表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
328/484

久しぶりの精霊の森


 転移先は、森のお家。お家を見た師匠は、おお、と小さく声を上げた。そのままだ、と。


「いやあ……。めちゃくちゃ懐かしく思えるな……」

「ん。師匠の部屋もそのまま。入る?」

「いや、今はいいよ。ところでリタ」

「ん?」

「あれはなんだ?」


 師匠が指さした先にあるのは……。畳、だね。日本で買って、こっちに持ち込んだものだ。もうすぐ夜だけど、お昼あたりならお日様があたってぽかぽかぬくぬく。お昼寝に最適。

 そう説明したら師匠はなんだか優しい目で私を見つめてきた。


「なに?」

「いや、なんでも。昼寝、好きだったもんな」

「ん。お昼寝は気持ちいい」


 食べることの方が好きだけど、お昼寝も好き。特に今は畳の上でのお昼寝は最高だと思ってる。


『まあ反応するわな』

『明らかにあの一角だけ浮いてるからなw』

『どうだ、あの畳は! 神秘的な畳だろう!』


「神秘的な畳ってなんだよ。伝説の剣ならぬ伝説の畳ってか? そんな装備嫌だよ」


『伝説の畳w』

『武器なのか防具なのかw』


 あれで戦うのはどっちにしても難しいと思うけど。

 軽くお家をぐるっと見て、次に世界樹に転移だ。ここからなら大丈夫、ということで師匠の転移で世界樹の側に移動した。

 むう……。私もかなり転移については研究したけど、術式はやっぱり師匠の方が上だと思う。私よりも魔力の揺らぎが小さい。私でもほとんどないはずなのに、それよりも。


「師匠はやっぱりすごい」

「急にどうした……? それより、リタ」

「ん?」

「世界樹がぬいぐるみ置き場と化してるんだけど」


『草』

『そうか、師匠さんからすればぬいぐるみ置き場は初見かw』


 何か変なのかな。私がおみやげで買ってきたら、精霊様がよく飾ってくれてるけど。別に私が、そこに飾ってほしいって言ったわけじゃないよ。私は自分の部屋に置いてあるから。

 そう言うと、師匠が言った。


「何やってるんだよ精霊様……!」

「いえ、あの、これは、違うんですよ……?」


 師匠の視線の先、世界樹の側に精霊様がいて、ちょっとだけ慌ててる様子だった。少し恥ずかしそうにも見える。


「そ、それよりも……! 久しぶりですね、コウタ! ご無事で何よりです!」

「ああ、うん……。久しぶり、精霊様。俺は久しぶりに見た世界樹に木の実がなっていて驚いたよ。ぬいぐるみという木の実が」

「か、かわいいでしょう!? 文句ありますか!? あるんですか!?」

「いや、ないけどさ。知らない人が見たら、絶対自分の正気を疑うなって……」


『ただでさえやばい森なのに、命からがらたどり着いた先で見たものは、たくさんの人形が飾られる世界樹……』

『神秘的というか、ホラーかな?』


「大丈夫です、大半の人間はたどり着くまでに死にます」


『なおさら怖いわw』


 精霊様が言うように、普通の人はそもそもたどり着けないだろうから気にしなくていいと思う。私が見てきた人でも、アリシアさんがなんとかたどり着けるかなっていうぐらいだろうから。

 もうすぐ夜、ということで今日はここで晩ご飯だ。せっかく森に帰ってきたから、ということで、森のものでご飯にする。とりあえずワイバーンでいいかな?

 ちょっとだけ空を飛んで、あちこち飛び回ってるワイバーンの中から適当に選んで一匹落とす。すぐに解体して、世界樹の側に持っていった。


 そこからお肉を焼く。強めの火力で焼いていこう。

 ご飯は、精霊様が作ってるお米で。日本のレトルトのお米の方が美味しいけど、今日はこっちの気分らしいから。

 ワイバーンのお肉をほかほかのご飯に載せて、完成。ワイバーンのお肉の丼だ。

 師匠はその丼を食べると、ほう、と感嘆のため息をもらした。


「はあ……。うまい……。あっちの世界のご飯と違って、マジで美味い……」

「それほどひどかったのですか?」

「ひどかったっていうか……。どれもこれも何故か甘いんだよ……。元日本人の感覚としてなら、そうだな……。毎食甘いお菓子を食べてる気分だな……」


『ええ……』

『なんだその地獄は』

『お菓子はたまに食べるから美味しいんであって、ずっとそれはきついわ』


 そうなのかな。私はお菓子大好きだから、気にもならないと思うけど。あ、でも、カレーが食べられないのは嫌だ。やっぱりずっとお菓子は嫌だね、うん。


「しっかし……。異世界転移とか、正直諦めかけてたんだけどな……。すごいな、リタは」

「ん?」


『あれ?』

『あ、そうか。こいつ知らないのか』


 師匠が私の反応に、そしてコメントに首を傾げてる。私もコメントを見て違和感に気付いた。そっか、師匠は知らないんだね。


「師匠」

「うん?」

「異世界なんて存在しない」

「は? いや、何を言って……」

「地球は天の川銀河にある惑星。この世界は、アンドロメダ銀河にある惑星。さっきまで師匠がいた世界も、別の銀河の惑星」

「…………」


 師匠が固まってしまった。とても衝撃的なことみたい。

 さらに精霊様が、師匠の魂を召喚した時に時間もずれたらしい、ということを言うと、師匠は乾いた笑みを浮かべて言った。


「帰って寝る」


『ちょwww』

『現実逃避するなw』


「うるせえ! 情報量過多にもほどがあるんだよ! ちょっと整理させてくれ頼むから!」


 そう言うと、師匠は本当にお家に帰ってしまった。お部屋はちゃんと綺麗にしてあるからいつでも寝れるけど、どうしたのかな。怒っちゃったのかな?

 私がちょっと不安になっていることに気付いたのか、精霊様が私を撫でて言った。


「大丈夫ですよ。あの子もちょっと混乱しているだけですから」


 というより、と精霊様が続ける。


「混乱しない方がおかしいですから……」


『ですよねーw』

『そりゃそうだw』


 そういうものらしい。じゃあ、続きはまた明日、だね。明日は一日ゆっくりできるはずだし、師匠をご両親のお家に連れて行ってあげよう。


壁|w・)ようやく帰ってきた、という感動を情報の暴力で黙らせていくスタイル。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >『伝説の畳w』 >『武器なのか防具なのかw』 壁|w・)まぁ,西南戦争なんかでも盾代わりに使ってるし,某FFでも畳盾なんてのがあるので,防具ですね。
[一言]  ?何言ってんだ畳は無限の収納道具だろ?畳と畳の間に硬貨が挟まってたり干そうとして剥がすとテスト用紙だのなんか色々出てくるアレだろ?  精霊の森から死に掛けながら帰還した冒険者は語る!「魔物…
[一言] その少数の事ですよ精霊様・・・(世界樹たどり着いて樹みたらぬいぐるみが生ってるのをみて正気疑うの 精霊様でさえドン引きの魔法作るしなぁりたちゃんかわいいやったー!(唐突に末期症状発生させる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ