おためしてんと
「入っていい?」
「ああ。いいぞ」
「どうぞどうぞ」
じゃあ、遠慮なく。靴を脱いで入ってみる。
おー……。なんだかすごく不思議な感じ。なんだろう。お家とはまた違った雰囲気だ。試しに横になってみたら、これもなかなか……。
「眩しい」
『ですよねw』
『まだ日が高い上に、天井がメッシュ仕様だからなw』
『まだテントにこもるのは早いと思うんだ』
それもそうだね。まだ外でいろいろできると思う。
テントから出て、改めて手伝ってくれた三人にお礼を言う。すると三人はちょっと照れくさそうにしながらも笑っていた。
「たき火とかはします? やり方分かりますか?」
「適当に木を組んで魔法で燃やす」
「力業が過ぎる……!」
『燃えやすい枝からとか何も考えてなくて笑うわ』
『なんなら枝とかすら必要なさそうw』
『森での料理も普通に魔法で焼いてるもんなあ』
後片付けとか考えると、わざわざ枝を使う必要もないと思うから。今日も火とかは魔法で……。
「あー……。そうだな。君たちが嫌じゃなかったら、手伝ってもらってもいいか?」
師匠がそんなことを言い出した。
『シッショ!?』
『ナンパがお前!?』
『変態だー!』
「あ、このコメントは無視していいから」
『ひどいw』
『もっと相手してくれよお!』
コメントはある程度無視した方がいいのは私も同意見だ。仕方ないよね。
でも、師匠の意図が分からない。ずっと迷惑かけるのも悪いと思うし、そんな不便なことをする必要も分からないし。どうしてだろう。
「いいか、リタ」
「ん」
「キャンプは、不便を楽しむものだ!」
「おー……!」
「と、アウトドアの店の人が言っていた!」
「おー……」
『いいこと言うやん、と思ったら、ただの受け売りかよw』
『リタちゃんのテンションの上がり下がりがw』
まあ、うん。そもそもキャンプは師匠も初めてなわけだから、キャンプの楽しみをそんなに理解しているはずがないと思う。受け売りなのは気付くべきだったかも。
でも言っていることは間違ってないみたいで、世菜さんたちも苦笑いしながら頷いていた。そういうもの、らしい。
「例えばご飯を炊くのも、飯ごうで作るとまたちょっと違った雰囲気になるし、お焦げとかもついてそれはそれで美味しいですよ」
「おこげ……」
ちょっと焦げたお米、なのかな。本当にそんなのが美味しいの?
師匠を見る。にやりと笑って、アイテムボックスから何かを取り出した。
「買ってあるぞ、飯ごう。もちろん、米もだ。カレーもある」
「おー!」
おこげのごはんでカレー。とっても楽しみ。
でも晩ご飯にはまだちょっと早い、かな? 時間は……。スマホを見てみたら、もうすぐ午後四時、ぐらい。あ、でも、作るのに時間がかかるかな?
「五時ぐらいから作り始めましょう。是非とも景色とか楽しんでください」
「それぐらいに手伝いに来るから!」
そう言って、世菜さんたちは自分たちのテントに戻っていった。晩ご飯、手伝ってくれるみたい。とてもいい人たちだ。
『リタちゃんと一緒にキャンプご飯とか羨ましすぎるんですが』
『ぐへへ……俺も今からそっちに行ってもいいっすかね……』
『ダメに決まってんだろふざけんな』
せっかくだし、ちょっとお散歩に行こう。キャンプ場ってどんな感じなのか、ちょっと見てみたい。師匠に言うと、行ってこい、と送り出された。師匠はここでのんびり読書でもするらしい。
「スマホの電子書籍、最高だよな。読みたかったラノベの続きがたくさん出てるんだよ」
『こいつリタちゃん以上に地球を満喫してないか?』
『気持ちは分からんでもない』
『アニメとかもいいぞ!』
師匠がアイテムボックスから椅子を取り出して、そこに座った。普通の椅子と違って、椅子も背もたれもなんだか柔らかそうな素材になってる。ハイチェア、という種類らしい。
ちょっと気になる。座ってみたい。むむ……。
「リタ、夜でも座れるからな……?」
「ん。それもそう」
そうだった。むしろ日が沈むと暗くなって景色が見えづらくなっちゃうかもしれない。見て回るなら今のうち、だね。
それじゃあ、軽く周りを見ていこう。
てくてく歩いて、最初は湖に近づいてみる。よく晴れてるからか、遠くの山がよく見えるね。あの大きいのが富士山かな?
『相変わらずここはいい景色』
『ちょっと前の千円札に描かれてる富士山のモデル、だっけ』
『正確にはもうちょっと高い場所じゃなかったっけ?』
『確かそこにも行けるようになってるはず』
そうなんだ。後で行こうかな。
壁|w・)サブタイトル思い浮かばなかったよ……!
ちょっと短めですが、もうちょっと長いときりが悪くなるので……。
次は、のんびり散策します。





