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マーヴェルさん


 馬車から降りるように声をかけてくれたのは、メイドさん。そのメイドさんが案内してくれるみたい。兵士さんはすでにいなくて、なんでも後宮は女の人しか入れないのだとか。

 兵士さん……女性の兵士さんは一応いるみたいだけど、そこまで数は多くないみたいだね。

 少し離れた建物まで歩いていく。これも二階建ての建物だけど、さっきの大きな建物よりはちょっと小さい。メイドさんが言うには、ここで働く人たちが寝泊まりする家、らしい。


『後宮って聞いたから中華風かと思ってた』

『西洋風って言えばいいのかね』

『いやあ……。メイドさんいっぱい! 眼福ですな!』

『やばい奴がおるw』


 あまり変な目で見ちゃだめだよ?

 案内されたのは、二階の部屋。後宮全般を管理する大臣さんが住む部屋。


『変な大臣がある……!』

『異世界だしなー。こっちとまるっきり同じってわけでもなし』


 日本だとまた違ったりするのかな?

 メイドさんがノックをして、どうぞ、という声がしてから中に入った。


「失礼します」


 中は、ちょっと豪華な部屋。装飾のある本棚とかがいっぱい。テーブルや椅子、ソファもあって、ソファはすごくふかふかしてそう。

 奥にはデスクがあって、動きやすそうな服を着た女の人がいた。初老の女の人で、柔和な笑顔を浮かべてる。この人が責任者、なのかな?


「あなたが依頼を受けてくれた魔女様、ですね?」

「ん。隠遁の魔女。よろしく」

「ええ、よろしくお願い致します。そこの者、下がりなさい」


 責任者さんが言うと、メイドさんが部屋を出ていく。ドアが完全に閉まってから、責任者さんにソファを手で示された。

 座ってみる。おお、ふかふかだ。これはきっととっても高いソファ。お金はまだあるはずだし、これと同じソファを買ってみようかな……。いや、でもソファを買うなら、日本で買った方がいいソファがある気がする。むむむ……。


「あの……。魔女様? 難しい顔をしていますが、何かありましたか?」

「なんでもないです」


『嘘だぞ。絶対に余計なことを考えてたぞ』

『例えば、このソファが欲しいな、とか!』

『でも日本で買った方がいいのでは、とか!』


 なんで分かるの? ちょっと気持ち悪いよ。

 責任者さんは首を傾げていたけど、やがて私の対面のソファに座った。


「改めて……。依頼を受けていただき、ありがとうございます。この後宮の管理をしております、マーヴェルと申します」

「ん」

「では早速ですが、依頼の詳細を……。現在、この後宮でメイドや妃候補を狙う者がいます」


 マーヴェルさんが言うには、一年前から怪しいことが起こるようになったらしい。最初は動物や鳥の死骸が窓や部屋の前に置かれている、とかだったけど、いつからか直接狙うようになったみたいで、魔法で攻撃とか食べ物に毒とかあったみたい。

 でもそれでも、本当に殺すようなことはなかったみたいだけど……。


「犯人を捕らえるために、ギルドで依頼して魔法使いの女性に来てもらったのですが……」

「うん」

「それがその者の逆鱗に触れてしまったのでしょう」


 依頼を受けた冒険者さんが殺され、そこからは何人か、メイドも妃候補も殺されてしまっているらしい。

 なんだかとっても危ない話だ。あと、ちょっと面倒そう。後宮っていうのを見たかったから来たけど、関わり合いにならない方が良かったかもしれない。

 でもまあ……。来たからには、やろうと思う。


「私はその犯人を捕まえたらいいの?」

「はい。加えて、捕まえるまでの間、護衛をお願いできればと」

「んー……」


 護衛。みんなの、だよね。妃候補とかいうのと、メイドさんたちと……。


『いくらなんでも数が多すぎるのでは?』

『誰か一人でも襲われて怪我とかしたら責任とか言われそう』

『リタちゃん、もうやめておいたら?』


 責任とか、言われるのかな。確かにそれはちょっと嫌だけど……。


「ああ、護衛の対象ですが、上級妃だけで構いません」

「ん……? そうなの?」

「はい。陛下にとって重要なのは、彼女たちだけなので」


 なんだか、私としてはあまりおもしろくない内容だけど……。国という大きな組織からすると、そういうものなのかな。

 でもなんだか、お気に入りが大事で、他は見捨てろとか言われてるみたいで……嫌だ。いや、言われてるみたいじゃなくて、言われてるのかな、これ。

 うん……。よし。


「わかった」

「よろしくお願い致します」


 うん。もう、とりあえず手当たり次第に結界をかけておいた。多分犯人にもかけられたと思うけど、とりあえずはいいとしよう。誰も死なないことが最優先。


『さっきの間にリタちゃんが何かしたと思う人ー!』

『はーい!』

『絶対しれっと結界をかけてるぞこれw』


 その通りだから言わなくていいよ。正直他人なんてどうでもいいと言えばいいんだけど、この国の王様の考え方はちょっと嫌い。それだけ。


「滞在中はこの建物に部屋を用意させます。ご自由にお使いください」

「ん」

「また、こちらをお持ちください」


 そう言って渡されたのは、紋章入りの木札。ちょっとした魔法がかけられていて、魔法使いでもないと複製は難しそう。マーヴェルさんが言うには、これを見せれば後宮内に限り、どこでも入れるらしい。

 それこそ、上級妃の私室でも。犯人の確保が最優先だってことだね。


「ありがとう」

「いえ。よろしくお願い致します。何か聞いておきたいことはありますか?」

「炊事場ってどこ?」

「は?」


『リタちゃんwww』

『いきなり炊事場の場所を聞くやつがあるかw』

『マーヴェルさん困惑しとるやないかいw』


 いや、だって、ご飯が気になるから……。

 マーヴェルさんは戸惑いながらも、炊事場の場所を教えてくれた。こことはまた違う建物、だね。それじゃあ、早速行ってみよう。

 大丈夫。お仕事だよ。お仕事。お仕事だってば。


壁|w・)まずは炊事場の確認。とっても大事なこと。


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