焼き肉
少し歩いて、目的地に到着。このお店はお肉を厚切りで持ってきてくれるらしい。だからしっかりとお肉を感じられてオススメ、なんだとか。
私がお店に入ると、店員さんは少し驚いたみたいだったけどすぐに案内してくれた。隅っこの、あまり目立たない席。配慮してくれたみたい。
「ありがとう」
「いえ。ご注文はお決まりですか?」
「んっと……。お任せ」
「かしこまりました」
ささっと離れていく。どんなお肉なのか、ちょっと楽しみだ。
『まだあまり人はいないっぽい?』
『ランチタイムを絶妙に過ぎてるからな。タイミングが良かった』
『かなり良い焼き肉屋さんかな?』
良いお店なのかな? よく分からない。お金は、まだまだいっぱいあるから大丈夫だと思う。
店員さんがお肉を持ってきてくれる。情報通り、どのお肉もすごく厚切りだ。しっかり焼いて食べよう。お肉を網みたいなところに載せると、お肉の焼けるとてもいい音がし始めた。
『うわああああ!』
『めちゃくちゃ腹が減る音なんですが!』
『じゅうって! じゅわあって! いいなあいなあ!』
『あかん耐えられん焼き肉行ってくる!』
『今行って満足に食えるんか?w』
お肉を焼く音っていいよね。お腹が減ってくる。香りもなんだか香ばしい。
しっかり焼いて、タレをつけて口に入れる。おお……。肉汁たっぷり。口に入れるとなんだかお肉がふわっととろけてる、そんな感じ。とても、美味しい。
「んふー……」
『あかん、めっちゃ美味しそうで困る』
『高級なお肉ってほんと憧れるよね……』
『美味しそうだけど、胸焼けしそうw』
『おうおっさん、涙ふけよ。俺もだよ』
うん。柔らかいお肉だけど、部位が違うのかしっかりと歯ごたえのあるお肉もある。そんなお肉でもちゃんと噛めばまた別の美味しさがあって、とてもすごい。ご飯も一緒に出してくれたけど、このお肉でご飯を食べるのはとても贅沢だと思う。
お魚とか海鮮もいいけど、やっぱりお肉もいい。どっちの方がいいとかじゃなくて、どっちも美味しい。
出してくれたお肉を全部食べて、追加で何度か注文。満足。
「そろそろ帰ろう。晩ご飯も楽しみ」
『待ってリタちゃんそのお肉の後の晩ご飯はハードルがすごく高いんだけど!?』
『推定真美さん、めちゃくちゃ焦ってそうw』
『そりゃあれだけ美味しそうなお肉の後だとなw』
『がんばれ真美ちゃん、俺らがついてるぞ!』
『手も口も出せない人は役立たずだよ!』
『ひでえwww』
『しかし事実なので言い返せないw』
『しかもついてるぞって言ってるけど、配信の外だから見守ることもできないからなw』
『そういえばそうだったw』
あまり難しく考えないでほしい。真美の料理なら、きっと満足できるから。だからとても楽しみ。
お会計をして、外に出る。ちなみに写真を頼まれたから、店員さんと写真撮影した。みんな写真好きだね。
それじゃ、あとは真美の家に帰ってのんびりしよう。晩ご飯、楽しみだね。
「リタちゃん。料理を期待してくれてるところとても悪いのですが、行きたいお店があります」
「ん?」
「カレー専門店に興味はありませんか」
「せんもんてん……!」
帰ってきた真美から姿勢を正して言われたのは、そんな内容だった。カレー専門店。とても気になる。きっとすごく美味しいカレーが食べられる。
「専門店!」
「そう! 専門店! きっと私のカレーよりも美味しいよ!」
「おー……!」
真美がそこまで言うってすごいと思う。とても期待できる。楽しみ。
「お家の近くにあるの?」
「えっと……。その、転移で連れていってほしいなって……」
「ん」
それはもちろん問題ない。真美はちょっと申し訳なさそうにしてるけど、気にしないでほしい。いつもお世話になってるから、もし旅行に行きたいならいつでも連れていってあげる。
でも今は、とりあえずカレー。どこに行けばいいのかな。
「それじゃ……」
真美がスマホを取り出して、操作し始めた。んー……。
「なるほど」
「え、なにが?」
「すごく速い。指の動きがすごい。すごい」
「えっと……。ありがとう?」
『リタちゃんも慣れればできるようになるよ』
『慣れる必要があるのかは分からないけどな』
『むしろ必要性は皆無である』
でもとってもすごいと思う。私もできるようになるのかな。
じゃれついてくるちいちゃんをなでなでしながら待っていたら、真美がスマホの画面を見せてきた。東京みたい。東京にあるカレー専門店ってことかな。
「全国いろんなところにあるお店だよ。海外にもあるぐらいに有名なところ」
「へえ……」
『カレー専門店と言えば真っ先に名前が出てくると思う』
『不味くはないけど、コスパが悪すぎてなあ。値段相応とは言えない』
『アンチ乙。普通に美味しいだろ。カツカレーのソースはマジでうまい』
たくさんお店がある。なんだっけ、テレビで見たことあるよ。ちぇーん店ってやつだよね。味を統一してたくさんの場所で出すお店。それだけみんなが美味しいって思ってるってことだよね。
これはとても期待できる。きっと美味しい。是非食べたい。
「すぐに行く?」
「そうだね。お財布もちゃんと持ってるし、行こっか」
「ん」
今回はちいちゃんも一緒。玄関で靴をはいてから、両手で二人の手を握って転移する。転移した先は、ビルとビルの間の狭い道。ここなら誰にもぶつからないかなって。
ちなみにこの道沿いのビルの一階がカレー屋さん。すぐ側だ。
「わあ! おそと! おそと!」
「ん。お外だね。カレー屋さん行こう」
「カレー! ちい、カレー好き!」
「カレーは美味しい。私も大好き」
「えへへー」
「ん……」
『なんだこのほのぼの』
『リタちゃんもちいちゃんもかわいいなあ』
『ほっこりしてる真美ちゃんもかわいい』
「やめてくれないかな?」
壁|w・)高級なお肉をたくさん食べられるのは若い子の特権です……。