表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
344/484

動物園カレー


 夜。師匠が世界樹を見てつぶやいた。


「なんだこれ……」

「何か文句がありますか!?」


 精霊様が私の頭の上で叫んでる。ケンカはだめだよ?

 世界樹にはぬいぐるみがいっぱい。ぬいぐるみだらけ。もふもふがいっぱい。持ってきた私が言うのもなんだけど、なんだかすごいことになってると思う。

 私がぬいぐるみを見せた時、精霊様もさすがに頬を引きつらせていたから。私もさすがに買いすぎたと思う。アイテムボックスに入れておこうかなと思ったんだけど、精霊様が世界樹に飾りだしたから見守っておいた。その結果です。


『世界樹(笑)』

『むしろぬいぐるみの木では?』 

『バカヤロウ! 世界樹は成長するとぬいぐるみを実らせるんだよ!』

『怖いわそんな世界樹w』


 世界樹の見た目は木だけど、実際は魔力を生み出すこの世界のシステムだ。別に木の実ができるわけじゃないから、木の実のかわりにぬいぐるみというのも違う、はず。いや冗談だっていうのは分かってるけど。


「リタが買ってきてくれたんですよ!? それ以上の理由がいりますか!」

「なあ、精霊様。俺がいない間にリタを溺愛しすぎじゃないか……?」

「あなたが急にこの世界からいなくなったからですが?」

「あ、はい。その節は申し訳なく……」


『もはや定番のやり取り』

『どうしてコウタは自分から弱点の方へと向かうの? バカなの?』

『バカだよ』


「バカで悪かったな……!」


 私も精霊様も、本気で怒ってるわけじゃないけどね。師匠も被害者だから。だから、あまり引っ張るのもだめだと思う。

 精霊様を上目遣いで見る。さっと視線を逸らされた。


「ところで精霊様」

「なんですか?」

「なんでリタを抱きしめてんの?」

「なんとなく?」


 精霊様から後ろから抱きしめられてる形。私は嫌じゃないからそのまま。なんだか幸せ。

 でも、師匠も来たし、そろそろ晩ご飯にしよう。もぞもぞ動くと精霊様がはなしてくれた。カレーを温めよう。


「師匠。今日はカレー」

「ああ、うん。レトルトか? パッケージに書いてないみたいだけど……」

「ん。試作品。真美のカレー」

「おお……。なんというか、こう、特権だな」

「ん」


 師匠と精霊様の分のカレーを温めて、お皿に盛って渡してあげる。私は動物園カレーだ。エゾシカのお肉が入ってるカレーだね。どんなカレーか楽しみ。


「なんか、ご飯を食べてるのをぬいぐるみに見られてる気分だ……」

「私が言うのもなんですが、不気味ですね……」


『飾った本人が言うのか』

『不気味も何も、あなた自身が霊的な存在ですが?』


 精霊様は幽霊とは違うから同じ扱いにしたら失礼だよ。

 動物園カレーも温め終わった。お皿にご飯を入れて、カレーを入れて……。完成。

 動物園カレーはちょっと濃いめだね。ぱくりと食べてみると、ちょっと控えめの辛さだった。中辛って書いてるけど、甘口と中辛の間ぐらいかも。もうちょっと辛い方が好みだけど、悪くないと思う。

 お肉は小さいお肉がいっぱい入ってる感じだね。大きいお肉がごろごろ入っているのも好きだけど、こういうのもいいかも。お肉とご飯を一緒に食べられるし。

 うん。美味しい。これはいいもの。


「んふー」


『動物園カレーうまそうやな』

『通販は!? 通販はまだありますか!?』

『残念だったな! 売れ切れてるぞ!』

『ですよねー!』


 美味しいからね。売り切れるのも仕方ないと思う。

 もう一個動物園カレーを食べる。師匠と精霊様も食べたけど、美味しいって言ってた。やっぱりこれはいいもの。


「カレーはやっぱりいいもの」

「本当にカレー好きになったなあ……」

「ん。師匠のなまご……カレーもまた食べたい」

「今生ゴミって言おうとしただろ? なあ?」

「むうううう」


 師匠が顔をわしづかみにしてきた。ちょっと痛い。やめてほしい。はなしてほしい。冗談だから。本当だよ。本当に冗談だよ。師匠のカレーも美味しかったよ。


「でも日本のカレーと比べるとどうしても……」

「大丈夫だ、俺のカレーは生ゴミだって自覚してるから」

「じゃあなんでわしづかみにするの……?」

「様式美」

「ようしきび」


『さすが様式美で箒に乗ることを教えたお師匠さんだぜ!』

『空を飛ぶ時は箒に乗るのが様式美、だったっけ』

『あったなあ、そんな話w』


「え、今もやってんのか、リタ」

「ん」

「お、おう……。とっくにやめてると思ったよ……」


 でもあれはあれで楽しいよ。乗り物に乗ってる気分だから。

 カレーは三杯ほど食べた。とても美味しかったです。満足。




 お家に戻って、自分の部屋。とりあえずぬいぐるみを飾っておく。さすがに全部は邪魔になるから、レッサーパンダのぬいぐるみを枕元に。たまに取り替えたりすればいいかな。

 ベッドに座って、ぬいぐるみを抱いてみる。うん。ふわふわで抱き心地がすごくいい。今日はこのまま、抱いたまま寝てみようかな。

 真美が結構そういうことをしてるらしい。落ち着くんだって。動物の大きなぬいぐるみを抱き枕にしてみるのもいいのだとか。

 大きいぬいぐるみも買っておいたし、いつかはそれも試してみたい。ぬいぐるみはとてもいいものだから。

 とりあえず、ベッドに横になってぬいぐるみを抱いておく。気持ち良く眠れそう。


 今日も日本への旅行は楽しかった。動物園は日本のあちこちにあるらしいから、また別の動物園に行くのも悪くないかな。考えておこう。

 でもとりあえず……。次は、久しぶりにギルドに行こうと思う。たまには冒険者として活動した方がいいかもいれないから。ミレーユさんとも会いたいし。

 そんなことを考えながら、目を閉じた。もふもふ……。


壁|w・)動物園編、終了。次回から異世界側、ちょっとギルドに行きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今も箒になるのをやめてないのは 多分、リタちゃんに取ってコウタは 外を知る唯一の存在であり 自分のことを気にかけてくれる 二人目の存在だったからなんだろうな まっ作者がそこまで考えてるかは知…
[良い点] 続きありがたい [気になる点] エピローグのあとも続いてること [一言] もうエピローグ撤回しちまえw みんな作品の継続を望んでます
[気になる点] 世界樹 魔力を生み出すからそのうちぬいぐるみに魔力宿って自我持ったりしないかな 具体的には玩具物語みたいに誰も見てない時に動き出したりとか [一言] なまごはんって言おうとしたんだよ(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ