エピローグ
ベッドから出て、ぐっと伸びをする。ちょうど朝日が出てきた時間。とてもいい天気……。
「おー……」
でもなかった。窓から見えるのは雨だ。嵐、というほどではないけど、大雨だね。なんだっけ、日本だとバケツをひっくり返したような雨、とか言うんだっけ? バケツをひっくり返した、だったらすぐに終わると思うんだけど。違うのかな。
自分の部屋を出て、リビングに向かう。師匠は……まだ寝てるのかな?
そっとドアを開けてのぞいてみると、ベッドで眠る師匠がいた。近づいて、顔をのぞいてみる。うん。師匠だ。ちゃんと師匠がいる。それが、すごく嬉しい。
よし。朝ご飯でも用意しよう。
リビングに戻って、朝ご飯の用意。真美からもらった食パンがあるから、トーストとかどうかな。いつかの小倉トーストみたいにしてみよう。えっと……。軽く食パンを焼いて、バターをぬって、あんこをぺたぺたぺた……。もちろんスプーンで。
食パンにあんこをぺたぺたとしていたら、師匠が起きてきた。
「くぁ……。おはよう、リタ」
「おはよう、師匠。朝ご飯、小倉トーストでいい?」
「…………。自然と小倉トーストが出ることに混乱しそうだよ……」
「慣れて」
「はい」
日本のご飯は美味しいから、たくさん食べたいと思う。だから慣れてほしい。
お皿に小倉トーストをのせて、ジュースも用意。みかんもどきを絞ったみかんもどきジュースだ。とっても甘いから好き。
師匠に渡してあげると、早速小倉トーストを食べ始めた。
「どう?」
「うん……。美味しいぞ」
「ん」
私も食べてみる。うん。ちょっと変な形になってるけど、それなりにちゃんとできたと思う。
「うお……。これ、みかんもどきか」
そんな声に顔を上げてみると、師匠がジュースを飲んだところだった。みかんもどき、嫌いだったっけ?
「だめだった?」
「いや、小倉トーストが出てきたから、てっきりこれも日本のオレンジジュースかと……」
そっか。絞った後の見た目はどっちも同じようなものだからね。オレンジジュースもアイテムボックスにあるけど、今日はこっちの気分。
朝ご飯を食べ終わった後は、のんびりと。外は大雨だから、今日はお家で本でも読もう。
「雨」
「雨だなあ」
「ざーざー」
「ざーざーだなあ」
雨の音を聞きながら本を読む。これも悪くないと思う。不思議と集中できるから。私が読んでるのは物語の本だからそこまで集中しなくてもいいんだけど。
「リタ。それ、ラノベか?」
「ん。真美から借りた。恋愛? みたいな感じのものらしい」
「リタに恋愛は早いと思うな俺は」
「ん?」
「いや、まあ……。リタが選んだ相手なら……精霊の森に置き去りにする程度で……」
それは死ねと同じだと思う。私が選んだ相手、というのはよく分からないけど。
しばらく本を読んでいると、雨が止んだのが分かった。雨の音がなくなって、お日様の光が入ってきてるから。
ドアを開けて外に出てみると、しっとり濡れた森が広がっていた。いい天気、だね。
「通り雨だったんだな」
「そうみたい」
「それじゃあ……。久しぶりに釣りでも行ってくるか。リタはどうする?」
「んー……。世界樹に行ってから、そっちに行く」
「わかった。気をつけて行ってこいよ」
そう言って、師匠は手を振って森の中へと入っていった。
私も世界樹の側に転移。世界樹も雨に濡れてるけど、しっかりと元気だ。雨とか雷程度でどうにかなるような木じゃないけど。ぬいぐるみはしっかり雨よけがされていた。葉っぱとかは濡れてるのにぬいぐるみは濡れてない。
「おはようございます、リタ」
そのぬいぐるみを眺めていたら、精霊様が出てきた。私を撫でてくる。なんだろう。
「コウタは、釣りをしているのですね」
「ん。あとで私も行く」
「ふふ。そうですか」
師匠と一緒にお魚釣り。のんびり釣りをするのも好きだから、楽しみ。配信で、みんなとお話ししながら釣りをしようと思う。師匠は嫌がるかな? 大丈夫かな。
「リタ」
「ん?」
「ありがとうございます」
「ん……?」
「ふふ……。気にしないでください。ほら、コウタが待ってますよ」
「ん」
精霊様に手を振って、一度お家の前に戻る。お家の前に座って、森を眺めてみる。雨の後だからか、なんだか森がきらきらしてるように見えるね。
後で師匠と一緒に、ゴンちゃんとフェニちゃんにも会いに行こう。きっと喜んでくれると思う。あとは、ギルドの人たちにも。そうだ、学園長にも会いに行かないと。王様とかは……どうしようかな。別にいいのかな。
師匠と一緒に日本のいろんなところに行きたいね。温泉もそうだし、一緒に食べ歩きも楽しいかも。うん……。うん。とても、楽しみだ。
今日も明日もこれからも。きっと楽しい。その楽しいを、みんなにも感じてもらえたら、ちょっとだけ嬉しい。そんな気がする。だから、もうちょっとだけ、配信は続けるつもり。
立ち上がって、ぐっと伸びをする。うん。気持ちのいい朝だ。それじゃあ、配信開始、と。
『きちゃ!』
『そろそろかなと思ってた!』
『リタちゃんおはよー!』
そんなたくさんのコメントが流れていく。いつものコメントだね。
『リタちゃん、晩ご飯はカレーを作るけど、食べにくる?』
「真美。行く。絶対に行く」
『待ってるね』
晩ご飯はカレーライスを用意してくれるみたい。師匠と一緒に行こうかな。もしかすると師匠は遠慮するかもしれないから、その時はちょっと持って帰らせてもらおう。
真美にもたくさんお世話になった。初めて日本に行った時、最初に出会った人が真美で本当に良かったと思う。真美と会ってなかったら、日本に遊びに行くのもつまらなくなっていたかもしれない。
『相変わらずカレーライスが好きやね』
『リタちゃんまた遊びに来てほしいなあ!』
『まだまだ楽しくて美味しいところあるから!』
それは、うん。また日本にも行くつもりだ。みんながいろいろ教えてくれるから。
いつものみんな。思えば、私はこの顔も知らないみんなに、たくさん元気をもらってきたと思う。
たくさん元気をもらったから、私からは楽しいを返したい。あまり口には出せないけど、ずっと元気づけてくれた視聴者さんには感謝してるから。
今日もきっと楽しい一日になる。だからみんなと楽しんでいこう。
それじゃあ、いつも通りに。
「ん。みんな、おはよう。今日もよろしくね」
了
壁|w・)のんびりな一日。いつも通りの一日。リタの日常は続いていきます。
というわけで、エピローグでした。本作はこれにて完結となります。
22年10月から連載を始めたので、ほぼ2年の連載となりました。
なんと70万文字こえています。ずいぶんと書いたものだ……。
そこまで山も谷もなかったのに、書籍化までして、自分でもびっくりでした。
書籍化できたのも、ここまで続けられたのも、ずっと読んでくれていた皆様のおかげです。
感想など本当に励みになりました。
本当に本当に、ありがとうございました。
さて。ここまで終わりっぽい挨拶をしましたが……。
3日後にちょっとふわっと思い浮かんだ番外編を更新して。
そしてまたのんびり続きます。
いつも通り、日本に遊びに行ったり、リタの世界をちょろっとのぞいたり。
そんなまったり日常が続いていくので、よければ今後ともお願いします。
なお、行き先募集で書いてもらったものは、最終的に全部書くつもりです。
もしまだ地元自慢とかあれば、活動報告にある行き先募集に書いてくれたら、多分そのうち遊びに行きます。
そちらもよければ、是非是非。
でも! とりあえずは本編完結なので!
おもしろかった、とかあればブクマや評価の方、是非是非お願いします!
評価は下の方からできますよー!
あと、どこかコミカライズとかどうですかー! 魔女のまったり日本旅行どうですかー!
さて。言いたいことは終わったので……。
ひとまず、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
そして、これからもよろしくお願い致します。





