表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
330/484

師匠のお家


 夜。精霊様に見送られて、師匠の実家の前に転移。インターホンを押そうとして、ちょっとできなかった。ちょっと、怖い。


「んー……」


 気持ちをごまかすために、配信を開始。すぐに見慣れた光球と黒い板が浮かび上がる。


『お、今日は遅い時間やな』

『てっきり師匠さんとのんびりしてお休みかと思った』

『日本か? どこにいんの?』


「師匠の実家。朝ぐらいに師匠を連れてきた」


『おお、マジでか』

『てことは、迎えに来たってことやね』


「ん」


 そうして視聴者さんとお話ししていたら、ちょっと気持ちが軽くなった気がする。よし、大丈夫。

 インターホンを押す。するとすぐに、声が聞こえてきた。お母さんの、じゃない。師匠のだ。


『はい』

「ん……」

『リタか。上がっていいぞー』


『かっるw』

『勝手知ったる我が家的なのり』

『でも実際リタちゃんは身内に入ってそうw』


 そうなのかな? そうだったら嬉しい。

 門を抜けてドアを開ける。すると師匠が立っていた。私を待っていたみたいに、よ、と軽く手を上げて。


「待ってたよ、リタ」


 待ってた。それは、どうしてなのかな。もしかして、ここで暮らすとか、そういう話をするために、とか……。

 そんな私の不安が少し顔に出ていたのか、師匠は軽く首を傾げて私の首根っこを掴んできた。首根っこというか、服の後ろ側、だけど。持ち上げられて、視線を合わせられる。なにこれ。


『なにこれ』

『なんか、首根っこを掴まれて持ち上げられてる猫みたい』

『リタちゃん。にゃーんって言ってみて。にゃーんって』


「にゃーん」

「いや、なんで鳴くんだよ」


『かわいいだろ文句あっか!』

『かわいければいいのです!』


 さすがに意味が分からないと思う。

 師匠は薄く笑って下ろしてくれた。私の頭をぽんぽんと撫でてくる。そうして手招きされるままについていくと、リビングで師匠のご両親が待っていた。

 テーブルの上にはたくさんの唐揚げ。それにほかほかのご飯もある。いっぱいだ。


「待っていたわ、リタちゃん」

「からあげもいっぱいあるぞ。食べていきなさい」

「唐揚げ……!」


 師匠のお母さんの唐揚げ。とても美味しいもの。

 椅子に座って、早速ごはん。いただきます。

 山盛りの唐揚げから一つ取って食べると、揚げたてなのかばりばりしていてとても美味しかった。肉汁たっぷり。とてもいいもの。


「んふー」

「幼い頃のコウタを思い出すなあ」

「本当に美味しく食べてくれるものね」

「やめてくれないかな」


 そんな感じで、師匠たちはわいわいと楽しそうに話してる。もうしっかりお話はできたみたいで、とても自然な感じ。仲良しで、いいと思う。

 いいと思う、けど……。やっぱりそれを見てると、不安になってしまう。


『なんかリタちゃん元気ない?』

『めちゃくちゃ美味しそうな唐揚げなのにどうしたよ』

『独り占めしたいとか!?』


 いやそれはないけど。みんな私のことをなんだと思ってるのかな。

 ふと、師匠がこっちを見てることに気が付いた。


「リタ、どうした?」

「ん……。なんでもない」

「あっはっは。それが通用すると思うなバカ弟子め」

「うあー」


 鼻をつままれる。やめてほしい。私の鼻はのびないから。うあー。


「で?」

「んー……。師匠、ここに住むの……?」

「は? 何言ってんだお前」

「え」

「え」


 師匠が首を傾げる。私も首を傾げる。なんだか、私と師匠の中で全然違う感じ。

 するとお母さんが薄く笑って言った。


「なるほどね。コウタがリタちゃんの家からこっちに引っ越さないか、心配なのね」

「は? あー……。ああ、なるほど。そんな心配してたのか」

「ん……」

「バカだなあ、お前は」


 そう言って、師匠は私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。ちょっと乱暴なこの撫で方は、恥ずかしいのをごまかす時の撫で方だ。ちょっと痛いけど、これも気持ちいいから好き。


「俺の今の家は精霊の森のあそこだよ。だから、心配するな」

「ん……」


 師匠のお家は、あそこ。それを聞いて、ちょっと安心した。師匠はちゃんと帰ってきてくれる。とても嬉しい。


『そんな心配してたんかリタちゃん』

『ご両親と再会、だもんなあ』

『その流れでもしかして、と思うか』

『結論。前もってちゃんと言わないお前が悪い!』


「ええ!?」


 それはおかしいだろ、と光球に向かって言う師匠と、たくさんのコメントが流れていく黒い板。なんだかそのやり取りは、昔、横で見ていた師匠の配信みたいだった。


「唐揚げ、持って帰っていい?」

「ええ、もちろん。たくさん持っていってね」

「ん!」


 唐揚げをたくさんもらった。真美のカレーで唐揚げカレーにして食べよう。きっと美味しい。


「んふー」


 うん。安心して食べる唐揚げは、やっぱりとっても美味しいね。


壁|w・)ちょっと不安だったけど、ちゃんと帰ってきてくれるってことで安心なリタでした。

なお、一番書きたかったのは「にゃーん」です。いや、その、思い浮かんだから……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「にゃーん」 [一言] リタちゃんなら猫耳しっぽを生やす魔法を創れると思うんだ そのうえでもう一度にゃーんして欲しい (配信で衛生兵の仕事が増えるのは確実
[良い点] にゃーん [気になる点] 師匠も、んふーしてたのかな
[良い点] にゃーん [一言] リタちゃんをぷらんぷらんできるのは師匠しかいませんね! 大きな目標が達成できたので終わりが見えてきてるのかも しれませんが、師匠と二人で観光旅行してみてほしいです。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ