モーニング
「これかな……? パンと、コーヒーだっけ。その写真があるやつ」
『それやね』
『パンは店によるから、機会があれば他の喫茶店も見るといいかも』
『ここは小倉トーストか。甘いものが好きなリタちゃんにはオススメ』
あんこのトースト、かな。あんこは甘いから好き。チョコみたいな甘さじゃなくて、なんて言えばいいのか、優しい甘さ、みたいな感じ。みんなからもらうお菓子にある大福もすごく好き。
「モーニングでいいですか?」
「ん」
「飲み物は……どれにしましょう。コーヒーとか大丈夫ですか?」
「コーヒー……」
そういえば、コーヒーは飲んだことがない。苦い飲み物のはずだけど、コーヒー牛乳は甘かったし、そんなに苦くはないのかな?
「美味しい?」
「その……。苦いです」
「どれぐらい?」
『かなり苦いぞ』
『カフェオレや微糖は飲めても、ブラックは絶対に無理って人もいるぐらいだし』
『砂糖とかミルクをまぜればいいかも』
じゃあ、それでいこう。砂糖とミルクに頑張ってもらう。
お姉さんが注文をすると、少しして店主さんが持ってきてくれた。
パンは、サンドイッチみたいになってる。こんがり焼き目がついていて、あんこを挟んでるみたい。ほかほかだ。
コーヒーは……真っ黒。コーヒー牛乳と全然違うね。独特な香りがする。
それじゃ、まずはコーヒーから。みんなの話で逆に気になっちゃったからね。
まずは一口、口につけて……。
「ん!?」
なにこれ!? 苦い! すごく苦い! 甘さなんて少しも感じられない……! なにこれ!?
「口に合いませんでしたか……?」
「きらい」
「ですよね!?」
『悲報、リタちゃんコーヒーが嫌い』
『ブラック大好きな俺涙目』
『眠気覚ましとか最適なんだけどなあ』
眠気覚ましに頼る前にちゃんと寝ればいいと思う。
えっと……。甘くするにはお砂糖とミルクだっけ。一緒に出されてるこの四角形の白いのが砂糖でいいよね。ミルクは、このちっちゃいやつ、かな……?
「とりあえず三つずつぐらい」
「とりあえず……?」
『とりあえずの量じゃないw』
『めちゃくちゃ甘くなるぞそれw』
苦いよりずっといい。苦いのは嫌い。
お砂糖とミルクをたっぷり入れて、よくかき混ぜてもう一度飲む。うん。甘くなって、美味しくなった。本音を言えばもうちょっと甘くしたいところだけど、トーストも甘いだろうし、ちょっと控えておこう。
それじゃ、次はトーストだ。両手で持つと、まだちょっと熱いぐらい。パンの柔らかさはあまり感じなくて、少しざらざらしてる。よく焼けてるね。
ぱくりと口に入れると、サクサクの食感だった。でもそれは表面だけで、中はちょっと熱いけど柔らかいパンだ。
そのパンに甘いあんこが挟まってる。あんこも熱いパンに挟まってるからか、あったかい。今までは冷たいあんこばかりだったから不思議な感じ。
うん……。美味しい。好き。
「あの、リタちゃん」
「ん?」
「こちらも食べてみます? バタートーストですけど」
お姉さんがそう言って、自分の分のパンを示してくれた。まだ食べてないみたいだけど、いいのかな?
「いいの?」
「はい。むしろ是非もらっていただければと。お腹減ってないので……」
『じゃあなんで頼んだんだよw』
『リタちゃんにあげるためでは?』
『やべえ普通に納得したw』
それは納得しないでほしい。ちょっと申し訳ない気持ちになっちゃうから。
でも、いらないならもらっちゃおう。少し気になってたしね。
バタートーストは小倉トーストと違って、サンドイッチにはなってないみたい。少し厚みのあるパンにバターが添えられてる。ぺたぺた塗って食べると、サクサク食感とバターの味がとてもよく合ってる。美味しい。
「んふー」
「ははは。その子は美味しそうに食べてくれるね。これもおまけでどうぞ」
「ん?」
店主さんがくれたのは、クッキー。お姉さんが言うには、子供連れのお客さんにおまけとして振る舞ってるらしい。
『つまり完全に子供扱いってわけやな!』
『魔女のコスプレをした女の子に見えてるのかな』
『なにそれかわいい』
コスプレのつもりはないのにね。
クッキーもサクサクと軽い食感で、ほのかにバターの味がして飽きない美味しさだ。濃いめの味も好きだけど、これぐらいの味の方が飽きはなかなかこないかなと思う。
うん。満足。
「付き合ってくれてありがと」
「いえ……。こちらもいい思い出になりました。いや本当に」
『本当にな、羨ましすぎてこう、にゃーってなってる』
『どういうことだよw』
『ところでリタちゃんを知らないってことは、写真もいいってことかな』
そういうことになるのかな。いつも写真を撮ってるから、それがないのもまたちょっと不思議。
そう思ってたんだけど、お姉さんに頼まれて結局写真を撮ることになった。店主さんと、居合わせたお客さんも一緒に店内で一枚。少し狭かったけど、ちゃんと写れたからいいよね。
それじゃ、そろそろ時間も時間だし、出発しよう。味噌煮込みうどん、楽しみ。
壁|w・)リタは苦いのが嫌い。わりと子供舌です。
一応、ちょっと書いておきます。
作中でお店を参考にすることはあっても、リアルに存在する店名や固有の料理名は出しません。作中で出てくるお店は全てフィクションであり、絶対に実在しないお店です。
その点だけはご理解ください。
次回は味噌煮込みうどん。