一本売り
お土産のコーナーでもお菓子がたくさん。特にやっぱりバウムクーヘンが多いみたい。他のお菓子もある。焼き菓子はだいたいあるのかも。
どれも欲しいけど……全部欲しいけど……でもさすがに買いすぎるのもだめだと思うけど……。
『めちゃくちゃ悩んでるw』
『いつかの駅弁の時を思い出すなあ』
『全部買えばいいんじゃないの? リタちゃんお金はいっぱいあるし』
『投げ菓子が当分なくなるがいいんか?』
『リタちゃん厳選するべきだ』
『おいwww』
買いたくなったらまた買いにきたらいい、よね。じゃあ、本当に欲しいもの、食べてほしいものを選ぶべきかもしれない。それだったら、バウムクーヘン、かな?
どれを買っていけば……。
「あ」
『おや?』
『リタちゃんの視線が一カ所で固まった?』
『いいもの見つけたの?』
ん。すごくいいものがあった。
少し歩いて、それを見る。とても大きな箱が置かれてる。今は中に何も入ってなくて、注文をすると入れてくれるみたい。
あ、でも、予約がいるのかな。そんなことが書かれてる。でもこれ、欲しいな。
『なんだその大きい箱』
『バウムクーヘン一本売りの箱だな。切った奴じゃなくてマジの一本』
『めちゃくちゃでかいやつかw』
自分で切って食べていくやつだよね。すごく気になる。予約して、また取りに来ようかな?
そう思っていたら、店員さんがこっちに歩いてきた。なんだろう。
「あの、すみません」
「ん?」
「一本売りなら……その、特別にご用意できます、と……」
「欲しい」
『返事が早いw』
『ちょっと食い気味やぞw』
だってすごく欲しいから。
店員さんはちょっとだけ驚いていたみたいだけど、すぐにお待ちくださいと奥に行ってしまった。
一本、買えるみたい。すごく嬉しい。
『でも一本なんて食べきるの大変そう』
『一人で食べるもんじゃないぞあれ』
『リタちゃんにはアイテムボックスがあるからな』
『食べたくなったらその都度切ればいいっていうのは最高かな?』
時間の経過はほとんどないから、劣化は気にしなくても大丈夫。
そうして少し待つと、店員さんに奥に案内された。案内された先にいたのは、白い服を着た人。バウムクーヘンを作ってる人なんだって。たくさんの人で作っていて、その一人みたい。
その人の側に、専用の道具で支えられたバウムクーヘンがあった。とても大きな、丸太みたいなバウムクーヘン。すごく大きい。
「お待たせしました。焼き加減も問題ありません」
「おー……」
大きい。すごく大きい。すごく! 大きい!
「おー……!」
『リタちゃんが興奮しておられるw』
『気持ちは分からないでもないけどバウムの周りをぐるぐる回るなw』
『触ろうとして慌てて止められてるのは草なんだ』
『リタちゃんがめちゃくちゃ子供っぽくなってるw』
ん。ちょっと恥ずかしいから落ち着く。
丁寧に箱に入れてもらって、そのままアイテムボックスに入れる。本当に焼きたてを持ってきてくれたみたいで、すごく温かい。つまり。
「アイテムボックスに入れておけば……いつでも焼きたてのバウムクーヘンが食べられる……!」
『マジかよ』
『天才か?』
『アイテムボックスはバウムクーヘンのためにあった……?』
さすがにそれは言い過ぎだと思う。
お会計をして、お店を出る。買えないと思っていた一本売りが買えて、とても満足。あとで真美と一緒に食べよう。もちろん精霊様にも。今日はお土産がいっぱいだね。
お店を出て、空の上へ。空から見下ろすと、本当に広いお店だと分かる。最初は気にしなかったけど、バウムクーヘンの形をした建物だ。そういうところもおもしろい。
さてと……。だいたいは見て回った、と思う。そろそろ帰ろうかな?
「琵琶湖はとっても美味しかった」
『言いたいことは分かるけど琵琶湖が美味しいってw』
『満足してもらえてとても嬉しい』
『でもどうせならあと一カ所、琵琶湖博物館に!』
『もう十分では?』
ん……? まあ、あと一カ所ぐらいなら、行ってもいいけど。
調べてみると、そんなに離れてない場所みたい。そこでもビワマスが食べられるみたいだね。このブラックバスっていうのはなんだろう?
「ブラックバス……?」
『外来種っていって、もともといなかった魚』
『人間の悪い面が出ちゃったやつさ』
『そういえばブラックバスも食べられるんだっけ』
名物なのかは分からないけど、博物館。ちょっと見てみよう。
スマホで場所を調べて、転移。上から見下ろすと、結構大きな建物みたい。人も、結構いる、かな?
ゆっくり下りて入り口へ。周りの人が目を丸くしてるけど、気にせずに中に入ってみた。
とても広い部屋。そこに、たくさんの人がいた。人、というか、子供。小学生っていうのかな? それぐらいの子たち。私よりも少し小さいぐらい。三十人と少し、かな。
そんな子たちと目が合った。
「あ」
「あ」
『あ』
『これってまさか……』
子供たちの側には大人も三人ほどいて、頬を引きつらせていた。
「テレビで見たことある!」
「魔女さんだー!」
「ちっちゃい!」
「かわいい!」
子供たちがたくさん集まってきた。どんなイメージがあったのかは知らないけど、私よりちっちゃい子にちっちゃいと言われるのは納得できない。
「君たちの方がちっちゃい」
「でも魔女さんも先生よりちっちゃい!」
「むう……」
大人と比べられたら……確かに私の方が小さいけど……。
壁|w・)一本売りは一人で食べられる大きさではないので、良い子はちゃんと計画的に買いましょう。