カレードリア
真美たちのお家に帰り着いたのは、もう夕方。夏、というのが近いからかまだお日様は沈まないみたいだけど、早い人だと晩ご飯を食べてるかもしれないそんな時間。
真美は料理中だったみたいで、キッチンからちょっと音が聞こえてくる。ちいちゃんは、お絵かき中だ。
「おかえり!」
ちいちゃんと目が合うと、花が咲いたような笑顔でそう言われた。
んー……。おかえり。おかえり、か。なんだか、ちょっと、ぽかぽかする。
「ん……。ただいま。これ、おみやげ」
ちいちゃんにゆるキャラのぬいぐるみを渡すと、わあ、と歓声を上げた。ぬいぐるみをもふもふにぎにぎしていて、とてもかわいい。
「テレビで見たことある……!」
「有名らしいね。かわいいと思う」
「かわいい!」
ちいちゃんが喜んでくれたみたいで、私も嬉しい。買ってきてよかった。
私がそんなちいちゃんを見ていたら、真美が戻ってきた。手には分厚そうなミトンをしていて、楕円形のお皿を持ってる。中に入ってるのは……チーズ? でもカレーの香りがする。
「いらっしゃい、リタちゃん。それとも、おかえりがいい?」
「ん……。おかえりが、いい」
「ふふ。じゃあ、おかえり、リタちゃん」
「ん。ただいま、真美」
『あー、なんかいいなあ、こういうの』
『てえてえ?』
『なんでもそういうのに結びつけるのはやめなさい』
そういうの、というのはよく分からない。
「真美。真美。それはなに? カレーの香りがする」
「カレードリアだよ。ご飯の上にホワイトソースにチーズとかカレーとかかけて、オーブンで焼いたもの」
「おー……」
それはきっと美味しいはず。チーズカレーみたい。
テーブルに置いてくれたので、私も椅子に座る。ちいちゃんもお絵かきをしていた紙とぬいぐるみを後ろに置いて、スプーンを手に取った。
それじゃあ、手を合わせて、いただきます。
「ちい。熱いからちゃんとふうふうして食べるんだよ?」
「はーい」
『かわいい』
『がんばってふうふうしていてとてもかわいい』
『こういう純粋なかわいさもやっぱりいいよね』
カレードリアはすごく熱いみたい。スプーンですくって、じっと見てみる。すごく湯気が立っていて、とても熱そう。あと、チーズが多いみたい。すごくとろっとしてる。
食べてみる。いつものご飯とはまた違った味。これがホワイトソース、かな? 牛乳みたいな甘みがある。それがいつものカレーとよく合っていて、美味しい。
チーズとカレー、それにホワイトソース。こんな組み合わせもあるんだね。それに、やっぱりカレーは真美のカレーが一番だ。とっても美味しい。
「んふー」
「ふふ……」
『なんなん? 今日のメシテロはちょっとひどすぎない?』
『出前で押し寿司とステーキを頼んだけどカレードリアも頼んでくる』
『どう考えても食い過ぎだよ!』
私は適当に魔力に変換してるけど、みんなはちょっと気をつけた方がいいと思う。
「リタちゃん好みのカレーに合うようにホワイトソースもちょっと工夫したからね。なかなか出せなかったんだ」
「ん……。ん?」
『なんかまたこの子さらっとすごいこと言ってるぞ』
『ホワイトソースも市販じゃなくて自家製かよwww』
『いやまあそこまで作るのは難しいわけじゃないけど……』
『それにしてもカレーと合うように調整はすげえ』
いつも本当に美味しい料理を作ってくれてる。真美にはとても感謝だ。でも今はカレードリア。とても美味しい。好き。とろとろ。
全部食べ終わってから、一息。とっても美味しかった。
「あ、そうだ。合うか分からないけど、おみやげ」
渡したのは、ビワマスの押し寿司。カレードリアとはちょっと合わないかもしれないけど、みんなで食べてほしい。私は精霊様と一緒に食べるから。
「わ……。ありがとう。あとで食べるね」
「ん。あと、ぬいぐるみと、おまんじゅう」
「わあ……。かわいい。ありがとう、リタちゃん」
「ん」
あとは、バウムクーヘン。アイテムボックスから取り出して、テーブルに置く。箱から取り出すと、大きなバウムクーヘンが出てきた。ほかほかだ。
「真美。お皿が欲しい」
「用意してるよ。フォークももちろん」
「ん」
『これぞあうんの呼吸』
『無言で取り出し始めたのにすぐに用意するのはさすがとしか』
『ちいちゃんがお目々きらきらでバウムクーヘン見てるんだがw』
『こんな大きいやつは普通見ないだろうからなw』
バウムクーヘンを風の魔法で切り分けて、お皿の上へ。厚みも自分で決められるから、一本で買うのはとてもいいかもしれない。
魔法を使えない人にはあまりオススメできないけど。十人ぐらいで食べるなら、いいかも?
切った残りはまたアイテムボックスに入れて、真美たちと一緒にバウムクーヘンを食べた。焼きたてそのままでふわふわだ。お砂糖のしゃりしゃりもとても美味しい。
「焼きたてなんて初めて……すごく美味しい……」
「おいしー!」
「ん。喜んでもらえて嬉しい」
晩ご飯の直後だから少なめにしておいたけど、まだまだたくさんあるからね。定期的にみんなで食べたいと思う。いつでも焼きたてのままだしね。
みんなでバウムクーヘンを味わってから、真美たちに見送られて精霊の森に転移した。精霊様もきっと喜んでくれるはずだ。
壁|w・)何回ご飯食べてるんだこの子……。