ぬいぐるみの大行列
ふみさんと一緒にお土産のお店にきた。ここにぬいぐるみが売ってるらしい。らしい、というより、売ってる。外の窓から見えるだけでもぬいぐるみがたくさんだ。
「ここ、です」
「おー……」
ふみさんと一緒に店内に入った。そうして出迎えてくれたのは、ぬいぐるみの山。ぬいぐるみがいっぱいだ。たくさんの動物がいるだけあって、それらのぬいぐるみがほとんどあると思う。
「わあ……」
近くのぬいぐるみを手に取ってみる。ペンギン。一番人気だって。すごく大きなぬいぐるみだ。抱いてみるともふもふしてる。柔らかい。これはとてもいいもの。買おう。
「真美。真美。全種類買っていく」
『待って!? 本当に待って! そんなに買われても部屋に置けない!』
『そりゃそうだw』
『リタちゃん、一般人にはアイテムボックスとかないからな?』
『真美ちゃんの部屋がぬいぐるみであふれて寝れなくなるぞ』
それは……だめだね。じゃあ、真美とちいちゃんに一個ずつにしておこう。あとは、私と精霊様のものを買う。師匠はさすがにいらないと思う。精霊様のぬいぐるみで呆れてたぐらいだし。
とりあえずペンギンの大きいぬいぐるみを二体浮かせて、他のものを見ていこう。
店内を歩くと、思っていた以上にたくさんのぬいぐるみがあった。ペンギンの他にも、アザラシやカピバラ、レッサーパンダのぬいぐるみもある。どれもすごくかわいい。
とりあえず、普通のサイズのものを全種類。真美とちいちゃんにはレッサーパンダを買っていこう。ここで見た中で一番かわいかったから。
他にも何かないかな。見て回ろう。
「わあ……」
歩いていると、ふみさんが小さな声を上げた。振り返って見てみると、私の後ろを見てる。私の後ろを、たくさんのぬいぐるみを。
『ぬいぐるみの大行列や』
『もふもふ夜行』
『真っ昼間ですが?』
言われてみると、すごい量になってると思う。さすがに邪魔かもしれないけど、一時的にでもアイテムボックスに入れるのはだめだと思う。まだお会計してないからね。そこはちゃんとしておきたい。でも早めにレジに行かないとだめかな。
そう思ってレジを探そうとしたところで、ふみさんが声をかけてきた。
「あの……リタちゃん」
「ん?」
「是非とも……お勧めしたいものが……」
「なに?」
ふみさんのおすすめ。ここまでの案内もすごく丁寧だったから、期待できると思う。
ふみさんについて行って、案内されたのは食品が売っているスペース。そこに、それは目立つように置かれてあった。
その名も、動物園カレー。そう、カレーだ!
「カレー……!」
「はい……! リタちゃんなら、気に入るかなって……」
「いい。とてもいいもの。ふみさんありがとう」
「い、いえ……」
『ここにきて一番の反応w』
『もうこの子カレーを渡しておけば満足するんじゃないかな』
『確かにw』
さすがにカレーだけで満足は……しない、はず。多分。
このカレーはエゾシカという動物のお肉を使ってるらしい。シカ、だね。最近はシカが増えすぎてるみたいで、山の植物をたくさん食べてしまってるのだとか。それを防ぐために毎年たくさんのシカが駆除されてるとか、なんとか……。そういうのが書かれてる。
「でも私には関係ない。私は美味しいカレーが食べられればそれでいい」
『おいwww』
『まあ日本の環境とかリタちゃんにとってはそこまで重要じゃないだろうけどw』
動物園カレーももちろん買っていこう。とりあえず十個。それじゃあ、お会計だ。
レジに行くと、店員さんがなんだか遠い目をしていた。スキャンって言えばいいのかな。大変だと思うけど頑張ってほしい。
「アイテムボックスに入れていっていい?」
「は、はい!」
許可をもらったので、スキャンしたものからアイテムボックスに入れていく。しばらくそれをしていると、ようやく私の後ろがすっきりした。最後にペンギンのぬいぐるみを入れて、終わり。
金額は、結構な額になってしまってる。今までで一番高い買い物かもしれない。
お買い物を終えて、外に出て。後は、帰るだけ、なんだけど。
「ふみさん」
「え? あ、はい!」
「美味しいラーメン屋さん、ある?」
旭川ラーメン、美味しいらしいからね。
ラーメン屋さんもふみさんに場所を教えてもらって、転移で移動。ちょっと奥まった場所にある、二階建てのラーメン屋さんだ。二階は居住スペース、らしい。
「ここがふみさんのおすすめ?」
「おすすめというか、ですね……。その……」
入れば分かる、ということで、入ってみた。
「いらっしゃい……、ふみ? おかえり」
「う、うん……。ただいま……」
カウンターの奥の店主さんらしい人がふみさんに言った。おかえりとただいま。つまりここは、ふみさんの家?
『ほーん。ラーメン屋さんの子か』
『つまり、合法的にリタちゃんを連れ込めるってこと!?』
『あながち間違いではないけど言い方よw』
ちょっと失礼な言い方だと思う。
「そっちは……ニュースで見たことあるな。魔女さんだっけ」
「ん。旭川の美味しいラーメンを食べにきた」
「はは。嬉しいねえ。ちょうど開店したばっかだからね、どこでも座ってくれ」
どこでもいい、ということなので、一番奥のカウンター席に。私がそこに座ると、ふみさんがメニューを持ってきてくれた。
種類は結構あるね。醤油とか味噌とか塩とか……。どれにすればいいのかな?
「ふみさん。どれがいいの?」
「旭川と言えば醤油ラーメン。特にお父さんはスープにこだわっていて、魚介と鶏ガラでしっかりと味を引き出したラーメンになってるの。もちろん味噌と塩も美味しいけど是非とも醤油を……」
「ふみさん……?」
「あ」
正気を取り戻したみたいにふみさんは固まって、メニュー表で顔を隠してしまった。恥ずかしかったみたい。でも、分かるよ。好きなことはたくさん語りたいよね。
じゃあ、うん。
「醤油ラーメンで」
「はい……」
消え入りそうな声で頷くと、ふみさんは店主さんに注文を伝えにいった。
『かわいい』
『きっと顔真っ赤だろうなあw』
『見てみたいw』
かわいそうだからやめてあげてほしい。
壁|w・)ぬいぬい。





