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くらーけん

 お部屋を出て、階段を上がる。船室から出ると、たくさんの人が走り回っていた。大騒ぎだ。


「お前ら! さぼってんじゃねえ! 撃て撃て!」

「おおお!」


 大砲がまた撃たれる。お腹に響く重低音ってやつだね。


『すげえリアル大砲の音だ……!』

『なんかカッケエ!』

『言うてる場合かw』


 何に撃ってるんだろうね。視線を巡らせてみると、すぐに見つけることができた。魔法を撃ちまくる冒険者の人たちと、魔法使いさんを守るリーダーさんたち。そしてその向こうに、それがいた。


『あれはまさか!』

『知っているのかコメント!』

『クラーケンだあああ!』

『見たまんまやないかい!』


 大きなイカだね。とっても大きい。全長なら多分この大きなお船よりも大きいと思う。そんなイカがお船に巻き付いていた。海中に引きずり込もうとしてるのかも。

 でもお船の強度のためか、それとも激しく抵抗してるからか、うまくはいってないみたい。大きなイカはまだまだ諦めるつもりはないみたいだけど。

 んー……。手伝った方がいい、かな? このままだと船も進みそうにないし。


「手伝った方がいい?」


 冒険者さんに近づいて聞いてみると、リーダーさんが一瞥だけして言った。


「倒せないことはないが時間がかかる!」

「ん……。じゃあ、手伝う」

「頼む!」


 待ってる間進まないのは嫌だし、さくっと倒しちゃおう。それに、イカだ。お船のご飯ではイカも出てこなかった。あれだけ大きいイカだと、きっとたくさん食べられる。


『あれ? なんかリタちゃんの目が食材を見る目になってない?』

『そりゃお前、森の変な魔獣よりはちゃんと食べられそうな見た目だし』

『大きいイカってだけで一般人には捕食対象にはならないと思うんだけどなあw』


 ワームよりは美味しそうな見た目だよ。ワームも食べてみると美味しかったから、きっと魔獣のイカも美味しいはず。楽しみ。

 というわけで、すぱっと。


「おわあああ!?」

「魔獣が真っ二つになったあああ!?」

「なんだ何がいる!? 海中に何かいるのか!?」


 黒い刃でとりあえずイカを真っ二つにしたら、なんだか大騒ぎになってしまった。


「わあ」


『わあじゃないが』

『だいこんらんじゃねーかwww』

『あれ? 影が見えなくてもあの魔法使えんの?』

『リタちゃんの魔法は影から出てるように見せかけてるだけだぞ』


 んー……。倒したのは間違いないみたい。あとは風の刃で横からすぱすぱっと。うねうねしてる足だけでいいよね。他はちょっと面倒だから、タコの時と同じで燃やしちゃおう。


「わあああ! なんか燃え始めたぞ!」

「なんなんだよお……! 何がどうなってんたよお……!」

「たすけてかあちゃあああん!」


『阿鼻叫喚である』

『リタちゃんもうちょっと何かなかったの……?』

『見ているこっちは楽しいけどな!』


 方法がなかったのかと聞かれたら、あった、かな? 面倒だっただけだから。

 リーダーさんは混乱する他の冒険者をなだめながら、私を呆れたような目で見つめてくる。ちょっと失礼だと思う。

 とりあえず、イカの足を回収。アイテムボックスに放り込んで、一本だけ食べよう。量が多すぎるから、また風の刃ですぱすぱと。このまま焼けばいいかな。


「どれぐらい焼けばいいかな?」


『この空気の中食べ始めるのかw』

『大きさにもよるけど、二分ぐらいかな?』

『寄生虫に注意な!』


 ある程度の大きさに切ったイカの足を魔法で焼いていく。おお、ちょっと香ばしい香り。ある程度焼けたところでぱくりと食べる。んー……。


「もにゅもにゅ」


『もにゅもにゅ』

『美味しい?』


「それなり?」


 悪くはないけど、やっぱりちょっと物足りないかな? あとでこれも醤油を試してみよう。


「一応確認しておくけど、今のは魔女さんがやったのか?」


 そう聞いてきたのはリーダーさん。イカをもぐもぐしながら頷くと、なんだかとても呆れられてしまった。気付けば周囲の人も、畏怖の視線って言えばいいのかな? そんな目で私を見てる。最初の時とは全然違う視線だ。


「Sランクってのはどいつもこいつも規格外だってのは聞いてたが……。正直、ここまでとは思わなかったよ」

「ん」

「ところで」

「ん?」

「それ、美味しいのか?」


 私が食べてるイカに興味を持ったみたい。タコは美味しく食べられたのかな? 焼いたイカを一つ差し出すと、リーダーさんはわりとあっさりとそれを食べた。


「おお……これも悪くないな……。酒が欲しくなる……」


 さすがにそれは知らないけど。今回は本当にたくさんあるから、たくさん置いていこう。食べやすいように全部切って……。


「お皿、ある?」

「ちょっと待ってくれ!」


 リーダーさんが船室に走って行って、少しして戻ってきた。その手には大きなお皿。そこに山盛りにしてあげる。それでもまだたくさんあるね。しばらくイカには困らないかも。

 そこまで私とリーダーさんで話を進めてたけど、他の人も我に返ってきたみたい。ぞろぞろと集まってきて、イカをつまんでる。気に入ってくれたのかな?

 その様子を眺めていたら、隣に船長さんが立った。


「魔女さん。今回は本当に助かった。ありがとよ」

「ん。それじゃ、戻るね」

「おう」


 船長さんに手を振って、船室へ。自分のお部屋に戻ってから、残ってるイカを食べる。今度はお醤油。


『リタちゃんがうきうきしてるw』

『ほんと食べることに目がないなこの子はw』

『イカは刺身も美味いけど、さすがに素人が生で食べるのはやばいかな』


 お刺身。イカのお寿司も美味しかった。お刺身も食べてみたい。日本で食べようかな。

 焼いたイカにお醤油をつけて、食べる。んー……。悪くない。美味しい。でもやっぱり、イカはお寿司かお刺身の方が好み。また今度、日本に行った時に買いに行こう。


壁|w・)くらーけんは、きょうてき、でしたね。

美味しくいただかれました。



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― 新着の感想 ―
[一言] 俺もうリヴァの蒲焼とか出てきてもおどろかんぞ
[一言] 次回も楽しみにしてます。
[一言] おお?リタちゃんの料理スキルが微粒子レベルで上がっているぞ?! まあ烏賊は焼くだけだしなw これを期にミニクラーケン焼きが流行るんだろうなww
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