師匠と首相さん
壁|w・)後日談。ここから第二十九話のイメージ。
師匠が森に帰ってきてから、一週間ぐらい。レトルトカレーは全部食べ終えて、真美に評価シートも渡し済み。私はのんびりと森で過ごしてる。
師匠とのんびり。ちょっと甘えてみたり。
でも、そろそろ。そう、そろそろ。お出かけしようと思う。日本のご飯が恋しくなってきました。
「なので安価をします」
『リタちゃんおはようからのあんかあああああ!』
『なんで安価の時はいつも前振りないの?』
『安価の時だけじゃないだろうに』
『いつも挨拶しない時の方が多いからなw』
そんなことはない……と思う。多分。
『カレーの評価回はとても楽しかったですね』
『あれはある意味伝説だったw』
『一個ずつ食べてくれるのかと思ったら、いきなり全部食べたとか言われて評価ばーんだったからなw』
『メーカーの阿鼻叫喚っぷりが半端なかったよねw』
あれは……。うん。ちょっと反省してる。
時間をかけるのも悪いと思って、レトルトカレーは一気に食べた。それを全部配信してもみんなつまらないかなと思って、食べ終わって評価シートを全部書いてから、配信で公開した。
結果、真美に電話でちょっとだけ怒られた。師匠は爆笑していた。意味が分からない。
「あれは悲しい事件でした」
『全面的にリタちゃんが悪いんだけどな?』
『覚悟して待っていたメーカーさんの気持ちも考えて?』
「ん……」
私の感想なんて、そこまで意味はないと思うけどね。
それよりも、安価だ。早速みんなから聞いて……。そう思ったところで、スマホが震えた。なんだろう。
「むう……」
『おや、安価を待ち構えてたのになにかな?』
『スマホ? 誰かから連絡?』
「橋本さん」
『え』
メール、だね。んと……。よければ師匠を連れて来てほしい、だって。何かあるのかな。
でもとりあえず、安価は中止だ。また今度、だね。
「安価は中止。橋本さんに会ってくる」
『はあああああ!?』
『あのクソ首相がああああ!』
『ちょっとクレーム入れてくる!』
『戦争じゃあああ! 内乱じゃあああ!』
そんな意味のないことはやらない方がいいよ。
たくさん流れるコメントを無視して、お家を出る。師匠は確か釣りをしてるはず。川に向かって森を歩いて、すぐに師匠を見つけることができた。
「師匠」
「うん? リタか。どうした?」
「橋本さん……首相さんに呼ばれた。師匠に会いたいって。来て」
「…………。さらっと首相が出てくるのが慣れない……」
『草』
『気持ちは分からないでもないが、慣れろw』
『俺らも通った道だからな!』
別にそんな気にすることじゃないと思うんだけどね。
師匠が嫌なら断ろうと思ったけど、とりあえず一緒に来てくれるみたい。今更悪いことにはならないだろ、だって。何かあったらもう会わないようにすればいいだけだから、その通りだと思う。
そうして師匠と一緒に日本に転移。転移先はいつものホテルの最上階。師匠はその部屋を見て、おお、と感嘆のため息をついた。
「これはすごいな……。スイートルームってやつかな」
「師匠。このお菓子が美味しい」
「いやなんでそんな自然な流れでお菓子食べ始めてんの……?」
『それがリタちゃんクォリティです』
『安心しろコウタ。自由に食べていいって言われてるから』
『多分お前が思ってる以上に気を遣われてるからな!』
「俺は今から何の話をされるのか不安になってきたよ……」
気にしすぎても仕方ないと思う。
師匠と一緒にテーブルのチョコレートを食べていたら、部屋のドアがノックされた。そうして入ってきたのは、橋本さん。師匠を見て、顔を引き締めていた。
「初めまして、コウタさん。内閣総理大臣の橋本司です」
「ああ、どうも……。コウタ、です。うちの弟子がお世話になってるみたいで……」
「ははは。いえいえ。むしろこちらが無理を聞いていただいていて……」
なんというか……。大人の会話、みたいな感じだね。正直つまらないと思う。だから私はお菓子を食べる。もぐもぐ。
『リタちゃんwww』
『もうちょっと興味持ってあげてw』
『ほら! 大事な話を……してないな』
『してないんかいw』
してない、と思う。挨拶みたいなことをずっとしてる。暇なのかな。
半分ほど食べ終えたところで、ようやく本題に入ったみたいだった。師匠に何かを渡してる。スマホ、かな。私と色違いのスマホで、ある程度の額の電子マネーがすでにチャージされてるらしい。今後も定期的に自動チャージされるのだとか。
「いや、それはありがたいですが……。俺は何もしてませんよ?」
「いいのですよ。というより、リタさんが思っていたほど使わないので、貯まる一方でして……」
「はあ……」
そうなのかな。結構使ってると思ってたけど……。でも言われてみると、日本に来た時にしか使わないし、そこまででもないのかな。
「久しぶりの日本でしょう? 買いたいものなどあるでしょう。是非使ってください」
「はあ……。それじゃあ、ありがたく」
お話はこれで終わりだったみたい。スマホを師匠に渡したかっただけってことだね。師匠も日本のお金はさすがに持ってなかったと思うから、ちょうど良かったと思う。
それじゃあ早速、と師匠が言った。
「リタ。回転寿司に行くか!」
「ん?」
『回転寿司www』
『なんでそっちなんだよw』
よく分からないけど、そういうことになった。
壁|w・)師匠はスマホを手に入れた!
次回更新は1日です。





