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上級妃さんとばんごはん


 他の二人の上級妃にも会ったけど、こっちはあまり歓迎されなかった。ついてこられることもなかったし、部屋をぐるっと見てきただけ。調度品とかの違いはあったけど、構造は同じだった。

 一通り見て回った後は、一度マーヴェルさんに会いに行った。


「全部見た」

「はい。何か分かりましたか?」

「んーん。でも何か魔法が使われたら、すぐに分かる」

「それは……。そう、ですか」


 あれ? なんだか、物憂げというか、悩ましげな表情だ。捕まえられるのは時間の問題だから、多分一週間もせずに終わると思うんだけど。


『魔法が使われる、ということは最低でももう一人は犠牲者が出るって思ってるんじゃないかな』

『マーヴェルさん、結界のこと知らんだろ?』


 なるほど。言われてみればそうだ。それじゃあ、伝えて……。


『でも伝えない方がいいかも』


 あれ?


『もし犯人に伝わったら、リタちゃんがいなくなるまで魔法を使わなくなるんじゃないかな』

『リタちゃんがいなくなってから再開とかありそう』

『マーヴェルさんが犯人、なんて可能性もあるわけだし』


 さすがにマーヴェルさんは違うと思うけど……。でも、そうだね。犯人と知らずに伝えてしまう、ということはあるかもしれない。だったら言わない方がいいかも。


「上級妃は必ず守るよ」


 とりあえずそれでごまかしておく。マーヴェルさんもとりあえずは納得してくれたみたいで、頷いてくれた。


「ありがとうございます。それでは、魔女様の宿泊場所ですが、上級妃の護衛も考えると近くがいいでしょう」

「ん……。どっちでもいい」

「え? あ、ですけれど、その……。カカス様から、是非にと……」

「カカス様?」

「魔女様からみかんもどきをいただいたと聞いています」


 ああ、最初に会った上級妃の人だね。カカスさんっていうんだ。そういえば名前を聞いてなかった。

 そのカカスさんが泊まりに来ないかって言ってくれてるみたい。んー……。私は別にいいけど、もし礼儀作法とか言われ始めたらちょっと面倒……。


「夕食もカカス様と同じものをご用意する、とのことです」

「行く」

「あ、はい」


『知ってた』

『もうちょっと考える素振りをですね……』

『夕食に誘われてリタちゃんが断るわけないだろうが!』


 いや、そんなことはない。そんなことはない、はず。ないってば。

 マーヴェルさんの部屋から出て、カカスさんのお家に向かう。もう夜も近いからか、メイドさんたちは少しゆっくりし始めてる……けど、まだまだ忙しそう。みんなの晩ご飯の準備もあるだろうしね。大変だ。

 カカスさんのお家の前に来たら、兵士さんは今度はすぐに通してくれた。


「おお、よく来たな」


 そしてカカスさんが嬉しそうに出迎えてくれた。


「ん。来た」

「もうすぐ夕食の時間だ。こっちに来るといい」

「ん」


 カカスさんに案内されたのは、少し狭い食堂みたいな部屋。貴族の屋敷と思うと狭いけど、ここで食べるのは最大でも二名とのこと。カカスさんと、たまに来る王様。それだけ。


「まずは毒味があるから、少し待ってもらう必要があるが……」

「毒味、大丈夫。魔法で調べられる」

「もちろん分かっているが、念のために必要なんだ」

「えー」

「ははは。まあ我慢してくれ」


 必要ないと思うんだけどね。毒を食べてしまったとしても、私ならどうとでもできるし。

 食堂のテーブルに料理が並べられていく。大きな鳥の丸焼き。琥珀色のスープ。新鮮な野菜を使ったサラダ。それにお魚をじっくり焼いて香草を振りかけたもの。他にも細かいものがいくつか。


「おー……。なんだかすごく多い」

「ああ。二人分だからね。多めに作ってもらったんだ。おい」


 カカスさんが後ろに向かって呼びかけると、ローブを着た魔法使いさんが前に出てきた。そうして杖を掲げて、料理に魔法をかける。毒があるかを調べる魔法だね。


『毒を調べる魔法って万能なん?』

『教えてシッショ!』

『誰がシッショだ。かなり不便な魔法だよ。自分が知ってる毒になるものを全部術式にぶち込まないといけないからな。俺やリタならともかく、一般の魔法使いだと術式の構成も含めたら限られたものになるんじゃないかな』

『こいつさらっと自分がすごい側だって言ったぞw』


 師匠はすごいから当然だ。師匠はとってもすごいのだ。ふふん。

 この人が調べられるものには限りがあるから、毒味もやっぱり必要ってことだね。じゃあ私もさっと調べておこう。さっと……。うん。大丈夫。何も入ってない。

 全種類の毒味がされたところで、改めてごはん。メイドさんがお肉とかを切り分けてくれた。それじゃあ、まずはお肉から。


「んー……。おー……。とってもやわらか。しっかりと調味料がきいてる。美味しい」


『おー!』

『異世界側にしてはわりと高評価!』

『さすが金持ちの料理やで!』


 上級妃ともなると違うってことだね。

 お魚もほくほくで、ちょっと塩味がきついけどこれも美味しい。スープもあっさりとしているように見えて、しっかり味がある。美味しい。サラダは、うん。サラダです。

 あとは、パンも出してくれた。ふわふわの白いパンだ。日本のパンに比べるとさすがに劣るけど、それでもこの世界で食べたパンだと一番かもしれない。


「うん。美味しい」

「ははは。そうだろうそうだろう。家から連れてきた料理人だからね。自慢なんだ」

「おー……」


 やっぱり美味しいものにはこだわりたいよね。とても分かる。

 カカスさんとおしゃべりをしながら、ご飯を食べていく。

 カカスさんはちょっと遠い国の出身らしくて、そこの公爵家のご令嬢らしい。正妃になることができなければ戻ってこいと言われてるらしいけど、カカスさんは戻るつもりはないとのことだ。

 その時は飯屋でもするさ、と笑っていた。なんだかご令嬢のイメージとは違うけど、とても気さくでいい人だね。

 そうして、ご飯を食べ終わった後。お客様が来た。


壁|w・)新コーナー『教えてシッショ!』

説明がとても苦手な魔女の代わりに説明が苦手な師匠が魔法の説明をがんばるコーナー。

なお二回目はない。


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― 新着の感想 ―
なんてことだ!!一回で打ち切りだなんて
あとがき読んで「おおー!」からの2回目は無いでガーン
毒を調べる魔法とか知識依存で知的に見せかけて、物凄い力業な魔法だった。
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