バウムクーヘン
少し上空まで来てから、次を考える。後はバウムクーヘン、だね。場所はどこかな?
「ばうむくーへん、どこ?」
『そこからわりと近いはず』
『めちゃくちゃ広いお店というか施設というか』
『見えない?』
上空から見えるぐらいに大きいのかな。とりあえずもうちょっと高く飛んで……。ん?
「もしかして、あの広い草原みたいな場所?」
『そうそうそこそこ』
『最近の滋賀県の名所だよ』
『お店で焼きたてできたてのバウムクーヘンとかも食べられる』
『もちろんお土産もあるぞ!』
「へえ……」
じゃあ、行ってみよう。近いから転移もせずに近づいていって、たくさん車がとまってる場所に下りてみた。せっかくだしここから歩いてみようかな。
周りの人がびっくりしてるけど、いつものことなので気にしない。バウムクーヘン楽しみ。
「おー……。すごく広い。なんだか日本とは違う場所みたい」
『ちょっとした映画のセットだと言われても納得するよね』
『なんか、昔の日本って感じ』
『いやどんだけ昔なんだよw』
草葺きっていうのかな? そういう屋根の建物があって、おもしろいと思う。
しばらく歩くと、建物に入れた。お土産を買える場所もあるみたい。でもとりあえずは、食べてみたい。どこかに食べられる場所があるかな?
周囲を見回して探していたら、小さい女の子がこっちに走ってきた。ちいちゃんぐらいの女の子。私の側まで来ると、じっと見つめてくる。なんだろう。
「りたちゃん!」
「ん……。リタ、です」
『なんで敬語なんだリタちゃんw』
『どうした急にw』
いや、なんとなく。
女の子はにぱっと笑うと、私の手を取った。私も小さい手って言われるけど、それよりも小さい手。なんだかかわいい。
「おかし、たべよ?」
「えっと……」
「やきたて! もうすぐ、わたしのばん!」
「ん……?」
引っ張られるのでついていってみる。女の子に案内された場所は、カフェの入り口。そっか、ここで食べられるんだね。
たくさん人が並んでいたけど、女の子はその先頭の方にいる男女二人の方に向かっていた。両親かな?
「おとーさん! おかーさん! りたちゃん、いた!」
「カナ! いったいどこに行って……」
「心配して……」
そして私を見て、口をあんぐりと開けて固まった。気付けば周囲も私を凝視してる。あ、写真撮り始めた。えっと……。ピースでもしてあげよう。
『最近サービスしすぎじゃないかなあ!?』
『俺も! リタちゃんのピースを撮りたい!』
『施設にいるワイ、入り口の順番待ちで泣きそう』
そうしている間に、女の子の両親が我に返った。少し戸惑いつつも挨拶してくる。
「その……。初めまして。斉藤一樹といいます」
「斉藤ひまりです。カナがご迷惑をおかけしたみたいで……」
「大丈夫。私もバウムクーヘンを食べられるところを探していたから」
むしろこうして案内してくれて助かったぐらいだ。でも人の列があるから、ちょっと並ばないといけないけど……。
「ああ、それなら……。その、よければご一緒にいかがですか? 次に呼ばれますが……」
「ん? いいの?」
「はい。むしろ是非ご一緒に」
そういうことなら、お言葉に甘えたいと思う。私も長い時間待ちたいわけじゃないから。
少し待つと、すぐに呼ばれて席に案内された。店員さんは私を見て驚いてる。
案内された席でメニューを見て……。やっぱり、焼きたてのバウムクーヘンかな。リンゴジュースのセットというのがあるから、それにしよう。
斉藤さんたちと一緒に注文して少し待つと、運ばれてきた。小さめのバウムクーヘンにジュースのセット。フォークももちろんある。早速食べてみよう。
フォークでバウムクーヘンを少し切り取って、口に入れる。
おー……。ほんのり温かくて、すごく柔らかい。ふわふわだ。それでいてバウムクーヘンの食感も損なわれてなくて、外側の砂糖かな? そのシャリシャリ感もいい感じ。
お皿の隅にクリームがちょっとあって、それにバウムクーヘンをつけて食べるとまた違った味わいでとても美味しかった。
『焼きたてのバウムうまそう』
『生クリームがあるのもいい』
『ふわふわとシャリシャリの調和がいいんだよここは』
『何を語ってるんだお前はw』
うん……。すごく、美味しい。リンゴジュースもなかなか。
「おいしーね!」
その声に目を向ければ、カナちゃんがフォークを片手ににこにこしていた。
「ん。美味しかった」
「えへー」
『にこにこしてる』
『なんだこの子かわいいぞ』
『リタちゃんと幼女が幸せそうで見てる俺も幸せだ』
それはちょっと意味が分からないけど、美味しいものを食べている時はとても幸せ。
食べ終わった後は斉藤さんたちと外に出て、写真を撮った。その場にいる人全員とはさすがに難しいから、今回は斉藤さんたちだけ。人数が多すぎるからね。
「それじゃあ、カナちゃん。またね」
「うん!」
斉藤さんたちに手を振って、店内に戻った。まだお土産を買ってないから。
壁|w・)焼きたてバウム!