師匠も寝袋に入る。明かりも消して、あとは配信も……。
『たまにはこう寝顔配信をですね……』
『配信つけっぱなしでもいいんですよ?』
「ええ……。寝るだけだよ? 何がいいの?」
『それがいいんだよ!』
『是非是非!』
意味が分からない。師匠を見ると、苦笑いしていたけど別に止めはしなかった。それぐらいなら大丈夫、と思ってるみたい。私も、それぐらいならいい、かな?
「わかった。今回だけだよ。配信続けておくから、眠い人はちゃんと寝てね」
『ありがとー!』
『マジか言ってみるもんだな』
みんな喜ぶ意味がちょっと分からないけど……。まあ、うん。これぐらいなら、ね。
『ちなみに防犯は大丈夫?』
「ん……。結界張ってある。世菜さんたちのテントにも張っておいたから安心安全」
『いつの間にw』
あんなことの後だから、何かあるかもしれない。何もないとは思うけど、ね。
それじゃあ、そろそろ……。おやすみなさい。
壁|w・)ちょっと昔を思い出しながら。
ちっちゃいリタは師匠の後ろをとてとて歩いてついていく子でした。





