動物園のパン屋さん
入場券を買って、中に入る。ちょっと長い道を最初は歩くみたい。最初はどんな動物かな。
「あ、そうだ。名前、なに?」
学生さんの名前をまだ聞いてなかった。ちょっと呼びづらいから聞いておきたい。
「え、あ、その……。ふみ、です。漢字で文って書いて、ふみ……」
「ふみさん。よろしく」
「よ、よろしくお願いします……」
『ほーん。ええ名前やん』
『でももうちょっとはきはき喋ってほしいなあ』
『性格もあるだろうし変なこと言うな』
案内してくれるなら、私は特に何かを言うつもりはないよ。
最初に長い道を歩いて……歩いて……。あ。
「パン屋さんがある」
「あ……」
『あ』
『あーあ』
『先に食べ物を見つけちゃいましたか』
大きなソフトクリームの模型が目立つパン屋さんだ。動物園の中にある、ということは、入場券を買って入った人しか買えないのかな。ちょっと特別感があるかもしれない。
パン。食べたい。
「その……。寄る……?」
「ん」
「じゃあ……はい。行きましょう」
ということで、まずはパン屋さんだ。
パン屋さんに入ると、香ばしいパンの香り。食欲をそそられるね。ケースを見ると、たくさんのパンが並んでる。どれも美味しそう。でもそれより、気になるものがあった。
クッキー。動物クッキーだって。おもしろい。買いたい。
「クッキーください」
「はい、いらっしゃいま……」
店員さんが固まってしまった。いつものやつだね。ちょっと待つと、すぐに笑顔になった。
「はい。動物クッキーですね。どれになさいますか?」
「全部」
「ぜん……」
また固まってしまった。
「あ、あの……。他の人も……お土産に買うので……。ほどほどで……」
「ん……」
ふみさんに注意されてしまった。そっか。そうだね。買い占めると迷惑になるかも。いつかのコーヒー牛乳の時もそうだったのに、反省しないと。
『おお、ふみちゃんえらい』
『ちゃんと注意できるなんて……!』
『俺なら普通に流して見守ってそうw』
『わかるw』
気にせずに言ってくれていいんだけどね。特に変なことをしそうになったら、ちゃんと注意してくれた方がいい。
真美たちへのお土産、師匠と精霊様へのお土産、それに自分用に三セット買わせてもらった。あとは、パン。どれも美味しそうだから、全種類一個ずつ。
「ふみさんは? 何か食べる?」
「え、いえ……自分で……」
「じゃあメロンパンで」
「え」
『強制w』
『拒否権などないのだ!』
私だけ食べるのもちょっと嫌だから。
パン屋さんを出て、歩きながら食べる。パンは少し小さめだけど、さくさくしていてとても美味しい。クッキーも、さくさくしていて美味しい。見た目もかわいいし、いいお土産かも。
「美味しいね、これ」
「は、はい……。美味しい、です……」
ふみさんもちゃんと食べてる。よかったよかった。
『今更だけど、いまってお昼過ぎじゃん?』
『お、そうだな』
『ふみちゃん、お昼ご飯食べた後では? お腹減ってないのでは?』
『あ』
「あ」
言われてみれば、そうだ。私も師匠と回転寿司を食べたところだった。私はいくらでも食べられるけど、ふみさんはさすがに無理に決まってる。
ふみさんを見てみる。どことなく、苦しそうな気がするけど……。
「あ、いえ、あの……。大丈夫、ですよ……? お腹、減ってますから……」
「お昼ご飯食べてないの?」
「いえ、食べました……。でも八分目だったので……余裕、です……」
「それならいいけど……」
さすがに無理して食べてほしいわけじゃないから。うん。ちょっと悪いことをしてしまったかもしれない。帰りにどうせここを通るだろうし、その時にした方がよかったね。気をつけないと。
それはそれとして、パンはとても美味しい。結局全部食べてしまった。
「満足」
『いや食べ過ぎぃ!』
『信じられるかい? この子、寿司を百皿以上食べた後なんだぜ』
『太らないって本当に羨ましい』
魔力に変換してるだけ、だけどね。
よし。おやつも食べたし、次はちゃんと動物を見よう。
最初に入ったのは、広めの公園になってるような場所。たくさんの鳥を見れるらしい。なんだか自然がたっぷりの場所で、池とかもいっぱいある。その中にある細い道を歩いていく、みたいな感じだ。
歩きながら柵の向こう側を見てみると、たくさんの鳥がいた。ぺたぺたと歩いていく鳥や、池の上を浮かんでる鳥とかたくさんいる。どの子も小さくて、結構かわいい。
「おー……」
「かわいい、ですよね……。運が良ければ……たくさんのヒナも……見れるかも、です……」
「そうなの?」
「だいたい初夏……ぐらい、です……」
んー……。もうちょっと早く来ないといけなかったってことかな……? ちょっと残念だけど、また来年、来たらいいかな。その時の楽しみにしよう。
ぐるっと回って、次の場所に向かう。次はなにかな?
壁|w・)動物クッキーもぐもぐ。





