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中ノ倉峠


『そこで一番景色がいいと言えば、やっぱり中ノ倉峠だと思う』

『キャンプ場で受付した建物の側から行けるよ』


 その言葉に従って、まずは受付の方に戻る。転移してもいいけど、せっかくだから歩いていこう。林を抜けて、林の中のキャンプ場も抜ける。


「ここでもテントが張れるんだね」


『湖からの景色を直接は見れないけど、キャンプだけが目的ならそっちの方がテントを張りやすい』

『ぶっちゃけ景色もちょっと歩けば見に行ける』

『そっちの方がトイレとかが近くて俺は好き』


 便利なのはこっち、なんだね。もう師匠とテントを張ってあるから、移動しようとは思わないけど。それに、あの場所も湖が見れていい場所だと思う。

 時折手を振ってくる人に手を振り返しながら、道沿いに歩いて受付の建物まで戻ってきた。この側に山を登る道があるらしい。

 さすがにちょっと飛んで確認しよう。んー……。


「あった」


『初めて見たけど、なんか自然とできあがった道、みたいな雰囲気だ』

『階段はちゃんとあるけど、これはなかなか』

『迷子にならないように注意な!』


 もしも迷子になったとしても、空を飛べばいいし、転移してもいい。私は大丈夫。問題ない。

 見つけた道を歩いて行く。本当に、森の中にある道という感じ。明かりもないみたいだから、夜に来たら本当に迷子になるかもしれない。

 でもこういう雰囲気、私はとっても好きだ。やっぱり私は森の中が一番好き。道も人の手は入ってるけど、コンクリートとかを使ってるわけじゃない。


『なんだかリタちゃん、機嫌よさげ』

『やっぱり森の中は落ち着くんかね』

『野生児だしな!』


 こんなことで野生児判定はしてほしくない。森が好き。ただそれだけ。それだけだってば。

 のんびり山を登っていくと、木に直接打ち付けたような看板が見えてきた。中ノ倉峠は……こっち、だね。

 さらに少し歩くと、すぐにそれが見えた。


「おー……」


 広く見える湖に、とっても大きな山。富士山。これは、うん。すごくいい景色だと思う。

 精霊の森は大きな木はたくさんあるけど、大きな山はない。だから、こうした山がよく見える景色というのはなんだかとっても新鮮だ。

 あと、見やすいように段差とかも作ってくれてる。視聴者さんが言うには、カメラを固定できる道具が使いやすくなるみたい。私はそもそもカメラを持ってないけど。


「スマホで写真撮れるんだっけ?」


『撮れるぞ』

『カメラモードがあるはず』


 カメラモード……。どれかな。スマホを起動させて……えっと……。


『もたもたぱーとつー』

『パート2どころじゃないと思うがw』

『リタちゃん、そのカメラのマークだよ』


 カメラのマーク。これかな。あ、画面が切り替わった。向けた先を映してる。これで、湖に向けて、ボタンを押す。パシャリ、という軽い音が鳴った。

 再生はこれ、かな? あ、ちゃんと撮れてる。師匠にも見せてみよう。


「ありがとう。撮れた」

『いえいえ』

『無事に撮れてよかった』

『これで旅の記録がはかどるな!』


 旅の記録。んー……。料理の写真でも撮る? そういう写真を見たい人もいるかもしれないし。いやでも、配信されてるし、気にしなくてもいいかな? そもそも食べるのを優先したい。


「気が向いたら、で」


『それで十分だと思う』

『鼻より団子だからなリタちゃんは』

『誤字のはずなのにあながち間違ってない気がするw』

『匂いより味だってかw』


 食べ物は香りも大事だよ。例えすごく美味しくても、香りが悪かったら魅力は半減以下だと思う。そもそも臭いのに美味しいっていう料理がほとんどないと思うけど。

 湖の写真も撮れたし、満足。師匠のところに戻ろう。転移、と。


「ただいま」

「ああ、おかえり。綺麗に撮れたか?」

「ん」

「…………。リタが……スマホを使いこなしている、だと……!?」


『こらwww』

『言いたいことは分かるけどw』

『使いこなしてたんかな、あれは』


 みんなひどいと思う。スマホは必要最低限使えたらそれでいい。

 私がちょっと怒ってるのが分かったのか、師匠は笑いながら頭を撫でてきた。


「冗談だよ。どんな写真だ?」

「ん」

「お、結構綺麗に撮れてるな。精霊様にも見せてやろう」

「多分配信で見てる」

「それは……そうだろうな……」


 精霊様はあまりコメントしてくれないけど、結構見てくれてるのは知ってるから。本当に忙しい時はあまり見てないと思うけど。


「そうそう。リタ。ちょっと要望が入ってな」

「ん?」

「ちょっと、湖の中心……は、見えにくいか。まあ適当な位置に立ってくれ」


 よく分からないけど、それぐらいなら。てくてく歩いて、湖の上へ。そのまま湖の上を歩いていく。中心は遠すぎるらしいから、ほどほどで。この辺り、かな?

 振り返ると、たくさんの人がカメラを構えていた。なんだかすごく写真を撮られてる。


『なにこの撮影会羨ましすぎるんですが!?』

『テメエコウタずるいぞコノヤロウ俺も撮りたい!』


 んー……。ポーズ、とか、いる? ちょっと杖を掲げてみる。わ、なんだかカメラの方がすごく光り始めた。あれはあれで綺麗かもしれない。

 しばらく立って、飽きてきたから戻る。これでいいのかなと師匠を見たら、十分だと頷いていた。


「なんだったの?」

「いや、カレーの具材にしてくれって結構いい材料をみんなからもらったんだ。その代わりに、今のをやってほしいと頼まれて」

「カレーの具材。仕方ない」

「そう。仕方ないんだ」


『つまりカレーの具材で買収されたわけかw』

『リタちゃんのことをよく分かってる視聴者だとみたw』


 今のでカレーが豪華になるなら、もっとやってもいいと思えるよ。

 ともかく。そう、カレー。そろそろいい時間だ。師匠を見ると、スマホで時計を見て、よしと頷いた。


「じゃあ、やるか」

「ん」


 カレー作り。がんばろう。


壁|w・)カレー作りのお時間です!


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― 新着の感想 ―
 いろいろなグザイが集まった、これはリンゴこれは鶏肉これはチョコレートこれは・・・サバ缶?これは缶詰カレー・・・、闇鍋風カレーもきっと美味しくなるはず!
カレーは辛口が好きだけど、たまに甘口が食べたくなるのは、自分だけだろうか?
野生児リタ いや、カレー児リタちゃんなのだぁ! 親の顔よりもカレーを知る魔女なんだよ! 精霊様もリタちゃんに感化されて ぐーたらしているはず。
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